八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三百九話 冬の花火その一
第三百九話 冬の花火
僕達は雪が降る中でもイルミネーションを観た、そしてだった。
暫く観ていてそのうえで香織さんが僕に言ってきた。
「もうね」
「そろそろだね」
「帰る?」
「いい頃だね。そろそろ積もってきたし」
足元を見ればそうなっていた。
「それじゃあね」
「本格的に積もる前にね」
「帰ろうね」
「それがいいわね」
「積もるとね」
雪の白いのが奇麗でもだ。
「それでもね」
「足を取られたりするし」
「滑ったりするからね」
「危ないわね」
「特に夜だから」
それだけにだ。
「余計に危ないから」
「ここは早いうちに帰った方がいいわね」
「うん、ぢょうどいい時だと思うよ」
帰るにはだ。
「だからね」
「今からよね」
「帰ろうか」
「そうね、じゃあね」
香織さんはここでも頷いてくれた、それでだ。
僕達は帰り道についた、すると前の夜空に。
花火が次々とあがった、香織さんはその花火を見て言った。
「クリスマスだから」
「うん、ここではね」
「花火あげるのね」
「そうなんだ」
「そうするのね」
「スキー場と一緒でね」
こちらでも花火をあげる、それがまた花火を扱う人達にとっては実にいい売り先になっているという。
「そうしているんだ」
「そうなのね」
「花火と言えば夏だけれど」
日本では夏の風物詩の一つだ。
「最近はね」
「冬もなのね」
「太宰治は冬の花火は空虚なものって言ってたけれど」
それでもだ。
「今は違うよ」
「意味のあるものね」
「うん、クリスマスをお祝いするね」
「そうしたものなのね」
「時代は変わったから」
太宰の頃からだ。
「だからね」
「今は観ていいのね」
「うん、イルミネーションに雪にね」
そうしてだ。
「花火もあるなんて贅沢だよね」
「そうよね」
「太宰の頃から変わったよ」
「冬に花火もよくて」
「それでクリスマスもね」
太宰の頃、終戦直後のそれと比べてだ。
「この通りね」
「全く違うものになったのね」
「戦争が終わったばかりで」
太宰の作品の映画、ヴィヨンの妻とかだとバラックだ。
「何もない頃じゃないから」
「物凄く賑やかになったわね」
「畑中さんが復員された時も」
そして日本に帰ってこられた時もだ。
「本当にそんな風だったらしいよ」
「何もなかったのね」
「バラックで闇市があって」
そうしてだ。
「服は皆ボロボロで」
「食べるのに必死で」
「お酒はとんでもなく質が悪くて」
それでだ。
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