八条学園騒動記
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第五百七十六話 準備万端整ってその九
「ナチスのことだって」
「普通に覚えてるんだな」
「そうよ、アンネ=フランクのことも」
「普通にか」
「覚えているのよ」
こうフックに話した。
「イスラエル人は」
「恨みじゃないよな」
「教訓よ」
それだというのだ。
「これは」
「そっちか」
「そう、二度とね」
「国を失って放浪しない為か」
「それで迫害されない為にね」
「教訓としてか」
「学んでいるのよ」
そうしているというのだ。
「学校の授業でもね」
「小学生からだな」
「そうしているわ」
「小学生の時からアンネ=フランクか」
ギルバートはここで言った。
「かなりな」
「早いっていうのね」
「あれはきつい」
ギルバートは苦い顔でアンに答えた。
「正直言ってな」
「アンネ=フランクずっと隠れていてね」
「最後はアウシュヴィッツだったな」
「ガス室に行くのよね」
「そう思うとな」
「私は別にそこまで思わないけれどね」
アンにしてはだ。
「別に」
「そうなのか」
「ええ、そんな過激なことは教えないし」
「ガス室だけでもかなりだろ」
フックが突っ込みを入れった。
「あれはきついぜ」
「それ言ったら連合の処刑なんて」
「それこそか」
「徹底的にやってるじゃない」
連合では凶悪犯罪犯に対しては容赦しない、それこそ極刑の中の極刑と言うべき方法で処刑していく。
「首刎ねるどころじゃないでしょ」
「首切るなら鋸引きだからな」
「その鋸引きが一番甘い方でしょ」
連合の処刑の中ではだ。
「すっぱり首切るなんてしないわね」
「絶対にな」
「そういうの見てるし」
連合では子供の頃からだ、死刑は常に公開処刑だからだ。
「ガス室の話もね」
「別にいいか」
「実際の場面は話さないし」
「だからいいか」
「ええ、そういうことを教えて」
「それで教訓にしているんだな」
「イスラエルではね」
過去の弾圧や迫害の歴史を学んでというのだ。
「もう二度とよ」
「国を失わないか」
「それで放浪しないのよ」
「そうしているか」
「ええ、それでヴェニスの商人は」
この作品の話に戻った。
「今では創作ってことでね」
「終わってるんだな」
「劇でシャイロックが極端に酷い描写っていうか差別煽ってるっていうのなら批判されるけれど」
それは駄目だというのだ。
「けれどね」
「そうでもないと批判しないか」
「そうよ、そんなこと言ったら」
アンはフックにこうも言った。
「風と共に去りぬなんてね」
「あのレッドバトラ―さんのか」
「あの作品も駄目でしょ」
「実際に駄目だった時代もある」
風と共に去りぬについてギルバートは話した。
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