もう一つの"木ノ葉崩し"
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第八話―滝の激流
里の北東部で睨み合うのは,猿飛サスケ・志村サイゾウコンビと角都である。
「まさか滝隠れが一枚噛んでたとはな……雲隠れとは示し合わせた上か?」
サスケの問いかけに対し,角都はゆっくりと答える。
「本来は俺一人で火影を暗殺する予定だった……偶然連中と遭遇して利用したやっただけだ。しかし結局こうして貴様らに見つかるくらいなら,俺一人で実行した方が上手くいっていたな。」
「火影様を暗殺だと?小国の忍が……あまり調子に乗るなよ。」
角都の言葉を聞いたサイゾウは口調を荒げて睨みつける。
「お前がどれだけ隠密に行動しようと,どの道ミト様の悪意感知からは逃れられなかった。」
サスケが落ち着いて切り返すも,角都はなお余裕のある様子でサイゾウの牽制など気にも留めない。
「そうだ,あの女……奇妙な能力を持っていたな。火影を暗殺するついでに奴の首も捕っておけば,金になるかもしれん。」
「コイツ……さっきから聞いてりゃ好き勝手言いやがって……!」
その言葉にしびれを切らせたか,サイゾウは一人で角都へ向かって突っ込んでいく。
ダッ!
「待て,サイゾウ!」
バッバッバッ!
「風遁・真空大玉!」
「フン,無策で突っ込んでくるとは……。」
サイゾウが吹き出した巨大な真空の塊を角都は軽くかわす。その間にサイゾウは距離を詰め,今度は蹴りを繰り出す。
「はっ!」
「無駄だ。」
ガッ!
角都はやはり余裕の表情のまま,腕でサイゾウの蹴りをガードする。しかし……
「……何…?」
「ふん,油断したな。」
ザシュッ!!
「くっ……貴様……!」
「チッ,浅かったな……。何だコイツの体の硬さ……。」
角都はガードした腕に切り傷を負い,血しぶきが飛ぶ。
「怒りに任せて突っ込んできたかと思ったが演技か……相当冷静な攻撃だ。風遁をまとった蹴りとはな……。」
サイゾウは,クナイや剣などの武器だけでなく,自分自身の体の一部に風遁チャクラを纏うことで単なる体術による攻撃を斬撃に変えることができるのである。
「並の忍ならガードしたが最後,腕一本まるごと飛ぶんだがな。ずいぶんと変わった体質してやがる。」
「それはお互い様だ。こんな傷を負ったのは久方ぶりだな。」
角都は血が滴る片腕をチラリと見る。
サイゾウは再び角都と距離を取ってサスケの元へ戻る。
「ヒヤヒヤさせやがって。」
サスケは角都から目を離さないまま,サイゾウに文句をつける。
「ヤツの能力を軽く偵察してやろうと思ってな。だがさっきの無礼な言葉が許せねえのは事実だ。」
「ああ,とっとと片づける!」
「フン,こっちのセリフだ。」
今度は角都の方から,二人に向かって攻撃を仕掛けに突撃する。
ダッ!
「来るぞ!」
「気を付けろ!コイツの体,妙に頑丈だ!」
身構えるサスケとサイゾウに対し,角都はまずサスケに向かって拳を繰り出す。
「フン!」
ガッ!
サスケは即座に腕を交差させてそのパンチを受けるが……
(くっ,なんて重さだ……!)
踏ん張り切れず,そのまま後ろへ吹っ飛ばされる。
「サスケ!くそっ……!」
サスケの横にいたサイゾウは,サスケを吹っ飛ばした角都の首元に向かってすぐさま手刀で反撃に出る。
「それも風遁か?だがもう食らわん!」
サッ!
角都は腰を落としてこれをかわし,低い位置からのカウンターでサスケと同じ場所までサイゾウを蹴り飛ばす。
ドカッ!!
「ぐあっ!」
角都によってあっという間に吹っ飛ばされてしまったサスケとサイゾウだが,何とか大ダメージは回避してすぐに立ち上がる。
「無事か?」
サスケの問いかけに,サイゾウが答える。
「何とかな。コイツ,スピードもかなりある上,体術の練度も相当高え。」
「それに加えてあの硬さ……おそらく体を硬化する術か何かだ。同じ土俵で殴り合うのは得策じゃないな。」
「それが出来るのはお前の"アレ"ぐらいだろうからな。ここは遠距離から忍術で攻め立てるのが定跡だ。」
「よし!」
相談を終えた二人は吹っ飛ばされた位置から角都に狙いを定めて同時に印を結び始める。
バッバッバッ!
「火遁・大炎弾!」
「風遁・大乱破!」
サスケは口から火炎を吹き出し,更にサイゾウが風を起こしてその火を煽る。
(風遁で火遁の威力を上げた合わせ技か……!)「土遁・土矛!!」
角都は全身を硬化し,更に腕を体の前で交差させて守りを固める。
ゴオオォォ!!!
角都の全身が巨大な炎の塊にのみ込まれる。
「どうだ?」
「やっ……てないな,恐らく。」
ダッ!!
「なめるな!」
炎の塊を掻い潜った角都が火炎の中から姿を現し,そのまま再び二人に向かって突っ込んでくる。
「やっぱダメか!"壁"だ!」
「ああ!」
バッバッバッ!
「土遁・三重土流壁!」
「水遁・二段水陣壁!」
サスケが地面に両手を当てると,角都の前方に地面からせり上がってきた三枚の土の壁が立ち塞がる。更に,サイゾウが口から水を吹き出して土の壁どうしの隙間を水の幕で埋め,より厚い壁を創り出す。
「こざかしい……!」
ドガガガガガ!!!
角都は突撃の勢いを止めず,半ばタックルのような肘打ちで計五重の壁を全て打ち破ってみせる。
「くそっ,これでも止まらねえか……!」
「なんて突破力だ……。」
二人は壁が完全に打ち破られる前に急いで後方に跳び,距離を保とうとする。
「何を繰り出してこようと,この硬化した体の前では無意味だ!」
壁を突破した角都は更に進んでサスケとサイゾウの目前まで迫る。
「それはどうだかな!サイゾウ!」
「分かってる!」
バッバッバッ!
二人は同時に同じ印を結び,それぞれ地面に片手を当てる。
「「口寄せの術!!!」」
「!?」
「猿猴王・猿魔!!」
「聖獣王・獏!!」
後書き
お読みいただきありがとうございます!
「これがやりたかっただけシーン」その一,猿魔と獏の口寄せコラボです。なお,"聖獣王"という二つ名は"猿猴王"と対にするために作った本作オリジナルです。もう少し頓知のきいたカッコいい二つ名を思いつきたかったですが,私の語彙センスが足りませんでした。
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