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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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一なる魔法

 
前書き
今回のお話で原作部分の完結となります。
2015年からやってきた作品だけに終わらせるのが惜しく、なかなかラストに着手できませんでしたが、ようやく納得できるようなラストになったので投稿させていただきます。
暁のウェンディスキートリオ(ちゃかさん命名)の中で一番最後に動き出して一番最初に完結することに嬉しさと共に寂しさを感じております。某混沌の方も某英雄の方も姿を見せなくなり時間が経っておりますが、きっと戻ってきてくれるだろうと信じて、先にゴールインさせてもらいます。
それでは・・・どうぞ!! 

 
あの戦いから数ヵ月が経ったある日、晴天に恵まれたその場所には、多くのギルドの魔導士たちが集まっています。
皆さんスーツやドレスに身を包みすごい賑わい・・・その視線の先にあるのは、大きな扉。

『それでは皆さん、新郎新婦の登場です!!』

大きな木製の扉が開かれると、そこから出てきたのは普段とは真逆の真っ白なスーツに身を包んだレンさんと、ウエディングドレスで幸せそうな表情のシェリーさんの姿。階段をゆっくりと降りてくる二人に、私たちはあらかじめ手渡されていた花びらを振りかけます。

「キレイだね、シェリーさん」
「そうだね、シリル」

化猫の宿(ケットシェルター)にいた頃から来ている服と同じ色のドレスを着ている私にそう言ったのは、青色のドレスに身を包んでいるシリル。彼のその姿は似合っていることは間違いないのですが、今までの彼のことを知っている私からすると、違和感しかありません。
なぜ彼がこのようなことになっているのかと言うと・・・

















「あぁ、シリルちゃん、ソフィアのことも覚えてないんだね・・・」

戦いが終わった後、王国の医療施設へと運ばれたシリル。ベッドの上でいまだに自分のことすら思い出せない彼に涙ながらにそう言う銀髪の少女。彼女が主な原因となっています。

