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八条学園騒動記

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第五百七十六話 準備万端整ってその八

「その人モデルにした登場人物出して」
「こき下ろしてるんだな」
「そうだったのよ」
「お世辞にもいいやり方じゃないな」
「ワーグナーって音楽とか脚本はともかく」
 その文章もドイツ語の教科書に載る程とされていて実際に教科書に載っていることは事実ではある。
「人間性はね」
「弟子や恩人の奥さんに手を出してるな」
「弟子の奥さんなんか獲ってるわよ」
「最低だな」
「尊大で図々しい人だったっていうわ」
「付き合いたくないタイプだな」
 フックはワーグナーの人格について素直に言い切った。
「あまり」
「そうよね、それでね」
「そんな人だからか」
「そう、反ユダヤ主義も」
 ワーグナーのこれもというのだ。
「かなり自分勝手なものだったのよ」
「逆恨みのか」
「しかもナチスが利用して」
 ワーグナーの音楽をだ。
「ヒトラーも大好きだったから」
「彼は終生ワーグナーを愛していた」
 ギルバートはそのワーグナーとヒトラ―の関係について言及した。
「子供の頃に聴いてからな」
「ずっとだったっていうわね」
「だからワーグナーを国家の音楽にした」
 そこまでの地位にしたというのだ。
「愛していたからこそな」
「そうだったのよね」
「他の音楽も好きだったそうだが」
 ベートーベンも好きだったという。
「特にワーグナーが好きでだ」
「そのことがあってね」
「イスラエルではずっとワーグナーはどうかとなっていたな」
「解禁されたのが二十世紀の終わりよ」
「今は聴けるな」
「けれどこのことずっと言われているから」
 イスラエルが建国されて千二百年以上経つがというのだ。
「ワーグナーが反ユダヤ主義でナチスに愛されていた」
「二重でどうかなんだな」
「そうなるから」
 アンはフックにまた話した。
「イスラエルじゃ小学校からこのこと教えてるわ」
「そうなんだな」
「ヴェニスの商人のこともね」
「そっちもか」
「よく言われてるけれど」
 ここでアンは腕を組んでこう言った。
「イスラエルは昔にこだわる国よ」
「旧約聖書が絶対だからな」
「それだけにね」
「そうしたことにもこだわるか」
「そうなのよ」
 実際にというのだ。
「これがね」
「そうしたお国柄か」
「そうなのよ」
「というか聖書にこだわるなら」
 それならとだ、フックは話した。
「ヴェニスの商人もワーグナーも」
「その他の色々なこともね」
 その色々なことについてもだ、アンは話した。
「ローマ帝国に攻め滅ぼされたりペストの時虐殺されたり」
「ペストを流行らせたと言われたんだよな」
「それで十字軍に攻撃されたり」
「そうしたことはか」
「全部ね」
「覚えているんだな」
「そうなのよ、聖書なんて四千年前のことよ」
 その時のことを書かれているのが旧約聖書だ、新約聖書ではキリストのことなので三千数百年前となる。
「その時のことを一字一句覚えているから」
「そうした教育しているからか」
「だからね」
 それだけにというのだ。 
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