夢幻水滸伝
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第百六十四話 土佐沖にてその十三
「そんな悪ないわ」
「そうですね」
「奈良に美味いもんなしはもう昔の言葉ですか」
「それか間違いですか」
「実は、ですね」
「結構美味いもんあるわ、この三輪素麺かてええやろ」
まさにその三輪素麺をすすりながらの言葉だ。
「特に夏は最適や、しかもここで西瓜も後で出るから」
「それも大和の西瓜ですし」
「そっちも美味しいですから」
「余計にええ」
「そやっていうんですね」
「そやろ、大和もええで」
起きた世界では今では奈良県という地名になっているこの場所の食事はというのだ。芥川は確かな声で話した。
「ほんまに」
「そうですね」
「実際まずいもんばかりとは思いません」
佐藤兄妹は自分達から見て師匠でもある芥川のその言葉に頷いた。
「というかむしろ逆で」
「結構美味しいもんありますね」
「個人的には大和牛のすき焼きや」
芥川はこれを出した。
「これが一番ええやろ」
「ああ、それでええですね」
「宇陀の辺りの牛有名ですし」
「あそこの牛肉のすき焼きはもう絶品です」
「何とも言えません」
佐藤兄妹もまさにと答える。
「そうしたことも考えますと」
「やっぱり大和は美味しいもん結構ありますね」
「そやろ、そやからな」
芥川は素麺を食べつつさらに言った。
「別に美味いもんなしって思うことないで、お酒も美味しいしな」
「ああ、お酒ですね」
「大和にはそっちの神社もありますし」
「三輪大社がそうですね」
「まさにそれですね」
四人も酒と聞いてこう言った。
「最近は奈良時代のお酒も再現してますし」
「所謂濁り酒ですけど」
「あれも結構美味しいですし」
「ええですね」
「そやろ、ほなこのお素麺食べていこうか」
「量もあるしな」
中里もすすりつつ言う。
「どんどん食べていこうな」
「そうしよな、あとな」
「あと?」
「いや、自分お素麺かなり食うてるな」
芥川は中里の食欲を見て言った。
「そうしてるな」
「好きやからな」
「それでやな」
「そや、暑い時の素麺は」
それこそというのだ。
「こうしてな」
「どんどん食うんやな」
「そうするねん」
まさにというのだ。
「この通りな」
「成程な」
「おつゆに梅と生姜、それにミョウガも入れる」
見れば実際に中里のつゆの中にはミョウガを細かく刻んだものも入れている、そちらの味も楽しんでいるのだ。
「そうしてな」
「食べるんやな」
「これがな」
実際にというのだ。
「ほんまに美味しくて」
「それでやな」
「この通りや」
「どんどん食べられるんやな」
「そうや、ここに冷えた麦茶があれば」
実際にここで麦茶も飲んで言った。
「最高や」
「日本の夏の楽しみやな」
「ほんまにな、それでお素麺の後は西瓜も出るな」
「今さっき言うた通りにな」
「その西瓜もな」
こちらもというのだ。
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