夢幻水滸伝
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第百六十四話 土佐沖にてその十六
「こちらに帰った」
「それで行ってすぐに帰ったんやね」
「そうした、とかくだ」
まさにというのだ。
「イギリス料理は私の口に合わない」
「随分優しい言葉だがや」
坂口は麦茶をすすりつつ真顔で言った。
「日本人の奥ゆかしさが出ているだがや」
「確か羅や施、メルヴィルやトウェインははっきりまずいと言ったな」
「アレンカールもだがや」
この面々はとだ、坂口は話した。
「食わなくてもまずいとだがや」
「言ったか」
「みたいだがや」
こう芥川に話した。
「どうもな」
「そうやったんやな」
「この世界でもだがや」
「イギリス料理はまずいか」
「このことは鉄板だや」
坂口はこの言葉も出した。
「そしてわしもだがや」
「イギリスの食いもんはあかんか」
「イギリス以外の国で食いたいだがや」
「やっぱりそうか」
「そう考えているだがや」
「そもそもハギスとは何だ」
室生は真顔で問う様に言った。
「一体」
「羊の腸に肉等を詰めたものだ」
「そうなのか、前から名前を聞いて何かと思っていたが」
そのハギスを見た日毬の言葉を聞いて述べた。
「ソーセージの様なものか」
「そう思うな」
「しかし違うか」
「外見も全く違う」
「そして美味いかどうかはか」
「私は食べなかったからわからないが」
それでもとだ、日毬は素麺を今も噛まずにすすって述べた。やはり喉越しで味わってそうして楽しんでいる。
「しかしだ」
「それでもだな」
「どう見ても駄目だと思った」
「そうなのだな」
「渡辺君が作ったらわからないが」
シェフの職業である彼女を見て言う。
「しかしだ」
「イギリスではか」
「そういうことだ」
「よくわかった、では一度試しに食べてみよう」
「その舌で確かめるか」
「私は実際に食べてみて確かめる主義だ」
そうした考えだからだというのだ。
「その様にしたい」
「そういうことだな」
「そうだ、では今度実際にいただいてもみよう」
「後悔はしないな」
「その様にしたい」
こう言ってだった、そのうえで。
室生は起きてすぐにマロリーにハギスについて尋ね暫く後でそれを食べてまずいと言った、だがこれは別の話である。
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