「あなたは誰・・・なんですか?」

不安そうなシリルに涙を浮かべつつも笑顔を見せるソフィア。まさかこの人、この機会にシリルの恋人にでもなろうとしているのかと思い、そうはさせないと身構えている。

「ソフィアはあなたのマッサージをしていたんだよ」

しかし彼女は、予想の遥か斜め上を狙ってきました。

「あなたがいつでも元気でいられるようにマッサージをしてあげてたのに・・・そんな・・・












男の子に変えられてしまうなんて」
「「「「「ぶっ!!」」」」」

あまりの爆弾発言にその場にいた全員が吹き出してしまいました。

「ちょっとソフィア!!おかしなーーー」
「待て、ウェンディ」

彼女の横暴を止めようとすると、エルザさんにいきなり口を塞がれます。横目から見える彼女の顔は悪者のそれに似ていました。

「ちょっとだけ・・・面白そうだから少しだけ見させてくれ」

気が付くと、私以外の全員がこの状況を楽しんでいる様子。あまりのことに言葉を失い、じっとしていることしかできません。

「男の子になっちゃったの?」
「そう!!さぁ!!ズボンの中を見て!!」

ベッドの中の自身の体を周りからは見えないように覗くシリル。その少年の顔が、先入観のせいか赤くなっていきます。

「何か変なのある!!」
「そう!!・・・フフッ・・・それが原因で記憶がなくなっちゃったの!!」

一瞬笑いを堪えながら迫真の演技を続ける少女。それにより少年の顔はどんどん真っ赤から真っ青へと変化していきます。

「ど・・・どうすればいいの!?」

完全に騙されて泣きつく彼を見て、計画通りといった感じの少女は、私のことを引き寄せ彼の前に突き出します。

「簡単だよ!!女の子の格好をしっかりして、ソフィアのマッサージもしっかり受けて、恋人だったウェンディちゃんと一緒に暮らすの!!」
「えぇ!?」

彼女の突っ込みどころ満載の台詞に声をあげずにはいられません。そしてそんな提示をされたシリルは、不思議そうな顔で私の顔を見ます。

「え・・・女の子同士で恋人なの?」
「「「「「くふっ」」」」」

シリルのもっともな突っ込みに笑いを懸命に堪える皆さん。グラシアンさんだけは爆笑を堪えきれず、外に飛び出していき、声だけが聞こえてくるような状態でしたが。

「時代は変わるの。男同士でも女の子同士でも誰も何も言わないよ。その見本が二人なんだから」

皆さんと同じように笑いを堪えるために体を震わせながら力説ソフィア・・・どこからこんなにウソが出てくるのか、少し気になります。

「そうなんだ!!よろしくね!!ウェンディ!!」
「う・・・うん」

この状況を喜んでいいやら何なのやら・・・複雑な気持ちでしたが・・・他の男性たちから彼を守るため、そして記憶を取り戻すために一緒に暮らし始めました。
















「シリルゥ!!」

そして今現在・・・もう半年も経ったというのに、いまだに彼の記憶は戻らない。

「きゃっ!!」

晴天の中、レンさんとシェリーさんの挙式を行い、しばし雑談の時間に入っている私たちの元へやってきたのは、シリルが女の子の格好をしている原因の少女。

「ソフィア!!」
「う~ん、今日もいいお尻だね」

シリルのお尻を撫で回しながらだらしない顔をしている少女。ソフィアはこれをマッサージとシリルに説明しているせいで、彼は全く反撃をすることができません。

「ほらシリル、力抜いて。じゃないと記憶が戻らないよ」
「は・・・はい・・・」

完全にソフィアのコントロール化に置かれているシリル。助けようと思いましたが、セクハラされてる彼の顔が色っぽくて、見入ってしまいました。

「やめなさい、ソッフィ」
「あう」

そんな彼女にチョップを喰らわせるのは、お姉さんのリュシーさんでした。今回呼ばれたのはフィオーレ中の魔導士の皆さん。青い天馬(ブルーペガサス)の皆さんが企画してくれて、本当に大きな賑わいをみせるものになっているのです。

「お前、やっぱりマーメイドに行くべきだったかもな」
「カグラがいるから大丈夫だと思ったんだけどね・・・」

彼女の肩に手を乗せるカミューニさん。実は彼の所属していた魔女の罪(クリムソルシエール)は、今までの功績が評価され、お姫様だったヒスイさんが女王として即位するにあたり、恩赦が与えられました。
その結果、自由の身となった彼らはそれぞれの道へと進み、カミューニさんは聖十大魔道が統括する評議員へと入りました。もちろん、秘書役にはメルディさんが指名されたそう。
そして彼と同じBIG3のリュシーさんも評議院へとなったのですが・・・

「カグラ!!飲み過ぎだよ!!」
「いや!!全然大丈夫だ!!」

リズリーさんに押さえられている中もお酒を飲み続けるカグラさん。妹のソフィアを彼女に託したのに、いざというときにこんな感じになっているので、自身の選択を悔いているようでした。

ちなみに、彼女たちが所属する人魚の踵(マーメイドヒール)は、週刊ソーサラーの専属モデルをしているんだとか。

「シリル、久しぶりだな」
「ローグさん」

一番扱いが大変なソフィアがいなくなったところで、またあれな人が来てしまいました・・・

「その・・・この間のこと・・・考えてくれたか?」

シリルが女の子だと自身を思い込んでから、男性陣がチャンスと思ったのか、告白する人が多く現れました。もちろん、ローグさんもその一人だったりします。

「いや・・・えぇっと・・・」

困ったように私の顔を見るシリル。助けてほしいみたいだけど、そんなスッパリ断ってくれないなんてと思ってしまい、じっと彼の顔を見ている私。

「ローグ!!何やってんだ!?」
「ごめんごめん、こいつ連れていくから安心して」

そこにスティングさんとグラシアンさんが現れローグさんを連行していきます。彼は諦めきれないのか何か叫んでいましたが、二人が連れていった先にいたミネルバさんに顎を打ち抜かれて気を失っていました。

「すごいね、ミネルバさん」
「そ・・・そうだね」

魔法も強くてギルドでの大食い大会も圧勝するという彼女に思わず顔をひきつらせます。

「師匠!!料理すごくおいしいですよ!!」
「静かに食べなさい、サクラ」
「そうだよ~」

桃色の私たちと似たような形のドレスに身を包んでいるサクラが落ち着きなく色々と食べながらこちらにやってきました。それをシャルルとセシリーが咎めますが、一切気にした様子もないサクラ。
実は彼女、あの戦いが終わってから妖精の尻尾(フェアリーテイル)にやってきたんです。

レオンが入院しててまともに動けないから修行もつけてもらえないし、シリルの記憶を取り戻すことにも役立つかもしれないとのことで、リオンさんたちが送り出してくれたんです。

