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夢幻水滸伝

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第百五十八話 敵を待ちその十一

「洗濯ものだけじゃなくてお布団まで干したくなるよ」
「そこでそう言うのかよ」
「駄目かい?」
「所帯じみてるな、相変わらず。それにな」
 幸田は明るい顔で麻友にこうも言った。
「吸血鬼らしい言葉じゃねえな」
「こっちの世界じゃ吸血鬼も昼に外に出られるからだよ」 
 それでとだ、麻友は笑ったまま返した。
「だからだよ」
「それでかい」
「そうだよ、本当にこの晴れっぷりだとね」
 日本晴れと言っていいその中ではというのだ。
「洗濯ものもお布団もね」
「よくかい」
「干したいね」
「麻友っちは本当に変わらねえな」
「あたしは何処でも一緒だよ」
 麻友は幸田の言葉に明るく返した。
「起きた世界でもこっちの世界でもね」
「その調子だな」
「どう変わるっていうんだい」
 それこそというのだ。
「あたしが」
「それもそうだな」
「そうだよね、だから今もだよ」
「そう言ったんだな」
「そうさ、このお天気なら」
 この世界でもというのだ。
「洗濯ものを干してね」
「そして布団もか」
「干すよ、吉君もお布団干さないと駄目だよ」
「おい、おいらの布団もかよ」
「当たり前だよ、ちゃんと干して」
 そしてというのだ。
「お日様の光で奇麗にしないとね」
「日光の消毒だな」
「そうさ、それを使って」
 そしてというのだ。
「お布団の中にいるダニとかもやっつけないとね」
「だからなんだな」
「お布団派干さないとね、吉君のお布団も」
「そうなんだな」
「それで今日はもうね」
「帰ってか」
「干そうね、お布団」
 こう幸田に言うのだった。
「そうしようね」
「早速だな」
「思い立ったが吉日だって言うね」
「まあな、じゃあな」
「早速帰ろうね」
「やれやれだな、けれど麻友っちの言うことだからな」
 だからだとだ、幸田は麻友に笑って応えた。
「そうしようか」
「それじゃあね」
「部屋に戻るか」
 こう言って実際にだった。
 幸田は麻友と共に自分の部屋に戻るとすぐに布団を干すことになった、そしてその後で日毬に食堂で蕎麦を食いつつ言った。蕎麦はせいろである。
 そのせいろを噛まずに喉ごしで味わい彼は言った。
「そういえば布団も干してなかったな」
「迂闊だったな」
 日毬はざるそばを食べつつ応えた、麻友も一緒だが麻友も蕎麦はせいろで彼女も噛んでいない。だが日毬は噛んでいる。
「それは」
「ああ、けれどな」
「永井君に言われてだな」
「早速でい」
「布団を干したか」
「ああ、時々でも干さないと駄目だよな」
「その通りだ、起きた世界では寮でだ」
 それでとだ、日毬は述べた。蕎麦の食べ方は幸田が勢いよくなのに対して日毬のそれは規則正しい感じである。 
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