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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百八十九話 ワインの後でその三

「親今どっちも日本にいないですし」
「イタリアですね」
「そっちにいますからね」 
 それも二人共だ。
「ですから」
「ご家族ではですね」
「過ごせないですから」
「だからですね」
「もうこれといってです」
「今のところは予定なしですか」
「はい、どうしたものか」
 僕は腕を組んで考える顔になって言った。
「一体」
「早く決められた方がです」
「いいですよね」
「八条家や学園のパーティーならぎりぎりでもいいですが」
「それでもですね」
「他の場所ならです」 
 それこそだ。
「考えないといけないですね」
「むしろ今の時点でも」
「間に合わないですね」
「クリスマスでは」
「そうですよね」
「以前知り合いがこんなことを言いました」
 ここで畑中さんはこんなことをお話してくれた。
「クリスマスのお話ではないですが」
「この時期ですね」
「松田聖子さんの日本武道館のコンサートですが」
「松田聖子さんのですか」
「十二月二十八日の」
 まさに年末だ。
「それを奈良で二十五日に知りまして」
「行きたいとか言ったんですか」
「小学一年の時に小学一年生を読みまして」
 あの児童漫画雑誌をというのだ、昔は一年生から六年生まであった。三年生以降はウェブ雑誌ででも復活Þして欲しいと言う人もいる。
「それで言われたのです」
「絶対にいけないですよね」
「はい、二十八日のコンサートをです」
「二十五日で言うとか」
「それも奈良で、ですから」
「何があっても無理ですね」
 それも松田聖子さんのコンサートだ、武道館でというからこの人がアイドルとして絶頂の頃のことなのがすぐにわかる。
「それこそ」
「親御さんに行きたいと言われたそうですが」
「無理ですよね」
「行ける筈ないと言われたとか」
「そうですよね」 
 どう考えてもだ。
「行ける筈ないですね」
「それをその方が四十の頃に言われました」
「そう言われるのも当然ですね」
「笑って私にお話してくれました」
「子供の言うことですね」
 まさにだ。
「それはまた」
「左様ですね」
「本当に」
「私もお話を聞いて思わず心の中で吹き出してしまいました」
「そうなりますよね」
 僕もそれはないと心から思った。
「今でいうとAKBとかですからね」
「その武道館なり横浜アリーナなりのライブにです」
「三日前に行きたい、ですね」
「無理ですね」
「どう考えましても」 
 それこそとしか言えない。
「不可能ですね」
「流石にこれは極端ですが」
「それでもですね」
「クリスマスの予定は早いうちにです」
「そうですね」
「お考えになって下さい」
 こう僕にお話してくれた。
「義和様も」
「そうさせてもらいます」
「お一人で楽しまれる方もおられるそうですが」
 そうした人もいる、世の中には。 
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