八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百八十七話 夜に入ってその十一
「凄く嫌だしね」
「自分の子供がそんな悪人になったら」
「絶対に親は嫌だよね」
「そうよね」
香織さんもその通りだと頷く。
「それは」
「人を地獄に送っておいて責任を取らないで」
それだけでも外道と言うしかない。
「それでいて他人を嘘を言っても貶めるとか」
「本当に餓鬼の行いよね」
「そんな人達に倫理観があるとは思えないけれど」
そもそもあったらこんなことはしない、良心が咎めて最初から送らないか真実を話して全力で償っている。
「そんな人になったらね」
「自分でも嫌だし」
「そう、それで自分の子供もね」
「なって欲しくないわね」
「人間じゃないから」
最早だ。
「本当に餓鬼だから」
「そうした人って死んだらどうなるかしら」
「地獄に堕ちるか」
言うまでもなく生前の罪によってだ。
「それか餓鬼になるよ」
「本物の餓鬼になのね」
「人間のうちに餓鬼になったら」
そこまでなるとだ。
「もう末路はね」
「餓鬼ね」
「それになるのが普通だよね」
「確かにそうね」
香織さんも僕の言葉を否定しなかった。
「言われてみれば」
「地獄に堕ちてもおかしくないけれど」
「餓鬼道に堕ちることも有り得るわね」
「まあどっちが酷い世界かわからないよ」
地獄道と餓鬼道のどっちかがだ、地獄はそれぞれの罪に応じて様々な責め苦を受ける。そのバリエーションは実に豊富だ。
「地獄道と餓鬼道では」
「仏教の教えだとそうよね」
「もうどっちでもね」
それこそだ。
「物凄く苦しむから」
「そうなるわね」
「餓鬼はいつも餓えていて渇いていて」
食べたい、飲みたい、そう思っていてもだ。
「お腹の中の虫に痛めつけられるんだ」
「物凄く辛いのよね」
「ずっとね」
それこそ生きている限りだ。
「苦しんでね」
「絶対になりたくないものね」
「けれどね」
それでもだ。
「そこまでの悪事はね」
「もう生きながら餓鬼になっているから」
「そうなってもおかしくないよ」
死んだその時はだ。
「餓鬼になっても」
「それで苦しんでも」
「それでそんな人がなった餓鬼を見たら」
なり果てたと言っていいだろうか。
「助けようとはね」
「思わないわね」
「生まれ変わる前が前だから」
それがあまりにも卑しく見下げ果てたものだからだ。
「助けたくないよ」
「あまりにも酷いから」
「悪魔でもね」
こう言われる存在でもだ。
「ここまで酷くないと思うよ」
「キリスト教の悪魔ね」
「キリスト教の悪魔は契約次第だから」
契約の盲点を衝いたり罠を張ったりはするにしてもだ。
「あと悪魔って神に逆らうだけだって」
「そうも言われてるの」
「悪魔とは何ぞやって聞かれて」
それでだ。
「神に逆らう愚か者だってね」
「それって」
僕の今の言葉にだ、香織さんはこう返した。
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