もう一つの"木ノ葉崩し"
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第七話―雲流剣術
「千手扉間?なるほど,こいつがそうか。」
「聞いたことあるぜ。火影の弟だな?永遠の二番手ってやつだ。」
里の北部で対峙するのは扉間と金銀兄弟である。敵の名前を知った兄弟は余裕の表情を見せながら嘲笑している。しかしもちろん,そのような挑発にいちいち乗るような扉間ではない。
バッバッバッ!
「水遁・水断波!」
無言で印を結び,口から高圧の水流を吹き出す。
「おっと,いきなりかよオイ!」
「こりゃ食らったら真っ二つだぜ!」
兄弟は各々ジャンプしてかわすが,扉間はそれを追うようにしてなお水流を出し続ける。兄弟は更に右へ左へ跳び回りながら水圧のカッターを避けていく。
「チッ,しつけえな……ん?」
バッ!
ようやく水が止まったと思った矢先,銀角の目の前に扉間が急接近する。扉間の水遁を避けているうち,いつしか金角と銀角の距離が遠くなっていた。
(速い……!)
扉間は刀を手にして振りかぶる。
「銀角!」(最初の攻撃はオレ達を分断する目的か!)
しかし,金角が地面を蹴るやいなや,すさまじい速度で銀角のもとへ駆けつけてくる。
「!」
そのまま扉間へ体当たりする勢いで突っ込んでくるが,扉間はギリギリで身を引いてこれを避けた。
(やはりそう甘くはないか……。こやつのスピードも並ではないな。)
扉間は一旦距離を置きながら,相手の力量を改めて認識する。
「こいつのスピード,雷影のヤロー並だな。油断すんじゃねえぞ銀角。」
「おうよ金角。しかも剣使いときやがった。ウチの里にもいるぜ,"雲流剣術"ってやつだ。そっちがそうなら……」
金角が大きく口を開け,その中から覗かせた二本の柄を兄弟が引っ張り出すと,それぞれ巨大な長方形の刃をした二本の剣が姿を現す。
「こっちも同じ土俵で戦ってやるよ!」
「オレ達のは雲流じゃねえけどな!」
~~~~~
タイヨウ,ヒルゼンと別れたダンゾウは,里の北東部を探索している。街並みの一角から,土埃が立っているのを見つけた。
「あっちか!」
家々の屋根を飛び移りながら,すぐさまそちらへ駆けつける。
(見つけたぞ……。派手にやってくれやがって……!)
ダンゾウは,家から見下ろすようにして様子を窺う。三人組の雲隠れの忍たちが暴れているようだ。
「もう逃げ遅れた奴らはいねえみてえだな。」
「今度は向こうの方へ行ってみるか。まだまだ壊しがいのあるもんが残ってるぜ!」
「おう!」
(複数いやがるな。正面切っての戦闘は不利……ならば……!)
タンッ!バッバッバッ!
ダンゾウは印を結びながら,敵の背後から飛び込んでいく。
(……奇襲を仕掛けて先手を取る!)「風遁・真空玉!」
ビッ!ビッ!ビッ!
雲隠れの忍に狙いを定め,口から真空の玉を連続で吹き出す。
「何だ!?」
「木ノ葉の忍か……!」
「チッ!」
ドスッ!!ズバッ!
一人の忍には回避されたものの,一発は一人の急所に命中し,もう一発も別の一人の片足を射抜いた。
「ぐわぁっ!!」
「ぐっ……くそっ!」
「まずは一匹!てめえら,忍のくせして目立ちすぎなんだよ!」
ダンゾウは続けて懐からクナイを取り出し,片足を負傷して怯んだ忍を切り裂く。
ズバアッ!!
「ぐああぁぁっ!!」
「これで二匹目!最後だ,くたばれ!」
「ナメるな!」
キイィィン!!
初撃の不意打ちを回避していた雲隠れの忍はスキを見て剣を手に取り,二人の仲間を瞬殺したダンゾウの攻撃をはじき返す。
「チッ,さすがに全員一気にとはいかなかったか。」
速攻で決めきれなかったダンゾウは一旦距離を置く。
「まあいい,お前はゆっくり相手してやる。……ん!?なんだ,これ……!?」
しかしダンゾウは,自らが持っているクナイの先端がポッキリと折れていることに気付いて驚く。
「へっ,今さら気づいたか。忍のくせして鈍すぎなんだよ。」
雲隠れの忍はニヤリと笑いながらダンゾウの言葉を奪い取る。
「言ってくれるぜ。さっき攻撃を弾かれた時か……。その剣,ただの剣じゃないみたいだな?」
ダンゾウは使い物にならなくなったクナイを投げ捨て,新しいクナイを取り出す。
「おうよ。そんな小刀,何本出そうが結果は同じだぜ。なんたって俺の剣は,ガード不可だからな!」
~~~~~
目の前に立つその忍は,体中で剣を持っている。その数四本。対する彼は丸腰だ。
「行くぜ!」
バッ!
雲隠れの忍は,四本の剣を変幻自在に繰り出して襲い掛かる。あまりにも予測不可能な太刀筋である。
「……!」
サッ!サッ!サッ!サッ!
「フン!フン!フン!どうしたどうした!?逃げてるだけじゃどうにもならねえぞ!」
サッ!サッ!サッ!サッ!
「へっ,まあ無理もねえか!反撃するヒマもねえもんな!?」
サッ!サッ!サッ!サッ!
「いつまでよけ続けられるか,見物だぜ!」
サッ!サッ!サッ!……ババババッ!……サッ!
「けっ,逃げ足だけは速い野郎だな!」(……?……今コイツ,印を結ばなかったか……?)
サッ!サッ!
「ふん,いい加減そろそろ終わりにしてや……」
「火遁・豪火球の術。」
「……!?」
ボオオォォォッ!!!
「ぐわっ!!」
突如,口から吹き出された炎の塊が雲隠れの忍を襲う。雲隠れの忍はややダメージを負いながらも何とか後ろに下がって致命傷は避けた。
「何だと……。俺の乱れ斬りを,武器も使わず全てかわしながら印まで結んで反撃を……!?」
驚きを隠せない雲隠れの忍に彼はその眼を向け,久しぶりに口を開く。
「だから無駄だと,さっきも言ったはずだ。」
彼のその奇妙な模様の眼は,赤い光を放っていた。
「貴様,その眼……!それにさっきの火遁の術……!まさか……うちは一族か……!?」
「お前の言った通り,いい加減そろそろ終わりにするか。」
うちはカガミの手には,いつの間にか手裏剣が握られていた。
後書き
お読みいただきありがとうございます!
雲隠れにはいろんな戦闘スタイルの忍が居るので書いていて楽しいですね。
雲隠れの独特な剣術を相手に,木ノ葉の忍たちはいかにして立ち向かうのか……?
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