夢幻水滸伝
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第百五十三話 勝っていく者達その九
「ご主人はまだ」
「そうじゃ、わらわは処女じゃ」
碧は兎に自分から言った。
「初夜は婿殿とじゃ」
「それからもですよね」
「婿殿にのみ抱かれるけえ」
「そうですから」
「それでもじゃ」
「初夜をですか」
「楽しみにしとるけえ」
涎を垂らさんばかりの顔で言うのだった。
「それでじゃ」
「芥川さんに勝たれますか」
「そのつもりじゃ、そして婿殿に迎えて」
そしてというのだ。
「式を挙げて」
「ご主人は白無垢の花嫁姿ですね」
「婿殿は紋付羽織り袴でのう」
「日本の式ですね」
「その姿で式を挙げた後は」
その涎を垂らさんばかりの顔でさらに言う。
「初夜じゃ」
「そこで、ですか」
「わらわは婿殿と小作りに励むけえのう」
「もう何度もですね」
「最初は婿殿が上で次はわらわが上、四十八手を全て行って」
碧はその四十八手を全て知っている、もうそうしたことは学んで頭の中に入れているのだ。尚叩き粉のではなく自分から進んで頭に入れた。
「子供は九人か、最初はおのこがいいのう」
「跡継ぎの方ですか」
「わらわは分家になるが文家の跡継ぎじゃけえ」
「そういうことですか」
「そうじゃけえ、それでどうじゃ」
ここで芥川に問うた。
「主はわらわの婿殿になるんじゃな」
「僕が負けたらか」
「その場合はのう」
「あのな、そこまで赤裸々に言われるとな」
芥川は一方的に語る碧にどうかという顔で返した。
「誰かて引くわ」
「わらわは嘘は言わんけえ」
「嘘は言わんでも欲望を全開で言われるとや」
「引くかのう」
「どん引きや」
ただ引くのではなくというのだ。
「ほんまにな」
「ついつい言うてしまうわ」
「そことは言わんもんや、しかし僕は自分の婿にはならん」
「それはわらわに勝つからじゃな」
「そや、絶対に勝つ」
ここではきっとした顔になってだ、芥川は言い切った。
「そして軍勢同士の戦に加わる」
「そうするんじゃな」
「絶対にな」
「言うのう、それでこそわらわの婿殿に相応しい」
碧はまた笑った、だが今度の笑みは。
「子作りのしがいがあるけえ」
「堪えんな」
「わらわも負けんけえ」
「あの、一つ聞きますけど」
さしもの九尾の狐も引いて目が点になっている、それで普段のぞんざいな口調ではなく畏まった口調で碧に尋ねた。
「それはこっちの世界の話ですか、それとも貴女とこっちの主人が起きた時の世界のですかどっちですか」
「両方に決まっとるけえ」
碧は狐に鮮やかな広島弁で答えた。
「婿殿の全身毎晩しごうちゃるけえ」
「はあ、しごくですか」
「両方の意味でけえ」
「そういうことらしいで」
狐は今度は芥川に言った。
「ご主人負けたら両方の世界で人生決定や」
「僕も将来は結婚したいけどな」
それでもとだ、芥川はさらに引いている狐に答えた。
「それでもこうした形ではな」
「結婚したないな」
「絶対に嫌や」
「ほなな」
「ああ、勝つで」
「全く、うちのご主人はこうしたところが問題や」
兎も呆れた顔で言う。
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