真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
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第106話 難楼討伐 後編
「これはどういことだ?」
私は風に詰問しました。
彼女は難楼の元へ使者として出向いていました。
彼女は難楼から降伏の意思を引き出すことに成功し、私の元に美女を連れ戻ってきました。
ただ、彼女の連れてきた女性の人数は予定の人数より明らかに多いですし、その中には子供もいます。
献上の女性の人数もそうですが、子供もいることに意味が分かりません。
既婚者の女性も混ざっているのでしょうか?
気が動転した私は風を引きずって、私の陣幕に連れるや彼女に事の仔細を問い出しました。
「正宗様、お約束の貢物である美女でございます~」
風は私を一瞬を目を合わせましたが直ぐに視線を反らしました。
「早く説明しろ!」
私は風の態度が気に入らず、風の首を絞めるように持ち上げました。
「う、うう・・・・・・。苦しいの・・・・・・です~」
風は私の拘束から逃れようと暴れました。
「済まない。少し頭に血が昇ったようだ」
「はあぁ、死ぬかと思ったのです」
風は息切れしていました。
彼女は数度深呼吸をして、私に今回の経緯を説明しだしました。
風の説明によると、今回の美女千人は難楼による申し出だそうです。
そうです。
私が掲示した人数を遥かに上回る人数です。
確かに難楼の勢力は一万程でしたので、それだけの美女がいてもおかしくはないです。
しかも、その中に難楼自身も加わっているという話です。
「どういうことだ。裏があるのではないだろうな。だいたい、何故に難楼がその中にいる」
「難楼はなかなかの美女だと思うのです~。それに、本人の立っての希望なのです。私も難楼の真意にはいささか疑念が残ることは確かです」
「なら、何故にこの話を飲んだのだ。それに子供までいたではないか。真逆とは思うが・・・・・・あの女性の中には既婚者も混ざっているのではないか?」
私は嫌な汗を額にかきつつ、風に尋ねました。
「え~と・・・・・・」
風はアメを舐め私から視線を反らしました。
「兄ちゃん、空気を読めよ」
風の頭の上の宝慧がいきなり喋りだしました。
「宝慧、そんな口の聞き方はいけませんよ~」
私は双天戟を手に取り、風の喉元に突きつけました。
「全て話せ」
私は底冷えのする冷徹な声音で風に言いました。
「正宗様、全てお話致しますので落ち着いてください~」
私の行動に風は慌て出しました。
「という訳です」
風の説明を受け、私は両手で頭を抱え踞りました。
「難楼は私への誠意と服従の証として千人の女を差し出したということか?」
「はい。どうせ辱めを受けるなら、正宗様の元に来た方が幾ばくかましということでしょうね。美しい女性なら直のことなのです。しかし、子持ちまでとは些か失礼な気がしなくもありませんが・・・・・・。異民族らしいと言えばらしいですね」
風は染み染みと頷きながら言いました。
「私は降伏条件を飲めば、危害は加えぬといったはずだ」
私は美女10人と先に出した降伏条件を飲めば、彼らに危害を加えぬと言いました。
私の言葉が信用できないのでしょうか?
