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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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人と希望 後編

 
前書き
前回の後書きのせいでラスボス天海説が浮上しましたが、今回の話ほとんどバトルしませんでした、ごぺんなさい。

尻流「そ・・・そういうこともあるよね、うん・・・」
変態「尻流が突っ込みを入れない!?」
冷温「ビビってるだね、これは」
変態「ビビってる尻流・・・略して美尻(ビジリ)!!」
尻流「変な略し方するな!!」
変態「美尻が怒った!!逃げろ!!」ε=ε=(ノ≧∇≦)ノ
尻流「待て変態!!」。。。。゛(ノ‥)ノ
冷温「最近このパターン多いな。今回は特に言うことありません。それでは・・・どうぞ」

 

 
シリルとティオス、二人の決着が着く少し前・・・

「雷炎竜の咆哮!!」

イグニールの力、ラクサスの力、そしてこの場にいる仲間たちすべての力を集約させたナツ。彼はブレスで目の前の敵へと先制攻撃を放つ。

「なかなかのものだ」

雷と炎・・・二つの属性が混ざり合ったそれも天海は払ってみせる。彼はそのまま突進すると、ナツも呼応するように駆け出した。

「雷炎竜の鉄拳!!」

ぶつかり合う両者の拳。その勢いは凄まじく、大地を大きく揺らした。

「いいぞ、もっと来い」
「ナメたこと・・・」

自らと互角の力をみせる敵に笑みを浮かべる天海。それを見たナツは怒りに満ちた表情でもう片方の拳に炎と雷を纏わせる。

「言ってんじゃねぇぞ!!」

振り抜かれた拳を受け止めようとした。しかし、ナツのそれはあまりにも速く、天海の頬に突き刺さる。

「まだ上があるとは」

それでもこの男の心は折れることはない。まともに強大な魔力を秘めた拳を受けたにも関わらず、怯むこともよろけることもせず、すぐに反撃に打って出る。

「ぐあっ!!」

素早く体重を移動させ脇腹目掛けて蹴りを放つ。ナツはその一撃に思わず吐き出したくなる衝動に刈られるが・・・

「負けてたまるかぁ!!」

大声を張り上げその衝動すら忘れさせようとする。目の前にいるのは兄の仇であり、大切な仲間たちとの出会いの場を作ってくれた初代マスターも突き刺した非情の男。彼を倒さなければ、心は晴れることはない。

「はぁぁぁぁ!!」

それに、仲間たちが力を貸してくれた。(イグニール)(ラクサス)の力も大きく使いながら、接近戦で敵を迎え撃つ。対する天海も、自らもを燃やし尽くしてしまうのではないかというほどの炎に身を包む青年に、真っ正面から向き合う。

「竜魔の咆哮!!」

この戦いに喜びを感じていた天海。そんな彼の視界の角に、信じられないものが見えていた。

「ティオス?」

過去の自分(シリル)に押されている最大のライバル(ティオス)の姿が目に入ってしまった。それに驚いた彼は思わずそちらに視線を向ける。

「よそ見かよ!!」
「!!」

敵から目を切ったことにより炎が頬へと突き刺さる。それで再びそちらに意識を向けるが、雑念が脳裏に浮かんでいた。

(ティオスが負ける?バカな・・・そんなことはあり得ない!!)

肘打ち、膝蹴り、回し蹴り、あらゆる攻撃を繰り出す天海。それは確実にナツを捉えていく。それなのに・・・

「どうした?全然効かねぇぞ」

彼は傷だらけになりながらも、全然ダメージを受けているようには見えなかった。

(注意力が散漫になっているせいで急所を突けていなかったか。しかし・・・)

