魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編
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第6話 1人の男と1人の女の子のお話2
前書き
こんにちはblueoceanです。
気が付けば大晦日。
皆さんはいかがお過ごしでしょうか?
取り敢えず大晦日は休みでゆっくり出来そうですが、新年から忙しくゆっくり出来なさそう………
皆さんどうか最高の大晦日と新年を!!
新暦73年7月………
「ふあ~ぁ」
目を覚まし大きく背伸びをする。
「………10時か」
ゆっくり布団から出て、時計を見る。
今日は休日なのでもっと寝ようかと迷うが、渋々起きる事にする。
そう、それには深い訳があり………
「残念、お昼頃まで寝てるなら叩き起そうかと思ったのに………」
台所で洗い物をしてるお隣さんが原因だった………
新暦73年5月………
「なのはお姉ちゃん~!!」
「ヴィヴィオちゃん、また会ったね………こんにちは………」
「こ、こんにちは………」
あまりの驚きに思わず素で挨拶をしてしまうバルトマン。
それほど動揺していたのだった。
対してなのはの方も同様でヴィヴィオを抱き締めながらもあたふたしていた。
「ヴィヴィオ達、お姉ちゃんの隣に住むことになったんだ!!」
「そ、そうなんだ………」
バルトの顔を見ながら露骨に嫌そうな顔をするなのは。
「安心しろ、別に仲良くしようとは思ってねえから気にせず生活してろ………って何すんだガキ!!」
「バルトがそんな態度だからみんなに嫌われるんだよ!いい加減直しなさい!!」
「おいガキ、何上から目線でもの言ってんだ?」
「いひゃいいひゃい………」
バルトに両頬を引っ張られ、涙目で訴えるヴィヴィオ。
「………ったく、まあそんなこんなで一応よろしく頼む、お隣さん」
「………あっ、はい」
「じゃあね、なのはお姉ちゃん!」
その返事を聞いたバルトはヴィヴィオと共に自分達の部屋に戻っていった。
「………まあいっか。ふぁ~………もう一度寝よ」
夜勤明けのなのはは再び深い眠りにつくのだった………
「バルト!!いいお天気だね!!」
「ふぁ~」
「おひさまキラキラだよ!!」
「ああ………うざったいくらいにな」
「公園は気持ちよさそうだよね!!」
「いや、ガキの騒ぐ声がうざったい」
「バルト!!行きたい行きたい!!」
「何だ、結局諦めて直球勝負になったか………」
引越しが終わって1週間、生活にも慣れた2人は仲良く?同じ屋根の下で過ごしていた。
「バルト、バルト!!!」
「駄目だ。今日は金を作りに行かなくちゃいけねえんだ、お前と遊んでいる暇はねえ」
「嫌だ!嫌だ!嫌だ!!嫌だ!!!」
「や・か・ま・し・い!!やっぱり外食ばかりじゃ金がかかって仕方ねえ。金もあの金塊のみだとこの生活は1年ももたねえし………何かで大金を稼がねえとな………」
「バルト!!!!」
ブチ!!
「は~い。………って何をしているんですかバルトさん?ヴィヴィオちゃんを猫みたいに掴んで?」
なのは玄関を開けるとそこにはバルトに首を掴まれた猫のみたいに持ち上げられてるヴィヴィオがいた。
嫌な予感するなのはだったが既に遅かった。
「悪いがこのバカを一日預かってくれ、俺は少し用があるんだが、言うこと聞かねえんだ」
「えっ!?」
「忙しいか?」
「まあ確かに今日は休みで何も無いですけど………」
「じゃあ決定な。ほい」
「えっ!?きゃあ!?」
投げられたヴィヴィオを尻餅をつきながらキャッチしたなのは。
「あっ、ちょっとバルトさ………」
しかしなのはの言葉を最後まで聞く前にバルトは行ってしまった………
「ふう………取り敢えずこれで暫くは大丈夫か………」
金塊を金庫から取り出し、再び非合法の換金屋に持っていき換金してきたバルトは帰ってくると既に日が傾いており、時間は18時を回っていた。
「しかし時間かかっちまったな………と言っても昼過ぎてから動いたのが悪かったんだろうが、このまま家に帰ったら19時過ぎそうだな。またあのガキが騒ぎそうだ………」
溜め息を吐きながらも自然と笑みが溢れた。
「さて、取り敢えず夕飯はどこで食うかな………」
明日から自炊しようと思っていたバルトはミッドに帰る途中近くにあったスーパーで買い物をした。
両手に袋を持ってその中には野菜から肉類まで様々な食材があった。
「料理なんてあまりしたことねえから片っ端から買ってみたが………まあなるようになるか。食えりゃ問題ねえな」
