恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第九十五話 陸遜、ふと見つけるのことその七
「都でなのね」
「はい、そうでした」
こうだ。文姫はその時のことを思い出し暗い顔で話すのである。
「私が眠っている間に屋敷に忍び込み」
「そのうえでなのね」
「気付けば。縛られ目隠しをされていて」
「匈奴に売られていたなんてね」
「袁紹様がおられなければ」
そのだ。彼女を救った袁紹がいなかったらというのだ。
「大変なことになっていました」
「そうよね。匈奴の単于の慰みものになっていたわ」
「本当に危ういところでした」
「それで誰なの?」
紀霊は文姫に尋ねた。
「あんたを誘拐して匈奴に売ったのは」
「それがわからないのです」
こう答える文姫だった。
「今に至るまで」
「宦官の奴等じゃないの?」
紀霊はローレンスが突進する牛をかわし剣を刺すのを見ながら話す。
「あんたの家って宦官連中と仲悪かったし」
「はい、父は学者でしたが」
政治にも関わっていたのだ。言うなら政治顧問だったのだ。
「そのせいでしょうか」
「そうじゃないの?」
こう考えて言う紀霊だった。
「ましてやあんたもね」
「私も?」
「凄い学識だから」
「いえ、私はそんな」
「謙遜しなくていいのよ」
そのことはだ。笑っていいとするのだった。
「実際のことだから」
「はあ」
「それでね」
さらに話す紀霊だった。
「あんたも正直宦官嫌いだったでしょ」
「あまり。ああした方々は」
「帝を惑わすし私利私欲ばかり追い求めて民から搾り取って」
「そうしたことは止めなければなりません」
文姫の美麗な顔に厳しいものが宿った。そのうえでの言葉だった。
「ですから先の帝にもです」
「何度も提案していたわよね」
「はい、宦官を排除しその力を抑えることを」
そのことをだというのだ。
「提案させてもらいましたが」
「それで睨まれてじゃないかしら」
「では宦官達が」
「そう。そうじゃないの?」
こう言うのである。
「あの連中なら普通にやるでしょ」
「確かに。謀を得手としていますから」
「正直滅茶苦茶怪しいでしょ」
こうまで言うのである。
「張譲の行方はわからないけれど」
「あの者が首謀者でしょうか」
「限りなく黒に近いと思うわ」
紀霊はこう推察していく。
「あの連中ならよ」
「そうですね。ただ」
「ただ?」
「そうしたことははっきり調べていかないと」
「言えないことだっていうのね」
「私自身もです」
そのだ。文姫もだというのだ。当人もだ。
「確かに宦官達は怪しいです」
「そうでしょ。あからさまじゃない」
「しかし。よく調べて」
「そうして言わないといけないのね」
「そう思います」
文姫は真面目な態度で紀霊に話す。
「しかも宦官達、十常侍はです」
「全員追放されたか行方がわからないわね」
「特に首謀者の張譲がです」
「そうそう、あいつ」
十常侍の中心のだ。彼女はだというのだ。
「あいつ本当に何処に行ったのよ」
「後宮で急に姿を消したらしいですが」
「私達が来たので行方をくらましたのかしら」
「その可能性は高いですね」
「あいつは何としても行方を探って」
そうしてだというのだ。
「見つけ出してあんたのこと吐かせないとね」
「はい、絶対に」
「とにかく。宦官達は厄介よ」
話が宦官のことに移った。
「企んでばかりだし」
「そうですね。ですから今も」
「後宮も改革を進めているのね」
「それで私も」
「ああ、あんたの策で進んでるんだったわね」
「麗羽様が容れて下さいました」
「あの方がなのね」
文姫は元々袁紹の家臣だ。だからなのだ。
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