夢幻水滸伝
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第百六十四話 土佐沖にてその十二
「一体」
「あっ、忘れてました」
「そういえばそれもありました」
「吉野葛もありました」
「あれ使ったお菓子も美味しいですね」
「そうだったたいか」
純奈は四人の話を聞いてそれで頷いた。
「よくわかったとよ」
「しかもうち等大和の北の方ですから」
「奈良とか郡山とかです」
「吉野ってもう大和の南で」
「縁ないんです」
「大和、起きた世界の奈良県は北と南でかなりちゃいまして」
志賀も言ってきた。
「北は人が多くて農業や他の産業も盛んですが」
「南は違うたいな」
「はい、山ばかりで人がかなり少ないです」
「そういえば南の方人口かなり少ないわ」
大和はとだ、棟梁の綾乃も言ってきた。
「戸籍見ても」
「そうそう、ほんま人少なくて」
「北と南やと全くちゃうんです」
「吉野から南はもう」
「かなりの田舎ばかりです」
「何か酷いこと言うてへん?」
綾乃はここぞとばかりに言う四人に言葉をかけた。
「大和出身にしては」
「いや、何ていいますか」
「大和って南北でほんまにちゃいまして」
「南はほんまに凄いんです」
「過疎地ですし」
「地元民特有の偏見やろ」
芥川は四人の言葉にはっきりと突っ込みを入れた。
「それは」
「そうですか?」
「地元民の率直な言葉やないですか?」
「実際に南人少ないですさかい」
「南の村とか全部合わせても平城京より人少ないです」
「それにしてもな」
どうかというのだった。
「自分等の大和の南への見方には毒があるな」
「大和がそんなとことは」
「私等も思ってなかったけど」
佐藤兄妹も言ってきた。
「とはいえ何か」
「四人の言葉には思うところが確かにありますね」
「そやろ、まあこうしたことって何処でもあるか」
芥川は二人にも話した。
「考えてみたら」
「どの国でもですね」
「それはありますね」
「どうしても」
「そうですね」
「播磨にしても兵庫県にしてもあるしな」
八条学園のある場所にもというのだ。
「そやからな」
「だからですね」
「四人の言うことは、ですね」
「それは何処もか、しかしな」
それでとだ、また言う芥川だった。
「吉野葛忘れたのは大和のモンとしてどないや」
「そうなりますね」
「谷崎潤一郎の作品の題名にもなってますし」
「そう考えましたら」
「やっぱりどうかってなりますね」
「そや、というか大和も美味しいもん結構あるやろ」
芥川はあらためて言った。
「じっくり思い出してみたら」
「まあそれは」
「言われてみればそうですね」
「鮎もありますし」
「山で茸とか猪も採れますし」
「そやったらな」
四人にも言う。
「美味いもんなしって言うこともないやろ」
「そうですね」
「奈良時代のお料理なんかもええですし」
「そっちも食べられるとかそうそうないですし」
「苺もあすかルビーありますし」
「そう思ったらな」
それこそというのだ。
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