夢幻水滸伝
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第百四十七話 巨獣その七
「賄賂を取ったり汚職をしたり女癖が悪かったり謀略家の政治家はいましたが」
「全部やしな」
「二人共」
「フーシェにしてもな」
「彼自身は清潔でしたが」
それでもだったのだ。
「政治資金にする為にです」
「金蓄えてたな」
「そして実際に使っていました」
「そやったな」
「まあフーシェは女性問題はなかったですが」
そこはタレーランと違っていた。
「虐殺もしましたし」
「酷い奴やったな」
「タレーランは虐殺はしなかったですが」
「女癖がな」
「悪かったです」
「ドラクロワが」
画家の彼がとだ、田山は言った。
「確かタレーランの」
「子供という説がありますね」
「タレーランが人妻と不倫して」
「あの人にはそうしたお話もありまして」
「それでやな」
「ドラクロワはかなり怪しいそうです」
横溝は田山にも話した。
「何でも」
「そやねんな」
「ただ、無理強い等はせず」
「紳士ではあってんな」
「当時の貴族社会では不倫はよくありました」
結婚は家同士のつながりを築く為のもので言うならば仕事であった、そしてフランスの宮廷は伝統的に風俗が乱れていたのだ。
「ですから」
「それでやな」
「はい、タレーランだけのことでなく」
「よくあったお話やな」
「そうでした」
「まあ寵妃もおった国やしな」
島崎は冷めた目で述べた、もう全員ヒラメを食べて今度はかなり大きなレアのステーキを食べている。肉は牛肉だ。
「そこはな」
「当時のフランスの貴族社会ということで」
「碌でもない話でも」
「よくあったお話です」
「そういうことやな」
「はい、ですがやはりタレーランは」
「極悪人やな」
「文字通りの」
まさにというのだ。
「政治的倫理観のない」
「そうした人物やったな」
「あそこまで能力が高く」
そしてというのだ。
「かつ倫理観がない人物はそうそうです」
「おらんな」
「フーシェにしても」
「二人共ナポレオン以上の知力と政治力があった」
小泉は二人をステーキを食べつつ看破した。
「そして私人としてはともかく」
「政治家としてはです」
「とんでもない連中やったな」
「我々ではとでも真似出来ない」
「良心は邪魔か」
かなり真剣にだ、田山はこの言葉を出した。
「それはな」
「違いますね」
「ああ、政でもな」
「必要やと思います」
横溝にしてもだった。
「ほんまに」
「そこはな」
「それがありませんと」
「もうどんな悪事もしてな」
「この世界を救うことも」
自分達の目的を適えることもというのだ。
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