八条学園騒動記
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第五百九十三話 正門に向かう途中その八
「本当にな」
「性格は偉人じゃなかったのね」
「偉人と言っても人間だからな」
「完璧じゃないのね」
「そういうことだ」
アルフレドの言葉は強いものだった。
「だから人格がどうでもな」
「実績で偉人になるのね」
「その面はある、ゴッホも偉人だ」
画家の彼もというのだ。
「エキセントリックな人だったが」
「発作があってヒステリーも起こしたのよね」
ビアンカもゴッホの話は知っていた。
「そうよね」
「自分の耳を剃刀で切り落としもした」
「それで自殺したのよね」
「そろそろ名が売れてきた頃にな」
まさにその頃にだったのだ。
「自殺した、弟さんに子供が出来てな」
「何か衝動的によね」
「そうした、そして何かと強情で自己主張ばかりでな」
「お付き合いしにくい人だったのね」
「裏表はなかったが」
これは一切なかった、むしろそうしたことが出来る程器用な人間ではなかったのかも知れないがだ。
「しかしだ」
「それでもよね」
「コミュニケーション能力は皆無だった」
「そこベートーベンさんと一緒ね」
「そうだな」
言われてみればとだ、アルフレドも頷いた。
「ゴッホもな」
「コミュ障害だったのね」
「そうした能力とは無縁だった」
「そうよね」
「しかし才能は凄かった」
絵画のそれはというのだ。
「だからだ」
「偉人なのね」
「がむしゃらに描いていった」
激しいタッチで絵の具をそれこそ絵にその絵の具が浮き出るまでに使ってだ。
「そうして千点程残した」
「画家としては凄かったのね」
「もうひたすら描いてだ」
「多くの作品を残したのね」
「そのことは事実だ」
「そう思うと偉人ね、ただ偉人って」
ビアンカは歩きつつ腕を組み考える顔で言った、右手にあった美術部の展示会もまた明日となっていた。
「実績でなるのね」
「そうだ、人格はな」
「また別ね」
「人格による業績で偉人になった人もいるがな」
それでもというのだ。
「おおむねだ」
「業績でなるのね」
「ベートーベンは多くの名曲を残した」
このことは紛れもない事実だというのだ。
「今も残る位のな」
「だから偉人で」
「今もそう言われている」
「そういうことね」
「ガンジーも女性が好きだった」
今のマウリアの基礎となるインドの独立を勝ち取った運動家である。二十世紀最大の賢人とさえ言われている。
「あの人もな」
「そうだったんだ」
「そうだ、確かに素晴らしい人だった」
アルフレドはロミオに話した。
「あの人はな」
「そうだよね」
「非常に聡明な人物でだ」
「非暴力不服従でね」
「インドの独立を達成した」
「そのことは凄いよね」
「質素でかつ博識で公平でな」
そうした美徳を備えていてというのだ。
ページ上へ戻る