夢幻水滸伝
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第百五十六話 戦を前にしての日常その十二
「結局ゲットできんで」
「逃げる場合が多いですね」
「何か実際はゲットしてるって人もおるけど」
この議論は実はキルゲゴールからある、だが歌劇の解釈特にモーツァルトやワーグナーのそれは実に多彩で人それぞれなのだ。
「うちが観る限り」
「私もです」
「一人もゲットしてへんね」
「そうして地獄に落ちてますね」
「ゲット出来へん様になったから地獄に落ちたんやろか」
「人たらしの才能を失ったが故に」
「ゲットする為の人生やったのにな」
ドン=ジョヴァンニにとってはというのだ。
「それが出来へん様になって」
「人生の意味を失ったので」
「地獄に落ちることになったんやろか」
「彼の生きる意義は女性にあった」
「その女性をゲット出来ん様になって」
「死ぬことになったと」
「そうも今思ったけど」
こう喜久子に話した。
「どうやろか」
「間違っていないかも知れないですね」
喜久子は綾乃に考える顔で答えた。
「少なくとも作品の解釈としてはです」
「ええんやね」
「そう思いました、ただあの人の好みは」
「もう誰でもやね」
「そう思っていいかと」
女性なら誰でもいい、そうした人物だというのだ。
「あそこまで極端ですと」
「確かに極端やね」
「というかです」
千歳がそのドン=ジョヴァンニについて言及した、どうかという顔で。
「あの人はもう有り得ないですから」
「有り得ない位女好きやね」
「そうした人の好みは」
それこそというのだ。
「もう、です」
「参考にならへんのやね」
「はい、ですが背も胸もですか」
「喜久子ちゃんの言う通りやで」
それはとだ、綾乃は千歳に答えた。
「やっぱりな」
「人それぞれですか」
「例えばぽっちゃりが好きな人かておるし」
「太った人も」
「そもそも」
「そもそも?」
「人を外見だけで決めたらあかんで」
綾乃はここでこうも言った。
「それだけで判断する人はあかんで」
「ちゃんと中身を見てですね」
「判断せんと。外見だけで決める人は」
それこそとだ、綾乃はさらに話した。
「まともな人やないやん」
「その通りです」
喜久子は今度はしっかりした口調で言った。
「例えば自分の娘さん達を外見だけで贔屓したり可愛がらない親御さんはです」
「そんな人は文字通りの毒親ですね」
千歳は喜久子に眉を顰めさせて答えた。
「まさに」
「そうですね」
「はい、まともな教育が出来るとは思いません」
はっきりと言い切った。
「その様な人は」
「誰もがそう思うかと」
「そうですよね」
「私もそう思います」
かく言う喜久子自身もだった、そうした親については否定していた。それもかなり強い否定である。
「そうした親御さんはまともな人ではなく」
「まともな教育も出来ないですね」
「そしてその末路はです」
喜久子はさらに話した。
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