「ウェンディ!!シリル!!」
「よぉ」
「ヤッホー!!」

そこにさらにシェリアとレオン、ラウルがやってきました、車イスのレオンをシェリアが押しながら。

「まだ車イスなんだね」
「でもよくなってきてはいるんだよ」
「もう少しで立てるようになるよ」

心配で声をかけると、シェリアが代わりに答えます。レオンも足を擦りながら、そんなことを言ってくれました。

「そっちは・・・まだまだみたいだな」
「あはは・・・」

相変わらずズバッと切り込んでくる彼に苦笑いせずにはいられません。でも、彼も言ってから余計なことを言ったといった顔になっていたので、良心はあるみたいです。


















第三者side


「師匠!!向こうの森に何かいましたよ!!」
「ダメだよサクラ!!危ないよ!!」
「あ!!待ってシリル!!」

すぐ近くの森へと駆けていくサクラ。それを追いかけるシリルとウェンディ。シャルルとセシリーもそのあとを追ったのを見て、彼らと仲の良い魔導士たちが集まっていた。

「シリルの記憶は戻りそうにない・・・か?」
「ポーシュシカさんにも見てもらったが、進展なしだ」

彼の記憶を取り戻すためにあらゆる手段を試してきた。しかし、どれも効果はなく、ただ時間だけが虚しく過ぎてしまう。

「ソフィアが余計なことしなければ・・・」
「テヘッ♪」

それでも、今までの日常に近い生活をさせることができていれば支障はなかったはずだろう。だが、一人の少女の悪巧みにより少年の記憶は明らかに違う方向に向かっている気がする。

「いや・・・俺が不甲斐なかったからだよ」

そう言ったのは珍しく正装になっているナツ。彼は最後の最後のことを、今でも気にしている。

「それを言うなら俺たちが、だろ?」
「いや、みんなボロボロだったし・・・」
「それはお前も一緒だ」

グレイとリオンから慰められる形になっているナツ。明るい雰囲気の中、そこだけは暗く、お祝いムードとは程遠いものになっている。

「何暗くなってるんですか?」
「そうだよ、せっかくのレンとシェリーさんの記念日なのに」
「何かあったの?」

そこにやって来たのはタクト、ヒビキ、イヴの三人。主役のレンとシェリーの着付けや本日の料理といった裏方をしていた彼らも手が空いたからか、彼らのもとへとやってきていたのだ。

「料理が口に合わなかった?」
「いや、あいつのことでな」

もうほとんど姿が見えなくなっている少年の方を向いたリオンに、三人は納得したようにうなずく。彼らもシリルのことは気になっていたようで、何とも言えないような顔になっていた。

「シリルちゃんの記憶が戻る可能性はあるのかい?」
「今のところ、そんな可能性があるとはとても思えない」
「原因が魔力の過剰使用による脳の損傷と"思われる"って言われているだけだからな。具体的な理由も明らかになっていない」

原因不明なだけに打つ手がないといったことがわかっただけ。皆自分たちの力のなさを痛感されられ再び落ち込んでいると、高身長の人物があることに気付いた。

「あれ?シリルたちが向かった方向って、たまに魔物が出てくる森じゃなかったですか?」
「「「「「え!?」」」」」

その言葉に全員が一斉にそちらを向く。この会話に混ざっていなかった面々が驚いて振り返るが、誰一人それに気付かない。

「おい・・・今シリルは魔法使えないんだぞ!?」
「ウェンディとサクラだけじゃ魔物は無理だ!!」

結婚式どころではなくなってしまい大慌てで駆け出すナツたち。ただ、事情を知らない者たちは何が起きたのかわからないため、全員の背中が見えなくなってから何事もなかったかのように楽しんでいた。
















シリルside

サクラを追いかけて林の中へと入っていく私たち。何かを見つけたと言っていた彼女はそれを探しているのか、立ち止まって辺りをキョロキョロしていました。

「ダメでしょ、サクラ。帰るよ」
「待ってください!!絶対に何かいたはずなんです!!」

彼女の手を取り引っ張っていこうとしますが、諦めきれないのか微動だにしません。私より年下のはずなのに、背丈が同じくらいだからでしょうか、力では勝てないような気がしてきました。

「シリル!!サクラ!!」
「あんたたち、何やってんのよ!!」
「結婚式の真っ最中だよ~!!」

そこにやってきてくれたのはウェンディとシャルル、セシリー。私が彼女たちを呼び寄せている間も、サクラはキョロキョロしたまま動いてくれません。

「サクラ!!みんなが心配しちゃうから帰るよ!!」
「もう少し!!もう少しだけ・・・」

その時でした。突然地面が揺れると、何やら大きな影が私たちに射していた光を遮ります。その方角を見ると、そこには人とも動物ともわからないような、巨大な何かがいました。