そうわかっていても抗えないのが人間の性。ましてや彼は天海にとっての最後の希望(ライバル)。そんな彼が負けるようなことがあれば・・・

「滅竜奥義改!!水中天嵐舞!!」
「滅神奥義!!絶対零度!!」

彼は、戦う意味を見出だせなくなることだろう。

「そんな・・・ことか・・・」

正面からぶつかり合った二人の拳。それに打ち勝ったのは小さな少年のそれだった。

あらぬ方向へと曲がり消し飛ばされるティオスの左腕。それでも、両腕を失っても彼はなおも戦いを続ける。

「そうだ・・・勝て・・・勝ってくれ・・・」

自らも交戦しているのに、そちらに意識がほとんど向いていない。それだけ彼の存在は重要であり、彼にとって必要な人物だった。

それなのに、ティオスは戦いに破れてしまった。

「うおおおお!!」

ティオスが破れた直後、彼の中にはもう夢も希望も残されてはいなかった。胸の中に残されているのは、絶望でしかない。

(この戦いも、意味がなくなってしまった)

仲間の勝利を肌で感じ取ったのだろう、桜髪の青年の勢いは次第に増していく。無理もない、もし立場が逆だったら、自分もそうなっていたのだろうから。

「くだらんな・・・」

自分がもっとも求めた最強への道。それが閉ざされてしまった今、もう成すことはない。

「フンッ」
「がはっ!?」

意気消沈していたはずの天海。そんな彼の手から放たれた拳は今までのものよりも遥かに早かった。

「ナツと言ったな、最後にお前のような強者と戦えて、楽しかった」

仲間たちの魔力も宿しパワーアップしたはずのナツ。その彼が反応を許されることもなく次から次へと攻撃を受けていく。
正拳突き、上段蹴り、肘打ち、左フック・・・シェリアの治癒魔法により傷を癒したはずなのに、その時よりも傷だらけにされた青年は、意識を失いつつあった。

「がっ・・・」

そして最後のアッパーパンチ、それを受け宙を舞い、地面へと叩き付けられたドラゴンの子は、意識を完全に失った。

「ティオス・・・」

戦いを終えた天海。彼の瞳に映る友は、静かに眠っていた。
















ウェンディside

ティオスを倒したシリル。そのことに大喜びしていた私たちでしたが、すぐにその感情は消し飛ばされました。

「そんな・・・」
「ウソ・・・だろ?」

エルザさんとグレイさんの声・・・私たちの視線の先にいるのは白目を向いて倒れているナツさんと、こちらを見ている天海の姿。

「こんなことって・・・」
「あぁ・・・」

ティオスを倒したことにより、勝利を噛み締めていた私たちにとって、目の前に広がっている光景は絶望に他なりません。

「シリル!!ナツさんが・・・」

思わず最後の頼みの綱に泣きつきそうになりましたが、彼の姿を見てその言葉を飲み込みます。
なぜなら彼の体からは、もうほとんど魔力を感じることができなかったのですから。

「負けたのか・・・俺たちは・・・」
「もう・・・何も手だては残されていないの・・・?」

二人に魔力を与えたことにより立ち上がることもできない私たち。目の前に広がる光景に皆さん涙を流し、うずくまる人たちまで現れます。

「終わりだ」

冷静な表情でそう言った天海は、ゆっくりとした足取りで先ほどまで戦いを繰り広げていた少年の元へと歩き出します。

「シリル!!」

きっと彼が殺されてしまう。私の一番大切な人・・・彼を失いたくない・・・そう思い駆け出そうとしましたが・・・

「あう」

体には力が入らず、立ち上がることもできません。その間にも、東洋の衣服に身を包んだ彼は歩を進めていきます。

「もう終わりなんだね・・・」
「うん。終わりだよ」

私たちと同じように絶望に涙するシェリア。その言葉に同調したのは、彼女の幼馴染み。でも、彼の表情は私のものとは違い、晴れやかなものに見えました。

「長かった戦いが、やっと終わったんだ」

座り込み動くこともできないシリルの前までやってきた天海。彼は少年を見下ろすと・・・

「ふぅ」

深いため息を漏らし、背を向けました。

「終わりだな、ティオス」

次に視線を向けたのは両腕を失い、地面に倒れたまま微動だにしない仲間。彼はその体を抱えると、肩に担ぎ上げ、そして・・・

「お前たちの勝ちだ」

私たちに一瞥もすることなく、歩き去ってしまいました。

「え・・・」
「どういうこと?」

急に振り向いて攻撃をしてくるわけでもなく、そのまま姿が見えなくなってしまった二人。何が起きているのかわからない私たちは、ただ呆然としていることしかできませんでした。

