夢幻水滸伝
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第百五十話 夜襲その六
「最後の雑炊には刻み葱もですね」
「勿論入れるたい」
美鈴は糸蒟蒻を食べつつ応えた。
「それは忘れてはいかんとよ」
「そうですね、雑炊には」
「お葱が必要たい」
「左様ですね」
「では今はどんどん食べて」
「栄養をつけ」
「身体をあっためるたい」
こう言って実際にだった、美鈴達は雑炊まで食べてそうして身体を温めた。勿論栄養も補給し味を楽しみ英気を養った。
夜になっていた、蓬莱はすっかり暗くなった雲の中を進んでいた。綾乃はその中で中里と芥川に話した。
「いよいよやね」
「戦や」
「その時が来たわ」
「同盟軍はこの雲には来てへん」
綾乃は部屋の窓から外を見た、暗いその中では吹雪が荒れ狂っている。
「うち等のことも」
「そや、動きを把握してへん」
「そやね」
「南洋や中国やアメリカやとな」
芥川はこれまで戦ってきた勢力の話をした。
「雲の中でも斥候送ってや」
「うち等の動き把握してて」
「そしてな」
そのうえでというのだ。
「対応してた」
「そやね」
「しかしな」
それがというのだ。
「それが出来るんは鉄製の船やからや」
「頑丈やから」
「それが出来る、けどな」
「同盟の船は木製やし」
「空船も海の艦艇もな」
「それでやね」
「吹雪がここまで荒れ狂ってる中は入られへん」
それは今自分達がいる雲の中だけではない、海の方もそうでありしかも海では海面までかなり荒れている。
「それでや」
「雲の中とか嵐の中は入られへんで」
「その分な」
「偵察も落ちてるね」
「そや」
それでというのだ。
「こっちはな、この辺りを覆う雲の中を通って」
「それも秘かに高速で」
「それで向かってる、同盟は戦は朝からやと思ってると思うが」
「それをやね」
「今からや」
夜にというのだ。
「仕掛けるんや」
「奇襲をやね」
「そして吹雪やとな」
「尚更やね」
「吉川の話やと雲の外も吹雪や」
今自分達がいる雲の中と同じくというのだ。
「そやからな」
「余計にええんやね」
「この辺りはほんまに気候が荒れやすい」
「蝦夷よりも遥かにやな」
中里も言ってきた。
「そうなりやすいな」
「そや、それでや」
「自分は蝦夷を離れることを提案した」
「そういうことや、この季節蝦夷は結構穏やかな」
その気候はというのだ。
「ここはいつもや」
「こうした感じやな」
「北極と大して変わらん」
「北極言うても上空の浮島群は穏やかやな」
「そや、けれどな」
それでもというのだ。
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