「何あれ!?」
「こっち見てない?」

見たことのない生物に体が震える私たち。その生物はこちらを見ており、笑ったように見えました。

「みんな!!逃げるよ!!」
「了解であります!!」
「うん!!」

これはサクラもヤバイとわかってくれてたみたいで急いでその場から逃げ出す。でも、それよりも早く謎の生き物が攻撃してきました。

「「「「「きゃっ!!」」」」」

炎とも水とも取れるような不思議な魔法を受けて倒れてしまう。動けずにいると、私の体を魔物が掴み、握り潰そうとしてきます。

「シリル!!」
「師匠!!」

記憶がないことで私は魔法が使えません。今、この場で戦闘ができるのはウェンディとサクラ。二人は魔物の体に魔法を当ててくれますが、どれも効いているようには見えません。

「ううっ・・・」

その間にも魔物はどんどんと私を握る手に力を入れていく。体がミシミシといい、骨が砕けそう・・・

「やめてぇ!!」

少女の悲鳴を聞き、魔物はそちらを向くと口から魔法を放ちます。それにより彼女たちは地面に崩れてしまいました。

「ウェンディ!!あうっ」

心配して声を出しても、すぐに自分にも痛みが走ってしまいそれどころではなくなってしまう。

「やめてください!!」
「シリルが~」
「しっかりしなさい!!」

聞こえてくる少女たちの声がどんどん小さくなってくる。意識が途絶えそうになり、体に力が入らない。

「やめて・・・」

涙を流している少女の声。それに答えることができない。

「シリルゥ!!」

泣き叫ぶウェンディの声。それが聞こえた瞬間、私と彼女の手元が光り輝いた。

「何・・・これ・・・」

光っていたのは、手にはめられている指輪。その指輪が光ったと思った瞬間、体に力が漲ってくるのを感じる。
そしてその瞬間に、今まで見たことないようなものが頭の中に流れ込んでくる。



「ウェンディさん、それって・・・」
「絆の指輪・・・」

俺とウェンディの手元にあるのは、妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入った頃にもらった絆の指輪。深い絆で結ばれている二人が思う時、勇敢な戦士に力を与えてくれるというもの。

「水竜の咆哮!!」

口からブレスを放ち、魔物へとぶつける。それにより敵の手から力が抜けて、地面へと着地する。

「シリル!!あんた魔法使えるようになったの!?」
「え?俺は普通に魔法使えるけど・・・」

シャルルの言葉に首を傾げる。というか、なんでみんなそんなに着飾っているのだろうか?というかサクラに妖精の尻尾(フェアリーテイル)の紋章が見えるんだけど・・・

「え・・・」

そこまで観察してから、あることに気付いた。それは俺が着ているものが明らかにおかしいということだ。

「ちょっと!?何これ!?」

思わず体を隠すように身を小さくする。なんで俺も彼女たちみたいにドレスで着飾ってるんだ!?

「師匠!!もしかして・・・」
「記憶が戻ったの!?」

サクラとウェンディのその言葉で俺は気が付いてしまった。この服装の原因は、おそらく彼女たちにあるのだろうと。

「ウェンディ!!」
「違うシリル!!私は悪くないの!!」

首をブンブン振っているウェンディ。オシャレなドレスと相まって、より可愛らしく見えるその仕草に萌えてしまい、怒りがどこかへ行ってしまった。

「「「「「シリル!!」」」」」

そこにさらにダッシュしてくるナツさんを始めとした面々。皆さんまるでお祝い事でもあったかのような服装だが、それよりも自分の恥ずかしい格好を見られていることに顔を赤くする。

「わぁ!?見ないでください!!」
「シリルお前・・・」
「記憶が戻ったのか!?」
「えぇ!?」

恥ずかしがっている俺を見て、記憶を取り戻したことを察したグレイさんとナツさんは嬉しそうにしている。その二人の後ろでは、銀髪の少女が崩れ落ちていた。

「ソフィアのハーレム計画が・・・」
「お前が原因か!?」

絶望にうちひしがれている彼女を見て思わず怒声をあげる。すると、後ろから大きな音が聞こえてきた。

「危ない!!シリル!!」
「!!」

その声で今の状況を思い出した俺はすぐに横へと飛び魔物の攻撃を回避する。しかし、最初のダメージは確実に効いているようで、魔物の目の焦点が合っていない。

「よくわからないけど・・・復帰戦みたいだし・・・」

ティオスを倒した直後からの記憶がないが、それよりも遥かに時間は経ってしまっているみたいだ。なら、久しぶりの戦いなんだろうし、派手に行かせてもらう!!

