夢幻水滸伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百五十三話 勝っていく者達その八
「精霊はわしが引き受けるわ」
「そやからご主人は小雪さんに専念するんや」
「そうしたらええ」
「それでいこうな」
「そやね、大蛇さんは精霊達の相手をして」
綾乃は冷静に答えた。
「そしてうちはな」
「そうしたらええわ」
「ここは役割分担や」
「ご主人は精霊には一切向かわんでええ」
「わしが全部相手するわ」
「この八つの頭の力があれば」
大蛇は綾乃にそれぞれの頭で話した。
「あの数の精霊達とも戦える」
「伊達に一軍に匹敵する戦力やないで」
「あれ位の精霊達やったら充分や」
「そやからわしの心配はせんことや」
「わしも強いからな」
「わかってるで、大蛇さんは強い」
実際にとだ、綾乃も答えた。
「それこそかなり高位の神様に匹敵するわ」
「そのわしやさかいや」
「精霊の大軍とも戦える」
「そやからな」
「充分に戦える」
「わしのことは気にせんでええわ」
「そうさせてもらうで、うちが小雪ちゃんを倒したらこの一騎打ちは終わるし」
綾乃は右手を開き己の身体の左にやった、そうして彼女にしては珍しくきっとした顔になってそのうえで言った。
「うちは小雪ちゃんと死力を尽くして闘うで」
「頼むで」
「ご主人やったら勝てる」
「伊達に神星やない」
「しかも神星の中でも特に力が強い」
「そやから問題ない」
「絶対に勝てる」
大蛇は綾乃に告げた、そしてだった。
その八つの頭から息を吐き術を放つ、そうして殺到してくる精霊達の大軍を倒していく。その大蛇の背で。
綾乃は術を繰り出す、まずは神通の術を放つが。
小雪はそれを自分も神通の術を放って相殺した、そのうえで言った。
「綾乃ちゃん、勝つのは私やで」
「そう言うね、やっぱり」
「私も勝たなあかん事情があるさかい」
「同盟を勝たせる」
「愛ちゃんを太平洋と地下世界の盟主にするから」
「愛ちゃんの友達やからやね」
「こっちの世界でも。綾乃ちゃんも友達やけど」
それでもというのだ。
「同じ陣営におるさかい」
「それやったらやね」
「愛ちゃんを支えるもんやから」
それが筋だからだというのだ。
「愛ちゃんを絶対に盟主にするから」
「それでやね」
「そうするわ」
こう言うのだった。
「ここは」
「そうするね、ほなうちは」
「私を倒して」
「太平洋と地下世界統一するわ」
是非にと言うのだった。
「そうするわ」
「そやね、今はお互い譲れんから」
「一緒に戦おうな」
「そうしよな」
二人で話してだ、そしてだった。
お互いに術の応酬に入った、それぞれ渾身の術を放っていく、大蛇と精霊達だけでなく自分達も闘うのだった。
芥川も碧と闘っている、碧はその彼を前にして言った。
「これは戦の後が楽しみじゃ」
「戦の後はどうするんや」
「式をあげるのじゃ」
満面の笑顔での言葉だった。
「そうするのじゃ」
「やっぱりその話やな」
「初夜の時が楽しみじゃけえ」
「しかしご主人」
好色そのものの笑みになっている碧の傍に白兎が出てきた、彼女の神具の一つである因幡の白兎である。
ページ上へ戻る