そんな事を呟きながら歩いていると自宅から10分程歩くと着く広い公園に着いた。
「凄いでしょ~!!立ち乗り!!」
「ヴィヴィオちゃん!!危ないから止めなさい!!」
「………はあ、アイツら今までずっと遊んでいたのか………?」
呆れならがらブランコをしているヴィヴィオを見るバルト。それに加え、休みなのにも関わらず今まで付き合わせたなのはに流石に申し訳ない気持ちになった。
「あっ、バルト!!」
「ちょ!?ヴィヴィオちゃん!?」
高く上がっているブランコから飛び降り、上手く着地しバルトに走っていくヴィヴィオ。
(コイツ………)
3歳頃の子供の運動神経では無い事に驚きながらバルトはそのまま抱きつかれた。
「お帰り~!」
「お前………今まで遊んでたのかよ」
「うん!!なのはお姉ちゃんフェイトお姉ちゃんとヴィータちゃんと鬼ごっこしたり、缶けりしたり、砂場で遊んだりした~」
「………何か知らねえ人物が入ってるんだけど」
「あっ、それ私の友達です」
肩で息をしながらなのはが答える。
「済まねえな、こんなにはっちゃけるとは思ってなかった」
「良いですよ、休みだったし私も結構楽しかったですから。それより用事は済みました?」
「ああ、取り敢えずな。それよりお前、この後予定あるか?」
「えっ、いや特には………」
「だったら夕飯一緒にどうだ?こいつの面倒を見てくれたお礼をと思ってんだが………」
バルトがそう言うとなのはとヴィヴィオはポカンとした顔で固まる。
「………何だよ?」
「………バルト、頭打った?」
「それとも風邪の頭痛で性格が捻じ曲がったとか………?」
「………お前らが俺の事をどう思ってるかよく分かった。夕飯の話は無しって事で俺は一杯飲んでくるからガキの事頼むな」
「「ご、ごめんなさい………!!」」
慌てて謝る2人に、バルトマンは大きく息を吐いた。
「………ったく慣れねえ事をするもんじゃねえな」
「じゃあバルト、いつもの場所行こう!」
「まああそこしか知らねえからな」
「それって何処ですか?」
「シャルゼリア!!」
地球食専門店、シャルゼリア。
今ミッドでも人気の高い地球食専門ファミリーレストランで、地球食だけでなく、価格がとても安いのも人気の1つだ。
「これでこんぷりーと!!」
ビーフシチューのかかったオムライスを獲物を見るような目で見るヴィヴィオが大きく宣言する。
「コンプリート?何がかな?」
「ここのご飯全部!!」
「えっ………?それって………」
「あ?ここの食いもん全部食ったって事だよ。あっ、それ俺のだ」
そう言ってバルトは自分のドリアとコーヒーを受けとる。
「えっ、でも引っ越して1週間位しか経ってませんよね!?」
「まあ毎日来てるからな」
「毎日!?」
なのは驚いているのをよそに、2人は気にせず食べる。
「ちょっとバルトさん、毎日外食ってどういう事なんですか?」
「ああ?単純に料理が面倒だから食いに来てるだけだが?」
「そんな生活いけません!!」
「でも毎日好きなもの食べられるよ?」
「それがダメなの!!」
くあ~!!と唸りながら頭を抑えるなのは。
「………まあ確かに金銭的にも贅沢だとは思ってたからな、これからは自炊する事に決めた」
「バルトさん、料理は………?」
「食えりゃ良いだろ」
バルトがそう答えるとなのはは机に伏せた。
「この人にヴィヴィオちゃんを任せきれないよ………」
「ねえバルト、なのはお姉ちゃんがおかしいんだけど………」
「これが普通なんだろコイツの」
「おかしいのはあなた達です!!」
思いっきりバン!!と叩いたらせいで周りのお客さんにも注目され、1回咳払いして静かに座った。
「こんな生活してたら人間ダメになってしまいます!!」
「まあある意味間違いでは無いがな………」
「認めないでください!!そんなの私が許しません!!」
なのはの勢いに終始押されっぱなしのバルトとヴィヴィオ。
「で、でもなのはお姉ちゃん、ヴィヴィオはここ美味しいから好きだよ………」
「好きなものばかり食べてちゃダメです。色んな物をバランス良く食べないと」
「んなの気にしなくて良いだろうが………痛っ!?」
そう呟いたバルトの頭を思いっきり叩くなのは。
「テメェ、何しやがんだ!!」
「黙りなさい」
バルトの怒鳴り声にも全く動じる事も無く、冷めた目で見つめ続けるなのは。
そして………
「あなただけにはヴィヴィオちゃんを任せておけません、私が時間がある時は私が料理します!!いいですね?」
「何勝手に決めて………」
「いいよ!!なのはお姉ちゃんの料理楽しみにしてるからね!!」