「一撃で倒す!!」

最後の戦いの感覚で魔力を高めると、今までよりも力が漲ってくるのを感じる。それは、ドラゴンフォースが解放されたからだった。

「自分の意志で・・・」
「相変わらずのセンスだな」

ヒビキさんとリオンさんがそれを見て感心したように息を付く。微かに耳に届いたそれに意識を向けることもなく、俺は一直線にジャンプした。

「水竜の鉄拳!!」

水と風を纏った拳を叩き込む。すると、魔物の額から鮮血が飛び散り、崩れ落ちた。

「一撃か」
「すげぇ動きよくなってるな!!」

今までよりも体がよく動き、魔力も満ちていたことにより大きな魔物を倒すことができた。これには俺も驚いたけど・・・

「シリル!!」

そんなことを考えている暇もなく、ウェンディが抱きついてくる。

「よかった・・・本当によかった・・・」

何も覚えてないけど、彼女がこれだけ涙するということは、相当心配をかけてしまったのかもしれない。そう思い、彼女をぎゅっと、今までにないくらい強く抱き締めた。

「ごめんね・・・心配かけちゃって・・・」
「本当だよ・・・もう・・・治らないのかと思ってた・・・」

泣き止まない彼女を見て俺はただ静かに抱き締める。それを見ていた皆さんは、スッとその場から背を向ける。

「シリルの記憶も戻ったし、パーティに戻ろうぜ!!」
「おう!!うまいもんいっぱい食わねぇとな!!」
「ソフィアのハーレムが・・・」
「まだ言ってるよ」

大喜びの面々の中、泣きながらその場を離れていくソフィアが妙に目についた。彼女たちの背中が見えなくなってからしばらくすると、ウェンディも落ち着いたみたいで顔を上げます。

「私たちも戻ろっか!!」
「そうだね!!」

手を取り合い、小さな手を握り締めながら歩いていく俺たち。そんな中で、気になったことを一つ尋ねる。

「そういえば、今日って何の日なの?」
「レンさんとシェリーさんの結婚式だよ!!」
「えぇ!?」

いつの間にそこまで進んだのかと思ったけど、よく考えたら蛇姫の鱗(ラミアスケイル)にいた時に、シェリーさんはいつの間にかいなくなってしまってたし、いつ挙式をしててもおかしくない状況だったのかもしれない。

そんなことを思いながら、会場に戻ると、二人を中心に盛り上がっており、主役たちは晴れやかな笑顔を見せている。

「私たちもいつかああなるんだね」
「へ?」

それを聞いた俺は一瞬困惑し、硬直する。次第に言葉の意味をわかってくると、顔が赤くなってくるが、目の前の少女はもっと赤くなってきていた。それはもう熟したトマトのように。

「うん、もちろん!!」

自分よりも恥ずかしがっている相手を見て逆に落ち着いてしまった。もっと恥ずかしがっている彼女を見たいと思ってしまい、引き寄せるように抱き締める。

「ありがと」

すると、予想を裏切り体をより寄せてくる少女。これにはお互いに恥ずかしくなってきたのか、もう耳まで真っ赤だ。

「百合ってんなよ、レズップル」
「百合ってねぇよ!!」

レオンがいたずらっぽい顔でそんなことを言うので思わず突っ込む。期待通りの突っ込みに気を良くしていた彼だったが、シェリアから頭を叩かれており反省させられているのを見て、思わず笑っていた。

「もうウェンディのこと、忘れたりしないから」
「うん。約束」

体を寄せ合い幸せな二人を見ながら、自分たちの今も幸せに感じる。
一なる魔法(あい)に助けられた俺たちは、これからもそれを守り続け、育み続けたい。そのためには彼女を絶対に離さないと心に決めた俺は、強く彼女の手を握り締めた。


 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
最後の結末がうまく纏まらず、時間がかかってしまいました。決して完璧とは言えませんが、こちらでFAIRYTALEの原作部分(最後の方は崩壊)を完結させていただきます。
皆さん今までこんな作品にお付き合いいただきありがとうございました。まだクリスマスやHERO'Sなどをやっていく予定ではありますが、一度ここで幕引きとさせていただきます。
約5年間、お世話になりました。もしオリジナルでお会いできれば幸いと思います。それでは・・・アディオス(;_;)/~~~ 
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