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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三百八話 最高の雪その十一

「麻薬はね」
「覚醒剤に限らないで」
「どれもね」
「手を出さないことね」
「つくづく思うよ」
「麻薬は駄目ね」
「どんなに追い込まれても」 
 精神的にそうなってもだ。
「自殺とね」
「麻薬に手を出すことは」
「その二つは駄目だよ、自殺は」
 こちらのことについても僕は思って話した。
「もうそれで終わりだからね」
「そうよね」
「一番卑怯な解決の仕方だって言う人もいたよ」 
 僕にこう言ってくれた人の顔はその時は温和なものだった、けれどそこにあるものはかなりのものだった筈だ。
「それは逃げだってね」
「逃げるにしても」
「それは駄目な逃げ方だよ」
 逃げることにも勇気が必要だ、身の危険を感じたらそうすることもいいと思う。
 けれどだ、この逃げ方は。
「最悪だよ、残された人がどう思うか」
「家族の人達やお友達が」
「友達が自殺した人も知ってるけれど」
 その人から話も聞いた。
「残念に思っていたよ」
「残されて」
「うん、長生きして欲しかったってね」
「そう言ってたの、その人」
「そうなんだ」 
 いい奴だったとも言っている。
「だからね」
「自殺もなのね」
「すべきじゃないよ」
 このことも心から思うことだ。
「武士の自決とかはともかくとしてね」
「切腹ね」
「あれはまた別だけれどね」
 日本があの戦争で負けた時も国難に殉じてそうしていった人達がいる、この人達のことは否定出来ない、どうしても。
「それでもね、借金があっても生活に困っていても」
「人との関係で悩んでいても」
「それでもね」
 どんな事情があってもだ。
「それだけはね」
「したら駄目ね」
「他の逃げ方で逃げて」
 そうしてだ。
「再起を計ればいいよ」
「それがいいわね」
「そう、だからね」
 それでだ。
「自殺をする位なら」
「他のやり方で逃げて」
「またやりなおせばいいんだよ」
「自殺は駄目ね」
「麻薬とね」
「その二つは駄目ね」
「僕はそう思うよ」
 こう言ったところでだった、ふと。
 目の前に何かが降りてきた、それは。
 小さくてふわふわしたものだった、そして白くきらきらとしていた。それが何か僕にはすぐにわかった。
「雪?」
「ええ、雪よね」
 香織さんもそれを見て言った。
「これって」
「うん、降らないと思っていたら」
「降ってきたわね」
「これは珍しいね」
 正直言ってだ。 
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