「やっぱりな」

その姿を見て、一言そう呟いたのは、彼と一番最初に交戦した少年でした。

「どういうことだ?レオン」
「簡単だよ。天海はもう・・・戦う意味がなくなってしまった。それだけなんだ」

彼の言葉にますます困惑する私たち。彼は自分の考えをありのまま説明してくれました。

















第三者side

「やっぱり、こうなったわね」

地上の様子を見ていたヨザイネが戦いの結末を見てそう口を開く。これを聞いたオーガストたちは、そちらへ視線を向ける。

「どういうことだ?ヨザイネ」
「なんで天海は戦うことをやめたの?」

オーガストとヴァッサボーネが問いかける。その答えは他の面々も気になっているらしく、全員が彼女の顔を見る。

「天海は戦う意味がなくなってしまったから、行動に移せなくなったのよ」
「戦う意味?」
「うん。天海は強者と戦い、強くなることが小さい頃からの目標であり、人生の全てだった」

エドラスにいた頃から武道に勤しみ、実の父さえもその手に掛けた。しかし、それゆえに彼は何度も行き止まりに達した。

エドラスでもアースランドでも、名高き強者たちと幾度となく戦いを繰り広げてきた。しかし、彼とまともに戦える者などほとんどおらず、全てに勝利してきた。
頂点に立ち続けてきた彼は自身に渡り合える存在に巡り合うことができなくなる度に、戦うことをやめ、同時に人生に幕を下ろそうと思っていた。

そんな時に現れた最後の希望(そんざい)がティオスだった。初めて見た時から周りとは違う雰囲気を纏い、最強として君臨し続ける天海が唯一勝てなかった相手。強者との戦いを好み、強くなり続けることが目標だった天海にとってこれ以上の存在はいない。

ティオスの目的に協力しながら、さらなる強者たちと戦い力を付ける・・・そして全てを達成した暁には、最後の戦いとしてティオスに挑み、勝利する。そのために生き続け、戦い続けてきた。だが、たった今その目標は命を落とし、挑むことが叶わなくなってしまったのである。そうなってしまっては、彼は再び抜け殻になってしまうしかない。

「人は希望がなければ動けない。人類の全てに終止符を打つことに希望を見出だし動き出したティオス・・・そして彼との戦いに夢こがれた天海・・・二人を動かし続けたのはそれぞれの希望。でも、それを断たれてしまったら人は行動することもできなくなる。それだけ脆いものなのよ、人間は」

ドラゴンたちを殺し、息子と最愛の人物の仇を取ることに全てを賭けた彼女だからこそ、二人の気持ちはよくわかる。彼女もまた、息子が生きていたことがわかった途端に戦意を喪失してしまったことを、いまだに思い出せる。

「もう彼が私たちの前に現れることはないわ。ティオスと共に、深い眠りにつくのかな?」

最大の脅威が取り除かれたことに安堵の表情を浮かべる。しかし、すぐにあることが気になり、彼女の顔が曇る。

(天海を倒すならティオスが味方になるしかないと思ってた。でも、あなたは結局目覚めることができなかったわね)

レオンとシリル・・・二人が融合したことにより生み出された存在(ティオス)。心優しい二人のはずなのに、彼は暗黒面から一度も戻ってくることがなかったことが気がかりだった。

(あの危険な思想はシリルのもの?それともレオン?二人が融合してしまったから起きたこと?何もわからない・・・でも・・・もし二人が今後あんな風になってしまったら、誰も止めることができないわ)

