| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

夢幻水滸伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百四十九話 荒天その十二

「それでや」
「今回もな」
「役立ってくれる、是非な」
「あの神具でやな」
「敵の居場所を把握して」
 拙攻を出すだけでなくこちらでもというのだ。
「そうしてや」
「先に進んでくな」
「そうする、そしてな」
「敵を攻めるな」
「こっちの攻めたい時間でな」
「そうするな、ほな今からな」 
 中里は強い顔で述べた。
「雲に入るで」
「ああ、そしてな」
「蓬莱の速度速めるで」
「全速にするな」
「そうするわ」
「さて、雲の中は荒れてるし」
 それでとだ、中里も言った。
「その中に入るから」
「ああ、防寒はな」
「しっかりするな」
「あったかい服着て練炭に火を点けてな」
「錬金術を使ったストーブもあるし」
「全体的に暖めてくか」
「暖房も冷房も必要や」 
 そのどちらもというのだ。
「健康の為にもな」
「そしてしっかり戦う為にもな」
「体温は平常に保っておくべきや」
「それが一番やな」
「質素な生活もええ」
 芥川はこの考え自体は否定しなかった。
「生活の関係で節約とかせなあかん」
「そうした時もあるな」
「それで立場のある人が質素やとな」
「それだけで見る人が見てやな」
「自分もかくあるべしと身を引き締める」
「そうなるからやな」
「明治帝や昭和帝の質素さは立派やった」
 芥川はこうした方々のことを敬意を以て述べた。
「国家元首、しかも皇帝ともなる方が質素やとな」
「アホな贅沢する奴が国民にそう出ん様になるしな」
「それはええ、ただな」
「それでもやな」
「そんな修行みたいな耐久生活はな」
 それはというのだ。
「大事を前にはな」
「せんことやな」
「修行してるんやったらええわ」
 耐久生活の様な質素な暮らしもというのだ。
「お坊さんとかな、しかしな」
「そうでもないとやな」
「そや、まして生活も普通やとな」
「それやとやな」
「特にせんでええことはせんことや」
 そもそもというのだ。
「それでや」
「今の僕等もやな」
「暖房があるんや」
「それを使ってやな」
「身体をあっためて」
 荒天のその中でもというのだ。
「戦に備えるで」
「そうするな」
「部屋の中に入られる奴は入る」
「外で働くモンもやな」
「厚着をしてな」
「そうしてカイロとかも持って」
 中里も言ってきた。
「そうしてやな」
「身体をあっためてや」
 そのうえでというのだ。
「戦うんや」
「そうするな」
「そうすればな」
 それでというのだ。
「勝てるわ」
「そうなるな」
「そや、それでや」
「これからやな」
「僕等も身体あっためるで」
「ほなな」
 中里は芥川の言葉に頷いた、そうしてだった。
 二人は天守閣の窓を閉めた、そうして雪や風がその中に入らない様にして。
 天守閣を後にした、蓬莱は雲の中に入った、それもまた奇襲の一環であり日本はもう決戦に入っていた。


第百四十九話   完


                  2020・2・8 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