八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三百六話 イルミネーションの前でその五
「ワインは赤だね」
「赤ワインね」
「それかロゼだね」
「白はないのね」
「ワインでもね」
これはこれでもだ。
「白はね」
「そういえばクリスマスに白ワイン飲む人あまりいないかも」
「鶏肉や七面鳥には赤ワインが合うし」
それにだ。
「キリストの血だっていうから」
「余計にいいのね」
「やっぱりキリストの日だからね」
それならだ。
「キリストにちなんで」
「赤ワインね」
「それがいいよ」
「そうよね」
「それでね」
そのうえでだ。
「楽しく飲むべきだよ、ただね」
「ただ?」
「親父はトカイ好きだから」
「ハンガリーのあのワインね」
「トカイは一応赤ワインなのかな」
僕はこのワインについて首を傾げて考えた。
「どうなのかな」
「赤じゃないの?」
「そうなるかな、もっと言えば貴腐ワインだけれどね」
正確に言うとだ。
「そうなるね、それで親父はトカイも好きで」
「クリスマスにも飲まれるの」
「他のワインも好きだけれどね」
イタリアのランブルスコワインも好きだし白ワインだとドイツのモーゼルワインなんかも好きでよく飲んで居る。
「トカイも好きで」
「クリスマスにもなのね」
「今も飲んでるかな」
ここでは日本と欧州の時差は考えなかった。
「そうかな」
「そうなのね」
「お袋と二人で、いや」
親父のあの女好きを思い出してこうも言った。
「お他の女の人とかな」
「飲んでるかもなの」
「知れないね」
「義和のお父さんって有名よね」
「交際相手のいる人には手を出さないけれどね」
このことは絶対だ、その仲が冷えていてもだ。
「そうした人ってわかるらしいし」
「そうなの」
「付き合ってる人いる人って何か目に出るらしいんだ」
「そうなの」
「きっとなったら相手の人へのあてつけで」
親父が言うならだ。
「変に笑ったら浮気を楽しもうとしていて逸らしたら後ろめたい」
「そうした気持ちが出ているのね」
「だからわかるらしいんだ」
親父が言うにはだ。
「それで付き合ってる人がいるとね」
「その人とは遊ばないの」
「それが親父なんだ」
「ポリシーあるのね」
「親父が言うには伊藤博文さんらしいよ」
明治の元勲の一人で桁外れの女好きと知られた人だ、功績と人格が凄いので物凄い女遊びもご愛嬌に思えるのが流石だと言うべきか。
「あの人みたいにね」
「遊んでるの」
「そうらしいよ」
「そうなのね」
「伊藤博文さんは遊びがわかっていてね」
その女遊びがだ。
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