「お前………だから何勝手に」
「じゃあ決定です。早速明日から作りに行くから楽しみにしててくださいね」
「………はぁ」
こうしてバルトが認める前に勝手に決まってしまったのだった………
そして最初に戻る………
「「「いただきます」」」
お昼時、3人で机に座って言う。
「なのはお姉ちゃん美味しいよ」
「ありがとうヴィヴィオちゃん!」
「確かに最初の時より成長したよな………」
「何で素直に褒められないんですかね………」
不満そうに呟くなのはだが、嬉しさが少し顔に出てしまった。
「いやだってよ、最初こそ焦げ焦げの目玉焼きやら苦い焼きそばに後はどろっどろのグラタンとか………」
「さ、最初の時の話はいいじゃないですか。こうやってちゃんと作れるようになりましたし………」
「まあな。そのおかげで俺もこうやって作らなくてもいいしな」
「………そりゃバルトさんは何故か料理出来ましたからね」
「俺のは独学さ、取り敢えず食えれば良いって感じだから料理と言えるか分からねえ」
「確かに見た目は最悪ですからね!それなのに味は中々ですから」
「自分でも良く分かってねえんだなこれが」
そう言って互いに笑い合うなのはとバルト。
「ヴィヴィオそっちのけ………」
なんて思いながらもヴィヴィオの顔は笑顔だった………
「おおっ~!!」
「へえ」
昼食を食べ終えたバルトとヴィヴィオはソファに並んで座って一緒にテレビを見ていた。
見ていたと言ってもそれはなのはがはやてから借りてきた地球のアニメで、なのはの話を聞いたヴィヴィオが見たいと言ったのを聞いて、友人のはやてに頼み、地球のDVDプレイヤーとDVDを借りてきたのだ。
内容は、パソコンの中に生きるデジタルな生き物と子供達の冒険譚。
アニメが初めてのヴィヴィオの興奮は当然ながら、バルトも飽きること無く観ることが出来た。
「これ、私が小学生の頃流行ってたんです」
「ほう、大人が見ても中々だな。………っと、悪いな」
洗い物が終わったなのははバルトにコーヒーを、ヴィヴィオにオレンジジュースを渡して、ヴィヴィオの隣に座った。
「これを見ていたときにはまだ自分に魔法が使えるなんて知らなかったし、これはアニメのだけの話で実際はあり得ない事なんだって思ってました………」
「まああんな魔法の技術も無い管理外世界ならそうだろうな………俺は管理世界で育ったから魔法もこんなでかい怪物もやたらといたけどな………」
「バルドさんってどこ出身なんですか………?」
なのはがそう言うと難しい顔をして黙ってしまうバルト。
「バルトさん………?」
「ああ………まあどこにでもある普通の管理世界さ」
そう言って立ち上がるバルト。
「バルトさん?」
「ちょっとタバコ吸ってくる」
そう言って部屋から出ていった………
「ったく全く丸くなったもんだぜ………」
タバコを吸いながらマンションの通路から外を眺め、昔のバルトマン・ゲーハルトだった頃を思い浮かべ苦笑いする。
「この生活を初めて2ヶ月、流石に鈍り始めるな………」
あのテロリスト以降、戦闘らしい事を一度も行った事がなかった。
なのはに管理局に入局してはどうかと何度か言われたことがあったがバルトは全て断っている。
当然理由は管理局にクレイン・アルゲイルがいる事と、若くなったとは言え、元の魔力はバルトマン・ゲーハルトのものであるからだ。
「さて、どうすっかな………」
バルト自身、この辺りで何か行動を移さなくれはと思っていた。
でなければ平和ボケするのではと………
しかし本人はその気持ちとは裏腹にこの今の時間が悪くないと思っている自分がいる事に気がついていた。
だからこそヴィヴィオの事もこのままにしているし、なのはとの付き合いも断らずされるがままとなっている。
そしてもう1つ気になる事があった。
「………行ってみるか。バルトマン・ゲーハルトとしてでなくバルト・ベルバインとしてな」
そう決めたバルトはタバコを落とし、踏みつけ部屋の中に入っていった。
「タバコの吸殻外に捨てないでください!!」
そして直ぐに出てきた………
「本当に久しぶりだな………」
ヴィヴィオをなのはに任せたバルトは1人懐かしの場所へとやって来た。
聖王教会。
かつてバルトマン・ゲーハルトが所属していた場所でもあり、事件を起こし、出ていった場所でもある。
「あの時と何も変わってない」
聖王教会の柵の外からでもそう感じたバルト。
事件を起こし、教会の騎士を抜けてから1度も訪れた事は無かったのでとても感慨深く感じていた。
「帰ってきたか………」
