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八条学園騒動記

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第五百七十六話 準備万端整ってその三

「お酒贈ってくれるんだよ」
「だから何かあると沢山あるのね」
「寮の方にもな」
 これは八条学園の二十世紀からの風習だ。
「いつもあるんだよ」
「そうだったのね」
「ああ、だからな」
「お酒はあるから」
「飲もうな」
 あるのならというのだ。
「そうしような」
「どうもね」
 アンはフックに難しい顔でこう返した。
「私としてはね」
「大酒飲んで騒ぐことはか」
「それはどうもね」
「抵抗があるんだな」
「そうした大騒ぎというか贅沢というか」
「ユダヤ教だからか」
「そう、ユダヤ教徒はね」
 どうしてもというのだ。
「贅沢は戒められているのよ」
「他にも色々戒律あるしな」
「だからね」 
 その為にというのだ。
「あまりね」
「大酒飲んで歌って踊ってか」
「そうしたことはどうかって思うのよ」
「それあれだよな」
 フックはアンの今の言葉にどうかという顔で返した、彼はこの時代の仏教徒つまり普通の考えの人間として話した。
「四千年前のユダヤ教の考えだよな」
「四千年前でもね」
「教えは変わらないんだな」
「十戒は生きているから」
 モーゼのそれはというのだ。
「あれはね」
「だからか」
「そう、連日連夜どころか」
「一回の飲んで食っての騒ぎもか」
「実は厳しいのよ」
「つくづく厳しい宗教だな」
「ええ、けれどその宗教でね」
 ユダヤ教、それでというのだ。
「私達は成り立っているのよ」
「イスラエル人はなんだな」
「即ちユダヤ人、ユダヤ教徒はね」
 アンはどうかという顔で答えた。
「だから絶対のことよ」
「そうなんだな」
「私は一人で静かに飲むわ」
「いつも通りそうするか」
「本当にその辺り厳しいから」
「少なくとも連合のイスラムはそうしたことはないが」
 ギルバートはムスリムとして述べた、この時代でも彼の祖国マレーシアはイスラム教徒が多いのだ。
「飲んで騒いでもだ」
「それでもよね」
「アッラーはお怒りにならない」
 そうだというのだ。
「アッラーは偉大でな」
「寛容よね」
「偶像崇拝は駄目だが」
 これは絶対に駄目である、イスラム教では殺人に並ぶ重罪である。
「しかし大抵のことはな」
「許してくれるわね」
「今モーゼの名前が出たが」
 十戒の彼はというのだ。
「コーランではムーサーだ」
「その展開聖書と一緒よね」
「だが兄アロンとの関係も違う」
 コーランではハールーンという名前になっている。
「助け合う関係と言っていい」
「それでコーラン基本ハッピーエンドよね」
「苦難があれば乗り越えて」
「それでめでたしめでたしよね」
「キリストも死なないしな」
 コーランではイーサーとなっている。 
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