八条学園騒動記
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第五百七十六話 準備万端整ってその十
「黒人への差別だとな」
「実際に言われてなのね」
「批判されていた時代もあった」
「やっぱりあったの」
「当時のアメリカ南部では黒人奴隷はいたが」
「その描写が問題だったのね」
「そう批判されてな」
このことは歴史上何度かあったことだ。
「出版が止められていた時代もあった」
「実際にあったのね」
「そうだった」
「あれ恋愛小説だろ」
フックは眉を顰めさせて言った。
「だからな」
「恋愛を読ばいいな」
「そうだと思うけれどな」
「だが当時のアメリカ社会も描いているからな」
「南部のかよ」
「だからだ」
それ故にというのだ。
「そうしたこともだ」
「問題になったんだな」
「今では黒人がヒロインをすることもあるが」
演じる人がだ。
「それで白人の人が奴隷役ということもな」
「連合じゃあるよな」
「しかしだ」
「黒人の書き方が問題でか」
「作者は問題と思っていたなっただろうが」
作者にしては普通の感覚だったというのだ。
「後でだ」
「問題視されたんだな」
「ヴェニスの商人と同じだな」
「本当にそうだな」
「後になってだ」
「後の時代の視点で問題になるんだな」
「そうだ」
まさにというのだ。
「それでだ」
「問題になってか」
「言われてな」
そのうえでというのだ。
「批判されるんだな」
「そうなるのって」
「嫌だよな」
「そうよね」
「ウィンザーの陽気な女房達だってな」
自分達が演じるこの作品もというのだ。
「若しかしたらな」
「後々何か言われるかもっていうのね」
「当時はよくても後で駄目ってあるからな」
フックは言った。
「そう考えたらだろ」
「批判される可能性もあるのね」
「そうかもな」
「そう考えるとあれね」
アンはフックの話をここまで聞いてこう言った。
「世の中何で批判されるかわからないわね」
「後でな」
「そうよね」
「そうだよな、まあそれでもな」
「それでも?」
「俺達は俺達のやることやっていくしかないか」
フックは一つの結論を出した。
「だから今はチェックするか」
「三人で全体を」
「そうするか」
「そうね、後々どう言われるかわからなくても」
「今しないといけないことってあるな」
「ええ、じゃあね」
「ちゃんとな」
それこそとだ、フックは実際に見回りながらアンに話した。
「全部チェックして」
「そうしてよね」
「事故がない様にしような」
「そういうことね」
「ああ、じっくりとな」
「それは絶対のことだ」
ギルバートも言って来た。
「やはりだ」
「チェックはしないとな」
「しっかりとすれば問題があってもだ」
例えそうなってもというのだ。
「なおせる」
「それで本番前に事前にちゃんと出来るな」
「だからだ」
「今はチェックしないとな」
「そうだ、それをしていこう」
「それじゃあな」
フックはギルバートの言葉に微笑んで頷いた、そうしてだった。
三人でチェックを続けた、その結果何も問題のある場所はなくそれで三人はそのことをよしとしてそうして休んだ。
準備万端整って 完
2020・6・16
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