入口をくぐり抜け、正面を見て思わず呟く。
「いや違うな。戻ってきた………だな」
そう思ったバルトはさっきとは違い、身体の身が引き締まる感じがした。
「あまり長いは出来ないよな………」
そう自分に言い聞かせ、バルトは中へ入っていった………
「しかし前よりカップルが多くなったな………」
教会の中に入る前にも感じた事だ。
元々聖王教会は観光地としても有名でその周辺の景観が良いこともあり、今じゃ若者の結婚式場として利用されている。
その影響でカップルや男女でいる人達が多いのだ。
なので………
「居心地が悪ぃ………」
今回バルトが聖王教会に訪れたのには2つ目的があった。
1つ目は自分のデバイス、バルバドスについての情報。
2つ目はヴィヴィオについて。
過去の聖王の騎士の話を知っていたりと、謎が多いヴィヴィオ。
彼女の事を何か知ることが出来ればと訪れたのだ。
「さて、この壁画は聖王の騎士達の壁画であり………」
団体を連れた教会の女性が説明をしている。
バルトは教会の中に入り真っ先に訪れたのは壁画がずらりと並ぶ部屋。ここでなら古代ベルカ時代の事が調べられる。
一般の観光客にも公開されていて、本日も多くの観光客が訪れていた。
そしてバルトは5人の人が描かれた壁画の前に向かった。
「ちゃんと残ってたな。前はこんな壁画全く興味無かったが………」
よく見るとそれぞれ自分の武器を持っていた。
「最初の大剣を持ってる奴がキルレント、双剣を逆手に構えているのがグラント、杖を持ってる女がリアレス、刀を構えているのがクレア、そしてコイツが………」
「ベルガントですよ」
その声を聞いたバルトは驚いて振り返った。
「えっ!?あなたは………」
「カリム………」
「あなた………やっぱりバルト………?でもバルトはあの脱走事件で行方不明って………」
カリムが呟いた言葉を聞いてハッと我に返ったバルト。
「行方不明?俺は確かにバルトだが、行方不明になんてなっちゃいねえぜ!?」
「えっ!?でも私の事をカリムって………」
「いや、アンタの事は色んな雑誌にも載ってたりしてるだろ?だから驚いちまって………」
「そ、そうですか………そうですよね、今の彼はこんなに若くない筈ですから………」
そう残念そうに呟くカリムにバルトの顔を険しくなる。
「………改めて自己紹介しますね、私はカリム、カリム・グラシアです」
「………俺はバルト、バルト・ベルバインだ」
「そう、彼らの事について………」
「ああ、特にこの斧を使ってるベルガントについてな」
取り敢えず壁画を一通りカリムに案内してもらったバルト。
その後カリムの部屋に案内してもらいコーヒーを出してもらった。
結果を言えばあの時ヴィヴィオが言ったような事は壁画には書かれて無かった。
ただ殺戮の聖騎士の話は本当でカリムがその時の事を話してくれ、ヴィヴィオの言っていた事と同じだった。
(これで更にヴィヴィオについて謎が………いや、何となく予想はつくな。だが確かではない………)
「バルトさん?」
「ん?ああ、悪い悪い。それより良いのかこんなの教えて?」
「良いんですよ、上の人達は聖王教会のイメージが悪くなるからって公表してないんですが、私はこの殺戮の聖騎士が好きなんですよ?」
「何故?」
「彼は聖王の事をとても敬愛していたんだと思います。騎士としてだけでなく1人の男として。ただその思いが真っ直ぐ過ぎただけでなんです」
「だがそれが自分の破滅を呼んだ」
「でも私は嫌いじゃ無いです………」
そう言ってバルトをまじまじと見つめる。
流石に見つめられるのには慣れていないバルトは恥ずかしさを隠すように顔を合わせないように部屋を見ているように見せた。
「ん?これは………」
「私の小さい時の写真です」
そこには小さいカリムを囲むように鎧を着た大人達が降り、その端に眠そうな顔で写っている男がいた。
「………俺、こんな情けない顔してたっけ?」
「やっぱり似てますね………」
写真立てを見ていたバルトの後ろから声をかけたカリム。
先ほどのバルトの独り言は聞こえてないみたいで、その事について何も言ってこなかった。
「その人がバルトマン・ゲーハルトです。いつも退屈そうで、毎回訓練を抜け出して私の部屋にコーヒーを飲みに来てましたよ」
そう話すカリムは昔を懐かしむように話していた。
(いや、別に毎回では………いや、毎回か………格式ばっかりで面倒だったよな………)
「私のコーヒーが最初は不味いって文句言われて………悔しくて美味しく作るのに苦労しました………」
(………んなこと言ったっけ?)
