夢幻水滸伝
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第百五十八話 敵を待ちその九
「ほんまに」
「そうでした」
「はい、それと」
「それと?」
「たこ焼きも好きで」
この食べものもというのだ。
「よお食べます」
「たこ焼きもですか」
「そうです、いか焼きも」
関西のそれもというのだ、関西ではいか焼きは二種類あり烏賊をそのまま焼くものと小さく切って小麦粉と卵の生地に入れて焼くものがあるのだ。
「それもです」
「ありますか」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「お好み焼きもこうしてです」
「そういうことなんですね」
「そうです、あとお酒も」
こちらもというのだ。
「大好きで」
「あれっ、先輩飲みますか」
「そうでしたか」
井伏も山本も喜久子の今の言葉に驚きの声をあげた。
「真面目な人なんで飲まんと思ってました」
「ちゃいますか、そこは」
「いえ、確かに酔って乱れることは駄目ですが」
それでもとだ、喜久子は丁寧な動きでへらを使いつつ二人に答えた。
「ですが」
「それでもですか」
「お酒もですか」
「焼酎が好きです」
好きな酒はこれだというのだ。
「あとチューハイも」
「庶民的ですね」
「意外にも」
「ですから私は庶民です」
喜久子はそこは断った。
「紛れもなく」
「何かそういう印象しないんで」
「礼儀正しいですから」
井伏も山本も喜久子のこのことから話した。
「海音寺さんは気品もありますけえ」
「育ちのよさがありますのう」
「それは家の教育の結果かと」
喜久子はサイダーを礼儀正しい態度で飲みつつ答えた。
「やはり」
「そうですか」
「その結果ですか」
「そうかと。人は貧富で品性が決まるのではなく」
「教育ですか」
「それで決まるんですか」
「そうかと」
広島風のお好み焼きを楽しむ二人に答えた。
「私はそう思います」
「まあどんな暮らしでも人として卑しい奴はいますね」
玲子はサイダーを飲みつつ述べた。
「実際に」
「左様ですね」
「貧乏な家でも上品な人はいて」
「逆もですね」
「ありますね、それで海音寺先輩はですね」
「親の教育がまことに厳しく私は長女として妹達も躾けていますし」
そうした家庭の事情があってというのだ。
「その結果かと」
「そうなってるんですね」
「そう考えています」
「そういえば松尾先輩もですね」
玲子は日毬の名前も出した、尚玲子はよく胡座をかいて座るがこの店の座敷は掘り炬燵タイプなので足は下にやっている。
「あの人も」
「武家の様ですね」
「そうなんですよね」
「松尾さんもです」
「教育の結果ですか」
「それと生き方で」
教育に加えてというのだ。
「人の品性は決まるかと」
「そういうことですか」
「私はそう考えます」
「生き方もですか」
「松尾さんは生き方も毅然としておられます」
玲子が言う様に武家の様にというのだ。
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