夢幻水滸伝
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第百五十六話 戦を前にしての日常その十一
「背や顔立ちやスタイルは気にするなとです」
「先輩はお考えですか」
「はい、ですから私は常にです」
「ご自身を磨かれることをですか」
「考えています」
「そうなんですね」
「ですから背のことも」
実は喜久子は起きた世界では千歳よりも小さい、星の者達の中で一番小さいのではないかとさえ言われている。
「特にです」
「気にしないで」
「生きています」
「そうですか」
「というか声優さんのお話が出ましたが」
喜久子もこの職業の人達の話をした。
「実際にあの業界の人達、女性の方は小柄な方が多いですね」
「そうですね、実際に」
「ですがどの方も立派に務めておられます」
「声優というお仕事を」
「私の好きな女性声優さんは非常に小柄で。私よりは大きいですが」
それでもというのだ。
「一四五ないですが非常に演技派ですし」
「あっ、あの元子役の」
今の話を聞いてだ、千歳も応えた。
「国木田先輩とお名前が同じの」
「はい、あの方も」
「確かにあの人小柄ですね」
「それでも演技派ですね」
「歌もいいですし」
「むしろ小柄さが外見の可愛さにもつながっていて」
「外見でも人気がありますね」
千歳は気付いた様にして言った。
「そういえば」
「ですから」
それでというのだ。
「私はです」
「人は外見やないと」
「外見はもうどうとでもなるもので」
「一番大事なのは中身ですね」
「左様です、中身がどうかで」
それ次第でというのだ。
「人は変わるのです」
「そういうことですね」
「はい、ですから胸のことも」
先程話されていたこのこともというのだ。
「気にしないでいいとです」
「そういうことですね」
「そうです、実際胸も大きい方がいいという人もいれば」
そしてとだ、喜久子はさらに話した。
「小さい方がいいという人もです」
「いますか」
「そうしたものです」
「そういえばモーツァルトの歌劇のドン=ジョヴァンニって冬は太った人、夏は痩せた人が好きって言うてるわ」
綾乃は身体を洗いつつこの歌劇のタイトルロールの話をした、タイトルロールとはその歌劇の題名になっている登場人物のことでドン=ジョヴァンニならドン=ジョヴァンニその人がそれにあたる。
「あの人も好みはそれぞれなんやね」
「彼は只の女好きです」
喜久子はその歌劇の主人公については一言で述べた。
「というかあの人本当にもてるのか」
「疑問やねんね」
「私が観たところ作中では一人もです」
「ゲットしてへんっていうんやね」
「そうではないかと」
「それ実はうちも思っててん」
綾乃は喜久子にこう返した。
「あの人カタログの歌ではめっちゃゲットしたって言うてるけど」
「それが、ですね」
「どう見てもな」
「左様ですね」
「一人もゲットしてへんのちゃうかってな」
「歌劇を観ていると思いますね」
「いいとこまでいっても」
それでもというのだ。
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