最悪の事態を回避したはずなのに、新たな不安が募る。そのせいで勝利の味を味わえずにいたヨザイネの頭に、アンクセラムが手を乗せる。

「はいはい、じゃあ戦争も終わったから、あなたたちのいくべき場所に行きなさい」
「いくべき場所・・・」

ヨザイネがそちらの方へ視線を向ける。ただ、それは天使の時からずっとお世話になってきたこの肉体とのお別れを意味していた。

「とうとうこの体ともお別れなんだね」
「次に生まれてきても、一緒にいられるといいですね」

あの世へ行くことに躊躇いのあるヨザイネとは真逆の位置にいるゼレフとメイビス。二人は立ち上がると、向かわなければならない道へと目を向ける。

「行こうか、オーガスト」
「・・・はい、お父さん」

前向きな二人とは異なり、足取りの重いオーガスト。それもそのはず、彼はようやく両親に存在を気付いてもらえたのに、それを放棄し次の生命体へとならねばならないことに、気が進まないのだ。

「行こう、ヨザイネ」
「・・・えぇ」

そしてこの少女も同じように動きが悪い。ようやく再会できた息子の姿をもうこの目で見ることができない。それが何よりも辛く、悲しい。

「あ、大事なことを忘れてたわ」

全員があの世への扉へ向かっている最中、黒髪の美女が突然立ち上がり全員の方を向く。すると彼女は人差し指を立て、緑色のビームのようなものを放つ。

「「うわあああああ!!」」

それは見事に、オーガストとヴァッサボーネに命中し、魔力の中に閉じ込められた。

「アンクセラム様!?」
「一体何を!?」

いきなりの攻撃にヨザイネとメイビスが彼女の方を振り返る。そのビームを受けた二人は次第に小さくなっていくと・・・

「え・・・」
「これは・・・」

そして光から解放された二人の姿に皆驚愕した。なぜなら、ヴァッサボーネはかつての人間の姿に、オーガストは子供の頃の姿に戻っていたのだ。

「あなたたちが戦いばかりするせいで死者の輪廻転生が全く追い付かないのよ。しばらく時間をあげるから、楽しんでおくことね」

多くの不幸が重なり失われた家族の時間。それを与えてくれた神に深くお辞儀する少女たち。彼女たちは手を繋ぎ扉の向こうへと姿を消した。

「やっと戦いは終わったわね・・・でも・・・」

かつての使い魔たちを送り出し、一人になった女性は荒れ果てた地上の様子を見ながら、深い深いタメ息を漏らし、頭を抱える。

「これはもう・・・消されるかもしれないわね、この世界は」

ヨザイネが自らの生命を犠牲に救われた命もあるが、それでも失われた命も多くある。あまりにもひどく荒れ果てている世界を見て、彼女はその後のことを考えていたが・・・

「ま、いっか。それよりも・・・」

すぐに考えるのをやめ、後ろを振り返る。そこにいる黒装束の青年を見て、ニヤリと笑みを浮かべた。

「あなたはどうしようかしらね?ティオス」

世界を混乱の渦に巻き込んだ存在。彼を見据えたアンクセラムの表情は、悪者のそれによく似ていた。

















ウェンディside

「それってつまり・・・」

レオンの言葉を聞いて皆さんの顔に笑顔が見える。彼も静かに笑ってみせたことで、今度こそ全員が喜びを爆発させました。

「やったぁ!!本当に終わったんだ!!」
「俺たちの勝ちだぁ!!」

長かった戦いに終止符が打たれたことにより、今までの疲れも吹き飛んでいる様子。私はあまりのことに安心して腰が抜けて動けません。

「「「「「あ!!」」」」」

そんな中、数人の人が何かに気付いてそちらを向きます。そこにいるのは、アルバレス帝国の皆さん。

「俺たちはもう戦うつもりはねぇよ」
「えぇ、これにて失礼させていただきます」

先ほどまではティオスと天海を倒すために共闘していたアルバレスの皆さんも、さすがにこれ以上いざこざを起こすつもりはない様子。アジィールさんを先頭に、全員がその場からいなくなっていきます。

