八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三百五話 イルミネーションその二
「本当にクリスマスの楽しみ方はね」
「いいのね」
「だって本当に終戦直後は」
今年のクリスマスはとにかく太宰治のメリー=クリスマスという作品を連想する。あの作品がどうしてもだ。
「何もなかったからね」
「その中で楽しんでいたから」
「ワインなんてね」
それどころかだ。
「カストリだったから」
「質の悪いお酒ね」
「三杯飲んだら死ぬっていう位ね」
「メタノールも入っていて」
「そう、それでね」
とにかく飲めればいいということでだ。
「ワインどころかね」
「粗悪品もいいお酒で」
「そんなお酒を飲んで」
終戦直後はだ。
「もう残飯シチューとかすいとんとか」
「そんなのしかなくて」
「もう食べられれば何でもよかったとか」
「そういう時代で」
「ローストチキンとかケーキとか」
こうしたものはだ。
「進駐軍にしかね」
「なかったのね」
「うん、もうそんなのだったから」
それでだ。
「ワインとかケーキがなくても」
「楽しんだらいいのね」
「何か飲んで食べられると」
それでだけでだ。
「充分だともね」
「考えられるね」
「うん、だから」
それでだ。
「結局自分が楽しめたら」
それでだ。
「いいんじゃないかな」
「クリスマスの楽しみ方はそれぞれね」
「僕達はこうして楽しんでいるけれど」
それでもだ。
「それぞれね」
「別にね」
「じゃあお寿司食べてもいいよね」
香織さんは笑って僕に言ってきた。
「クリスマスに」
「いいと思うよ、鶏肉駄目な人もいるし」
食べものの好き嫌いはどうしてもある、僕にしても苦手な食べものはある。人それぞれということだ。
「それでね」
「お寿司でもいいのね」
「ヒトラーだったら」
あの独裁者の場合はというと。
「菜食主義だったっていうから」
「鶏肉はなしね」
「ワインもね」
この人の場合はだ。
「ないよ」
「あの人お酒も飲まなかったから」
「だからね」
「ケーキだけね」
「それでも楽しんでいただろうし」
ケーキだけでもだ。
「いいと思うよ」
「そうなのね」
「まあヒトラーは極端だけれど」
「菜食主義者でお酒も飲まなくて」
「煙草も吸わなかったしね」
特に総統官邸では全館禁煙だった。
「そうだったから」
「クリスマスも禁欲的ね」
「うん、それでね」
そのうえでだ。
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