「小さな子供だったけど頑張って練習して、初めて美味いって言われたときは本当に嬉しかった………」
(………まあ確かにとてもいい笑顔だったな)
「他の騎士達とは違い私に対して親しげに話してくれてたり、時々一緒に遊んでくれたりとても楽しかった。本当に………」
写真を大事そうに指でなぞるカリム。
その顔にはうっすらと涙が流れた。
「カリム………」
思わず頭を撫でてしまいそうになったバルトだったが、その手を何とか引っ込めた。
「だけど私のせいで彼は………」
そこから暫く黙っているカリム。
バルトも自分の事だけに気が気で無かった。
「ごめんなさい、こんな話………」
「………奴は後悔してないんじゃないか?」
「バルトさん………?」
「案外好敵手を見つけたり、成り行きで子供の面倒見なくちゃ行けなくなったりしてるんじゃないのか?」
「………ふふ、それはあたふたしそうですね。それに子供っぽいから意外に何も出来なくて誰かに面倒見てもらってるかも」
そんな事無いと否定しようと思っていたバルトだが、余りにも今の自分と同じな為何も言えなかった。
「バルトさん?」
「な、何でもない!!それより聖王の特徴についても聞きたいんだが………」
「聖王の特徴?特徴も何もさっきの場所で肖像画が………ってそう言えばちょうど清掃中で見れなかったんだっけ?」
「だっけって言われてもな………」
「うふふ………それじゃあまた案内しますね」
そう言われ、バルトはカリムについて行った………
「これが聖王オリヴィエ・ゼーゲブレヒトです」
カリムに案内されて1枚の肖像画の前に立った。
そこには優しげな顔立ちの金髪の女性が写っていた。だがバルトは驚きで反応出来ないでいた。
(やはり………)
「どうしたのですか?」
「いや、ありがとう。見れて良かった………」
「そうですか?」
そうは言うものの、険しい顔つきで肖像画を見つめ続けるバルト。
(出来れば外れて欲しい推測だったが………やはりそんなに都合良くないか………)
「これで俺の目的は果たせた。本当に世話になったな」
「いえ、こちらこそ楽しかったです。もし良かったらまた来てください。おいしいコーヒーを煎れますから」
「そうだな、コーヒーを飲みに来るのも悪くはない」
「あ、あの………そ、その時には美味しいケーキも用意しますので、良ければ連絡先の交換を………」
「あ、ああ………」
すがるような頼み方をするカリムを見て、思わず携帯機器を取り出してしまうバルト。
そのまま2人は連絡先を交換するのだった………
「ただいま………」
「おかえりなさい」
家に戻ったのは5時半頃。
帰ってきたバルトを迎えたのはヴィヴィオに膝枕をしてあげているなのはだった。
「何だ寝ちまったのか」
「途中私の太ももを枕にしながら見ていたんですけど、その内に気がついたら寝ちゃってました」
「そうか………面倒を見てくれて助かった」
「構いませんよ、今日は暇でしたから」
笑顔でそう言うなのはに少し笑みをこぼしたバルト。
「………」
「うん?どうした?」
「な、何でもないです!!」
「そうか?まあいい、少し部屋にいるからヴィヴィオを頼むな」
「あっ、なら夕飯を作りたいのでついでにお部屋に寝かしてきてください」
「了解」
そう返事をしたバルトはヴィヴィオをお姫様抱っこしてヴィヴィオの部屋にへと運んでいった。
「いきなり笑うなんて反則だよ………」
誰もいないリビングでなのはは1人呟いた………
「聖王オリヴィエか………」
寝ているヴィヴィオの顔を見ながらバルトは呟く。
「何故だろうな、お前の顔を見てると昔みたいに戦いに明け暮れたいと思わなくなる………」
そう呟きながら聖王教会で見たことを頭の中で思い出す。
「お前はあの研究所で聖王オリヴィエとして造られたんだな………その目的が何なのか、またクレインの奴の仕業なのか全く分からない。だが、お前が聖王なら今の俺はその聖王を守る騎士って所かな」
腕輪になってるバルバドスを確認しならが呟く。
「………仕方ねえ、もう少し付き合ってやるよガキンチョ」
バルトマンはそう言い残してヴィヴィオの部屋を後にしたのだった………
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