恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第九十四話 司馬尉、妹達を呼ぶのことその四
こうして益州と擁州のことは話が決まった。漢王朝は彼女達に支えられはじめていた。
その擁州でだ。司馬尉は。
二人の少女達にだ。こう言っていた。
「来たわね」
「はい、お姉様」
「只今参りました」
一人は絹を思わせる妖しい輝きの黒髪を持っている。その髪が腰まである。
右が前になっている白い着物に紅の袴を着ている。切れ長の睫毛の長い琥珀の目に小さな唇を持っている。顔は細く雪の様だ。
もう一人は金色の髪を短くしている。はっきりとした青い目であり首には逆さになった十字架をかけ黒い法衣を着ている。シスターの服だ。
二人共その背は司馬尉よりも低い。その二人がだ。彼女に対して言うのだ。
「司馬師、ここに」
「司馬昭もまた」
「ええ。貴女達がいれば」
司馬尉はどうかとだ。妖しい笑みで話すのだった。
「最早全てはなったわね」
「この戦は姉上お一人で充分では?」
「それで我等を御呼びしたのは」
「わかっている筈よ」
妖しい笑みをそのままにだ。司馬尉は言うのだった。
「見せる為よ」
「あの者達にですね」
「私達を見ている彼女達に」
「それとあの世界から来ている面々にもね」
彼等のこともだ。司馬尉は妹達に話した。
「見せる為によ」
「我等の戦の仕方と」
「そのやり方を」
「思う存分見せてあげるわ」
笑みの妖しさがさらに深まる。
「司馬家のやり方をね」
「そういうことでしたら」
「我等もまた」
「さて、では早速ね」
また妹達に言う司馬尉だった。
「軍儀を開くわよ」
「ではあの者達もですね」
「ここに呼びますね」
「いえ、呼ばないわ」
曹仁達はだ。呼ばないというのだ。
それは何故かもだ。司馬尉は話した。
「私達でやるわ」
「やはりですか」
「それされますか」
「そうよ。私達の戦だから」
それでだとだ。これが司馬尉の言葉だった。
「そうさせてもらうわ」
「後で曹操や袁紹が何か言うのでは」
「それは構いませんか」
「気にする必要があるのかしら」
司馬尉は平然として妹達に返す。
「あの娘達のことは」
「いえ、その必要はありません」
「全くです」
司馬師と司馬昭もだ。平然とした笑みで長姉に話す。
「所詮は宦官の娘に妾腹」
「それでどうして気にすることがありましょうか」
「その通りよ。私達は名門司馬家の嫡流よ」
「宦官や妾とは違います」
「何一つとして同じものはありません」
「だから。あの娘達が何を言っても」
また言う司馬尉だった。
「気にすることはないわ」
「そうですね。それでは」
「あの娘達は」
「ええ。ただ」
しかしだとだ。ここで司馬尉の言葉が止まった。
そのうえでだ。この娘の名前を出すのだった。
「劉備といったわね」
「劉備?あのですか」
「何でも皇室の血を引くという」
「あの娘ですか」
「草靴や蓆を売っていたという」
「ええ、あの娘よ」
まさにだ。その娘だというのだ。
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