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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百八十七話 夜に入ってその九

「あんな国は駄目だってね」
「皆言ってるのね」
「そうなんだ、特にね」
「特に?」
「総帥さんがお嫌いで」
 それでだ。
「早くああした国はなくなるべきだってね」
「言っておられるの」
「そうなんだ」
 そうしてだ。
「それで帰国事業ってあったけれど」
「北朝鮮に帰るっていう」
「それにも反対しておられたそうだよ」
「実際はどうかわかっておられて」
「それでね」
 そのお考え故にだ。
「八条グループの関係者はね」
「帰国事業に関わせなかったの」
「勿論帰ることもね」
「そうだったのね」
「実際に帰った人はね」
 そうした人達はだ。
「一人も生きて帰っていないから」
「生き地獄よね」
「餓えていて究極の弾圧国家だからね」
「まともに暮らしていけないわね」
「だからね」
 そんな国に帰ったからだ。
「もうね」
「生き地獄だったのね」
「あの国地上の楽園とか言うけれど」
 つまりユートピアということか、この世に果たしてそうしたものが存在出来るかどうか僕はわからない。
「その実はね」
「この世の地獄ね」
「生き地獄だったから」
 それでだ。
「もう生きて帰った人はね」
「いなかったのね」
「一回行って帰られる国じゃないし」
 特殊なルートで観光に行くことは出来てもだ、とはいってもこの国に観光に行く人がどれだけいるだろうか疑問だ。
「それでね」
「本当に誰もなのね」
「生きて帰ってないから」
 それこそ一人もだ。
「総帥さんも先代の方も先々代の方もね」
「どの方もわかっていて」
「それでね」
「帰国事業に関わっていなかったの」
「関わらせることもね」
 そして帰らせることもだ。
「なかったんだ」
「そうだったのね」
「それでよかったと思うよ」
 心から思うことだ。
「人を生き地獄に送るんだから」
「それって詐欺よね」
「罪に問われるかどうかわからないけれど」
 法律としてのそれにはだ。
「けれどね」
「やっぱり責任はあるわよね」
「道義的なね」
 人道上と言ってもいいだろう。
「それがあるよ」
「それは絶対にあるわね」
「うん、けれど関わった人達は」
 北朝鮮への帰国事業、それにだ。
「誰が責任を取ったか」
「ないのね」
「聞いたことがないよ」
 それこそだ。
「一度もね」
「物凄く酷いことよね」
「大きな政党や新聞社が関わっていたよ」
 そこが何処かも僕は知っている、何しろ彼等はおおっぴらに喧伝していて記事も残っているからだ。 
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