夢幻水滸伝
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第百五十四話 同盟軍崩壊その四
「そのうえでな」
「わらわを待っていたけえ」
「そや、そして自分が切ったのはな」
「わしでした」
ここで九尾の狐が出た、芥川に喉元に刃を向けられている碧の前にどろんと出て来た。そうして言うのだった。
「実は」
「あんたも忍術使えるけえ」
「何しろ主が忍者なので」
「成程、忍狐じゃな」
「左様です」
狐は碧に畏まって答えた。
「実は」
「成程のう」
「それでわしは国木田さんに切られた瞬間に」
「移し身使ったんじゃな」
「そうです、そして国木田さんがわしを切る瞬間に」
「姿を消してた僕は自分の後ろに回った」
芥川がまた碧に話す。
「そういうことや」
「成程のう、わらわはしてやられた」
碧は観念している声で述べた。
「負けじゃ、完全に」
「それを認めるんじゃな」
「確かにのう」
こう芥川に答えた。
「今言った通りじゃ」
「ほなな」
「そしてじゃ」
碧はさらに言った。
「婚姻はな」
「なしやな」
「負けたからのう」
それでというのだ。
「ないわ」
「そやな」
「そのことも残念や」
「そういう話は大学を出てな」
そうしてとだ、芥川は碧に話した。彼女が敗北を認めたので刃は外しそうして言うのだった。
「それからや」
「就職してからって言うんじゃ」
「そうしよな」
「仕方ないのう、しかし」
「しかし?」
「わらわは惚れたけえ」
碧は自分の後ろにいる芥川の手を取った、そうして頬を赤らめさせて言った。
「あんたに」
「えっ、ほんまか」
「わらわは嘘は言わんけえ」
「ご主人程正直な方はいませんよ」
ここで兎も芥川に言ってきた。
「確かに上に超が五つは付く肉食系女子ですが」
「それでもかいな」
「本当に手をつないだこともまだの純粋処女で」
それでというのだ。
「嘘もです」
「言わんか」
「はい」
そうだというのだ。
「ですから今のお言葉も」
「冗談やないか」
「そうなんですよ」
「婿殿はあんたいやあなたや」
呼び方も変わっていた。
「もう父上にも母上にも姉上達にも言うけえ」
「言わんでええ、僕かて女の子との経験ないねんぞ」
「ほう、童貞じゃのう」
碧の顔が変わった、頬を赤らめさせた少女のものからにんまりと笑った好色な女のそれに一変した。
「それは楽しみじゃ、婿殿の筆おろしも務めるけえ」
「処女でか」
「処女でも知識は十二分にあるけえ」
その好色な笑みで語る。
「わらわに任せるけえ、最初は婿殿が上じゃぞ」
「自分それは絶対か」
「そうじゃけえ、その後でわらわが上じゃ」
こうも言うのだった。
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