夢幻水滸伝
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第百四十六話 大戦艦その二
「勝っているのではないか」
「それが卿の見方だな」
「そう思う、私が思うに」
ヘッセは自身のグラスのワインを飲んだ、すぐに彼の傍に控えている従者が彼のグラスにワインを注ぐ。ヘッセはその従者に無言で目で礼を告げてからまたワインを飲む。
そのワインを飲んでだ、彼はまた今は敵同士であるが志を同じにする同じ卓に座っている者達に話した。
「今日本は常に背水の陣にある」
「強大な敵と常に戦っているな」
ユゴーはヘッセのその言葉に応えた。
「そしてそうした時だからか」
「彼等は危機感を強く持って戦に挑んでいる」
「そのことは否定出来ないな」
「後がない、少しでも誤れば敗れる」
「そのことを念頭に置いて戦っていてか」
「それでだ」
そのうえでというのだ。
「全力を引き出しているのだ」
「そうなっているか」
「思えば起きた世界でもそうか」
マロリーは難しい顔になって述べた。
「日本は戦は常に強大な相手と対してきた」
「日清、日露、二次大戦とな」
「一次大戦では大して関わっていなかったにしてもな」
「いや、我が国が戦った」
ヘッセはマロリーに微笑んで答えた。
「そしてだ」
「敗れたというのだな」
「我等がな」
「当時貴国は太平洋にさして人は置いていなかったが」
「だが敗れたことは事実だ」
そのことは否定しないというのだ。
「当時のドイツと日本では国力差はかなりだったがな」
「一次大戦ではそのドイツに勝っているか」
「そうだ、そのことも入れるとだ」
「日本は常に強大な相手と戦いか」
「そして勝ってきている国だな」
「強大な相手と戦うからこそ危機感を持って戦う」
セルバンテスもワインを飲みつつ言う、円卓のある部屋は半分屋外であり石の壁にある窓からは緑の野と青い空が見える。
「だからこその強さか」
「そうではないか」
「五十人近い星の者達がいるだけではないか」
「私はそう見た、しかし」
ここでだ、ヘッセはこうも言った。
「違うかも知れない」
「日本軍の強さに別の根拠があるというのか」
「そうかも知れない、兎角今の日本軍の強さは予想以上だ」
ヘッセにしては勝つとは思わなかった、最初の南洋との戦で敗れていると思えるものであったからだ。
だからだ、今剣を重ね合った同志達に語るのだ。
「そこに理由があるのは間違いがないがな」
「精鋭を選んで兵にし確かな訓練と規律、装備、采配、統率、補給、整備、将帥の質に」
ここで言ったのはアルギエーリだった、彼にしてもワインを美味そうに飲んでいる。
「この世界独特の術に星の者の強さが揃ったせいかも知れないな」
「その全てをか」
「その全てを揃えるべきというのが軍の基礎というが」
「実は、だな」
「その全てを揃えることは難しい」
「どうしてもだ」
ユゴーはここでまた言った。
「抜けが出るな」
「どれかにな」
ここでだ、言ったのはヘッセだった。
「どうしてもな」
「今挙げられた要素がな」
「日本軍は小さい、だが」
「全ての要素が揃っている」
「だからあれだけの強さか」
「私はそう考えたが」
ここでだ、アリギエーリはヘッセに話した。
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