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夢幻水滸伝

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第百五十二話 さらなる優勢へその七

「その人が原爆を落としたのか」
「違いますし」
「その人はその頃生きていませんし」
「別に何でもない」
 まさにそれで、で終わる話だというのだ。
「そしてその原爆を落としたアメリカとはな」
「今は同盟国ですね」
「僕達が起きた世界では」
「そうだ、永遠に敵味方なぞだ」
 そうしたことはというのだ。
「ない、この世界でもな」
「しかもこの戦で決着がつけば」
「それで敵対関係は終わりますから」
「だからですね」
「ここは」
「そうだ、そもそも捕虜を得ることにもなる」
 吉川はさらに話した。
「敵兵を救助にするとな」
「左様ですね」
「捕虜を得ることは戦果です」
「その戦果を得る為にも」
「彼等を救いますか」
「将来味方になる者を助け捕虜を得る、何よりも」
 ここでだった。
 吉川の言葉はこれまで以上に強いものになった、そしてその言葉で又吉と尾崎に対して語るのであった。
「戦をしていても無駄な殺生はしない」
「助けられるならですね」
「敵味方関係なくですね」
「助けるべきだ」
 こう言うのだった。
「同じ命だからな」
「左様ですね」
「無駄な殺生はよくありません」
「まして我々はこの世界を救うのです」
「世界を救う者が無駄な殺生をしてはなりませんね」
「野獣もモンスターも無駄な殺生はしない」
 人を襲う彼等もというのだ。
「ならだ」
「我々もですね」
「そうしてはならないですね」
「決して」
「だからこそですね」
「常にそうしている」
 海の戦でというのだ、吉川が任されているその場所での戦は。
「そもそも人としてだ」
「そうしたことはしてはならないですね」
「断じて」
「そうだ、ではいいな」
「はい、海の戦が終われば」
「すぐに救助にあたりましょう」
「猛吹雪の中なので困難だが」 
 その救助活動はというのだ。
「しかしだ」
「それでもですね」
「行いますね」
「困難でもやるべきことがある」
 腕を組み強い決意で以て言い切った。
「だからだ」
「この度は」
「必ずですね」
「救う」 
 こう言ってだ、そしてだった。
 吉川は今は海と空で決着をつけるべく攻勢を強めさせた、その目の前で同盟の船が三笠の砲撃で沈むのを見ながら。
 戦は続く、確かに日本軍はまだ完全に優勢ではなく手が一杯という状況であった。しかしそれでもだった。
 構成は続き戦局は有利だった、それを見てだった。
 同盟軍の者達は苦い顔になった、ある師団を率いる将軍は部下達に言った。
「これでだ」
「はい、小泉様達がおられたなら」
「ここまで劣勢ではなかったです」
「星の方々がおられれば」
「遥かにましでしたが」
「そうだったが」
 それでもとだ、将軍は言った。見れば彼等は三十年戦争の時のそれを思わせるチェインメイルや兜、盾に剣や槍で武装している。 
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