八条学園騒動記
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第五百七十五話 考えたいことその六
「親分肌で物凄く腕が立って肝が座っていて」
「何か凄そうな人だな」
「うん、器も大きくてユーモアもあって」
「あれっ、酒乱でもか」
「そうした人で慕う人も多かったんだ」
実際の芹沢鴨はそうした人物だったという、確かに酒乱の気はあったが豪快かつ豪胆でありしかも恐ろしく強くそこを慕う者が多かったのだ。
「しかも日本の皇室を深く敬愛していて」
「忠誠心もあったのか」
「幕府の下にあったけど」
「おい、それってな」
洪童はマルコに日本のその頃の政治状況から話した。
「まずいだろ」
「幕府の側の人が皇室に強い忠誠心を持っていたら」
「ああ、しかも新選組ってな」
「言うなら幕府の武装警察だよ」
「秘密警察でもあるよな」
「どっちの色合いもあったね」
幕府に絶対の忠誠を使う会津藩の下にあるそうした組織だったのだ、二十世紀後半そしてこの時代の考えで捉えると。
「実際に」
「そんなとこのトップが勤皇だとな」
「色々まずいよね」
「何時勤皇につくかわからないな」
「しかも人望もあったから」
「幕府にとってまずいな」
「だから暗殺してね」
近藤のそうした傾向を危惧した会津藩が近藤勇達にそうする様にさせたという説もある。
「後でその酒乱のところを言って」
「悪者にしたか」
「その色合いが強いみたいだよ」
「そうなんだな」
「さっき話した黒田さんも」
この人物もというのだ。
「二十世紀後半の日本の歴史学者戦前を否定していて」
「明治の頃の日本もか」
「歴史学者というかマルクス主義の人達がね」
知識人にそうした考えの者は多かった、というよりかはソ連崩壊まで日本の知識人の主流はそちらであった。
「否定していて」
「黒田さんもか」
「貶める為にね」
「奥さん殺したとかか」
「言われていたみたいだよ」
「酷い話だな」
洪童はマルコの話を聞いてこう言った。
「酒乱でも何でもな」
「奥さん殺したとかね」
「そんな話広められるとかな」
「実際当時からそんな噂があったみたいだよ」
「そうなんだな」
「けれど大久保利通が否定したんだ」
黒田を引き立てた彼がだ。
「この人物凄く厳しい人でね」
「黒田さんが本当にそうしたらか」
「多分だけれど」
マルコは自分の予想だがと前置きして洪童に話した。
「幾ら有能でもね」
「引き立てないか」
「だって酔って奥さんを殺す様な人ならね」
「何時誰を殺すかわからないな」
「そんな人用いられないよ」
とてもというのだ。
「重くはね」
「というか今だと一般社会でもアウトだな」
「すぐに逮捕だね」
「殺人罪でな」
言うまでもなく重罪中の重罪である。
「そうなるな」
「切り殺したって話だけれど」
日本刀でそうしたという話が当時からあった。
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