| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

夢幻水滸伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百六十四話 土佐沖にてその十五

「思いきり汗をかくのもな」
「好きか」
「かなりな」
 芥川ににやりと笑って話した、そうしつつ冷えた素麺をすすってやはり冷えた麦茶を飲んで言うのだった。
「そうや」
「それやったら大丈夫や」
「夏に暑いもん食うてたらか」
「カレーとかすき焼き食えるんやったら」
 それこそというのだ。
「大丈夫や」
「そやねんな」
「ちなみに僕は鰻が好きでな」
 芥川は笑って自分の好みも話した。
「鰻の蒲焼に鰻丼がな」
「好きか」
「土用はこれや、ただな」
「ただ?」
「マロリーお勧めの鰻のゼリーはあかん」
 こちらの料理はというのだ。
「どうもな」
「あれまずいんやな」
「いや、普通に作ったら美味いんや」
 そうしたらというのだ。
「けどイギリス人が作るとな」
「ちゃんと調理すると美味しいですよ」
 麻友が料理の専門家として言ってきた。
「鰻のパイも」
「というとイギリスの料理人自体の問題か」
「あたしはそう思いますよ」
 江戸っ子らしいはっきりとした返事だった。
「イギリス料理も普通に作りますと」
「美味いんやな」
「はい、ですが」
「下手が作るとやな」
「駄目になるんですよ」
「イギリス人の多くは火加減と味加減があかんかったな」
「はい、調味料の使い方が駄目で」
 それでというのだ。
「どうしてもです」
「あかん様になるか」
「お寿司を作ってお握りとかですから」
「ネットでも話題になってたな」
「ですからそうした人が作らなくて」
「普通の人が作るとやな」
「美味しいですよ、鰊のパイも」
 色々言われているこのパイもというのだ、パイはよくある料理であるがイギリス料理になると評判が悪いのだ。
「ちゃんと作りますと」
「それで鰻のゼリーもか」
「そうです、ザリガニのパイも」
 これもというのだ。
「ザリガニをそのまま入れたりしないで」
「私はマロリーが出したその料理を見て思わず言った」
 日毬はサングラスをかけ右手に持った箸を使って素麺をすすって喉越しを味わいながら強い口調で言った。
「これは料理かと」
「それであいつは料理だと答えただぎゃな」
「真顔でな」
 坂口にもこう返す。
「パイの中にそのままのザリガニが数体あった」
「はっきり姿出ていてやな」
「そうだった、味は言うまでもない」
 そこは気遣う日毬だった。
「だが食べなかった、ブリテンの面々だけが食べていた」
「その時先輩だけでしたか、日本人は」
「うむ、私以外はブリテンの四人だけだった」
 こう亜紀に答えた。
「戦の前にあちらの親善使節に行った時のことだ」
「統一してすぐの時やったね」
 その使者として送った綾乃も言ってきた。
「あの時にご馳走になったんだ」
「いや、食べていないからご馳走にはなっていない」
「パイ以外のも食べんかったんやね」
「ハギスもな」
 これもというのだ。
「口をつけなかった」
「あれもなんやね」
「それで食事は摂らず」
 そしてというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