確かに敗残の勢力に女を差し出せという敵将の言葉など信用できる訳がないです。
「私も難楼にその旨を伝えたのですが、やはり信用できなかったのでしょう。多分、彼女は一度何かあれば正宗様と刺し違える覚悟かと思うのです~。難楼は中々芯の通った人物のようですね。一軍の頭領である者が敵将の辱めを受けると分かって、自分の身を差し出すなど普通はできません」
風は難楼のことを褒めていました。
「それは建前だろう」
この私がそんな鬼畜なことをする訳ないです。
彼らにそれを判断する術などないのは分かっています。
ある意味、この事態は予定調和というところなのかもしれません。
私は凄く気が重くなってきました。
だいたい子持ちの既婚者まで美女に含めるなんて聞いていないです。
美人だからといっても節度があるでしょう。
でも、風は難楼側が私の配下の兵による暴行を恐れ、見目の良い女性を私の元に送ったのではないかと言っていました。
私が身分が高くとも女性達が辱められた挙げ句、捨てられるとは考えなかったのでしょうか。
「まあ、そうなのですが・・・・・・。選ぶ道がないということでしょうね。兵卒に辱めれれば、どんな目に会うかなど目に見えているしょう。子供のいる女性は自分の子供だけでも無事に生きて欲しいと思い、慰み者になるのも厭わずに正宗様の元に来たということではないでしょうか」
風は重々しく口を開きました。
「風・・・・・・。私が物凄く悪い奴のように思えるのは気のせいか?」
「気のせいではないですね。事実です」
「そうか・・・・・・」
私は幽鬼の如く、顔を俯きながら風に近づき首を絞めました。
「ぐ、ぐ苦る・・・じ・・・い」
風は俺の拘束から逃れようとしました。
「この馬鹿、もう少し上手くできなかったのか! これでは俺は最低の屑だろうが!」
「お、おぉお落ち・・・・・・着・・・・・・いて・・・・・・」
風は苦しいそうに言いました。
「何を為さっているのです!」
俺が風の首を絞めるのを止める者が現れました。
「う! 冥琳・・・・・・、何か用か?」
冥琳はこめかみを震わせながら、私を睨んでいました。
お陰で一瞬たじろいでしまい、風の拘束の手を緩めてしました。
「ごほ、ごほ・・・・・・。死ぬかと思ったのです~」
風は咳を吐きながら私に抗議をしました。
「正宗様、あの女達は何なのです。納得できるように説明していだきます」
「はい」
「はい」
私と風は冥琳の剣幕に気圧され、洗いざらい話すはめになりました。
「何と言うことをなさるのです。風! これはお前の入れ知恵なのか?」
冥琳は風を一睨みして詰問しました。
「ええ、そうなのです~。ですが決心されたのは正宗様です」
風は私を見て、援護射撃を求めてきた。
「ああ、その通りだ。想定していた結果とは随分とずれているがな」
「揚羽殿は無理に難楼の勢力を取り込む必要なしと言われたはずです。何故、こんな真似をしてまで、彼らを救わねばならないのです。正宗様が彼らに女の献上を要求した以上、その女達を正宗様は懐で養わねばならなくなりましたぞ。確認した限りでは千人位。更に女達の子供が三百人。そして、その中に難楼がいることも懸念の材料です。彼女は正宗様の御命を狙うかもしれませんぞ。あなた様を亡き者にすれば、状況を一点させると考えているやもしれません」
冥琳は頭が痛そうでした。
「冥琳、名案はないかな」
私は申し訳なさそうに冥琳に尋ねました。
「こうなる前にご相談いただきたかったです。ですが、降伏を拒否された時点で、それを知った白藤達が喜び勇んで烏桓族を嬲り殺しに向ったのでしょうし・・・・・・。緊急の事態であったことは事実ですね」
冥琳は頭が痛そうな表情をしていましたが、暫くすると私を優しい表情で見つめました。
「正宗様、あなた様のお気持ちは良く分かりました。この一件は万事、この冥琳にお任せください」
「私も出来る限りのことは協力する」
冥琳の力強い声に暗い心に光明が灯りました。
彼女が女神様のように見えます。
彼女は美しく、私に陰日向となく私を支えてくれる優秀な家臣です。
「ええ、正宗様には十分にご尽力していただきます」
冥琳は少々顔を赤らめ私を見て言いました。
何を恥ずかしがっているのでしょうか?