「お母さん!!」
「エルザ、私とあなたじゃ住む世界が違うのよ」

彼らに同調するようにその場を後にしようとしたアイリーンさん。彼女はエルザさんに呼ばれても、こちらを振り向くことはしませんでした。

「幸せになりなさい。私はいつでも見守っているわ」
「・・・はい」

母からのお別れの言葉に静かにうなずく緋色の女性。アルバレス帝国の皆さんは、そのまま歩き去ろうとしました。

「ゴットセレナ。お主はこっちじゃ」

そのうちの一人、聖十最強と謡われるゴッドセレナさん。彼にそう声をかけたのはウォーロッドさんを始めとしたイシュガルの四天王の皆さん。

「お姉ちゃんもこっちだよね?」
「えっと・・・その・・・」

ソフィアに腕を引かれて困ったような表情を見せるリュシーさん。ですが、その二人を見たアジィールさんは小さくうなずいてみせます。それは、彼女たちがそちらに進むことを後押しするようで、二人もそれを受け、ゴッドセレナさんは四天王の皆さんの元に歩を進め、リュシーさんはソフィアをぎゅっと抱き締めました。

「ナツ!!」

ようやく体が動けるようになったところで、ルーシィさんがナツさんの元へと駆けていきます。その声で目覚めたのか、彼はゆっくりと目を開けました。

「あいつは?」
「どこかに行ったわ。あたしたち、勝ったのよ」

まだ起き上がることもできないナツさんの手を取り、涙ながらに口を開くルーシィさん。それを聞いたナツさんは、安心した表情と共に・・・

「くそぉ!!」

大きな声を張り上げました。

「ナツ?」
「どうしたの?」
「あいつら・・・結局一度も本気を出さなかった・・・」

突然のことにすぐ近くまできたハッピーと問いかけるルーシィさんでしたが、彼からのそんな言葉に思わず顔を見合わせます。

「天海はよくわかんねぇが、ティオスは全部の魔法を使ってたじゃねぇか」
「あれで本気じゃなかったのか?」

グレイさんとガジルさんのもっともな言葉。それに対し、ナツさんはルーシィさんの手を借りながら起き上がり、答えます。

「天海はまだ余裕があるように見えた。息も上がることもなかったし・・・それにティオスは・・・」
「神の領域を使っていなかった・・・ですか?」

ジュビアさんの問いかけに小さくうなずくナツさん。確かにティオスはレオンを主としている体。それなら彼の最終奥義である神の領域を使えば、私たちを倒すこともできたはず・・・

「使えるわけがないさ、あんな諸刃の剣を」

それに答えたのは、リオンさんに担がれているレオン。その言葉に、皆さん顔を向けます。

「天海もティオスも、二人での戦いが最後であり最重要バトルと認識していた。それを控えている状況で、すべての力を出すことなどできるはずがない」

まぁ、どちらかが力尽きていればもう片方はその回復を待つことをするだろうけどな。と続けるレオン。それでも納得いかない表情を浮かべている彼の頭に、エルザさんが手を乗せます。 

「なんでもいいじゃないか。みんなを守ることができたんだから」
「・・・だな」

まだ納得しきれていないようでしたが、皆さんを守れたことが何よりもよかったと心から思っているのでしょう、ナツさんが彼女に笑顔で答えます。

「シリル!!」

そして私は、この絶望に終止符を打ってくれた少年の元へと駆けていき、後ろからぎゅっと、いまだに座り込んでいる彼を抱き締めます。

「ありがとね、シリル」

涙ながらに、彼の無事に感謝しながらそう声をかけます。何もかもが終わったとこの時私は思っていました。
でも、そうじゃありませんでした。

「・・・」
「シリル?」

座り込んだまま何も返事をしない少年。不思議に思い彼をじっと見ていると、振り向いた彼は生気を失ったような目で、こちらを見つめ返します。

「君は・・・誰?」
「え・・・」

小さな体で戦い続けた少年(シリル)。その反動はあまりにも大きく、その場にいた全員が困惑するしかありませんでした。


 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
原作部分(もうほぼ原型ない)もあと1話です。
果たしてシリルはどうなってしまったのか、彼は記憶を取り戻すことができるのか、次回。 
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