「正宗様には難楼が献上した生娘から妾を数人お選びください」
「お、おい・・・・・・。冥琳、何を言っているんだい・・・・・・」
私は冥琳を見て狼狽えました。
風の方を見えると、彼女は私にご愁傷様ですと私を哀れむような表情で見ました。
「難楼達に女を差し出せと言っておきながら、ただ放置しては『正宗様が難楼達から手に入れた女を弄び陵辱の限りを尽くしている』などといらぬ風聞が立ちます。ならば、その中から妾をお選びになり、伽の相手をさせればよろしいでしょう」
「どうしてそうなる。もっと、泥沼に嵌るだろうが・・・・・・」
冥琳の提案に私は更に狼狽しました。
「そうは成りませぬ。寵姫を数人選び、お側に置くことで、後の女達は正宗様のお目に届かなかったとして、正宗様の屋敷にて軟禁するればよろしいと存じます。既婚者の女に関しては折を見て、夫の元に返せばよろしいでしょう」
「正宗様の夜のお供を手に入れた上、経済的ですね。ただ、既婚者の女の放免にしても夫はその女のことを受け入れることができるでしょうか?」
風は冥琳に質問をしました。
「そんなことなど知らぬ。夫と子供のいる女など面倒なことになるだけだ。さっさと叩き出すに限る。他の女達も追々放免すればいい」
冥琳は風の考えに冷たく言い放った。
その後、冥琳はモジモジと自分の手の指を弄り出した。
「正宗様、この私を側室にしてくださいませんか?」
いきなり冥琳は私に爆弾発言をしました。
「私は正宗様をお慕いしております。正宗様が身持ちがお固いと思っており遠慮しておりました。ですが、今度のことでその考えを改めました。是非、この冥琳を側室にしてください」
「え?」
私は素っ頓狂な声を上げました。
「正宗様、幾ら演技とはいえ、女を差し出せと申されるならば、それは麗羽殿や揚羽殿以外の女性を欲したということではございませんか?」
「そ、そんな訳あるか! 俺は妻達一筋だ」
冥琳の話を顔を全力で左右に振り否定しました。
「私はお嫌いでしょうか。私の実家は麗羽殿の実家である袁家より劣りますが、二世三公の家柄でございます。正宗様の側室になるのに支障はないと存じます」
冥琳は真剣な表情で私に詰め寄って来ました。
「冥琳、顔が近いぞ・・・・・・。少し落ち着こう」
「やはり、私のことがお嫌いなのですね」
冥琳は私を悲痛に満ちた表情で見つめると、目を反らし俯きました。
美人の悲しい表情を見ると罪悪感がひしひしと私の胸を突き刺します。
「兄ちゃん、はっきりしろよ。美人がお前さんに勇気を持って告白しているんだ。ここは妾と側室貰って、酒池肉林の日々を楽しもうぜ」
宝慧が私に下ネタを交え、説教をしてきました。
「冥琳、私はお前のことは好きだぞ。本当に妻になってくれれば、男として嬉しいと思う。しかし、私には麗羽と揚羽がいる。それに、私はそれ程甲斐性がある人間じゃない。等しく愛してやる自身がない」
この世界は一夫多妻制なので、王ならば7~8人位側室を持つことは自然なことだと思います。
実際はもっと多いでしょうけどね。
でも、私はあんまり甲斐性があると思えないです。
「等しく愛せると断言できる男を信用する女などいません」
気づくと瞳に涙を讃えた冥琳が俺の手を握ってきました。
「私はあなたのお優しい心を好いています。そして、その心は本物と思っております。ご自分の名声を傷を付けてまで人の命を救うあなた様は」
冥琳は私に更に接近してきました。
この誘惑に私は抗うこと叶わず、陥落しました。
冥琳との衝撃の時間を過ごした私は白蓮、白椿、白藤の訪問を受けました。
言うまでもなく私を小汚く罵っていました。
唯一、白蓮だけは私に何も言わず、ただ睨みつけていました。
白椿、白藤が激しく罵った後、白蓮は私にひとこと「何故、そこまでするんだい」と苦悶の表情で言いました。
白蓮意外の二人はその意味が分からなかったようでしたが、その言葉は私には辛かったです。
白蓮はそれだけ告げるとそれ以上何も語らず、私の陣幕を去っていきました。
その後を慌てて、白椿、白藤が追っていきました。
白蓮は私の行為の真意を理解したようです。
彼女は私が己の欲で女を差し出させと言うような人間でないと確信しているのだと思います。
そのことは嬉しい反面、彼女への裏切りをしているような気持ちになりました。
白蓮にとって、烏桓族は粛正の対象でしかないのです。
それを私は泥を被ってまで守ろうとしたのです。
彼女の心境は複雑な心境だと思います。
私は彼女ともう一度話をする機会を作るべきでしょう。
私は自分の妾の話と冥琳の側室の話の件を含め問題を抱えることになりました。
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