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魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編

作者:blueocean
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第7話 ティアナとスバル

新暦73年4月………

「で、どうだったティーダ先生?」
「ああ、トーレ先生」

夕方、机に座って端末と睨めっこしていたティーダにコーヒーを渡すトーレ。
今、職員室にいるのだが、2人以外の先生は誰もおらず2人だけだ。

「前言った卒業サプライズ、許可は無事下りたよ。後は企画書を提出だけさ」
「そうか………いよいよだな。ティアナやスバルは何処に配属されるのだ?」
「陸士第386災害部隊」
「………彼女達の成績ならばもっと上を薦められたのでは?」
「ティアナはともかく、スバルは筆記がな………でも2人共特に文句も無く納得したよ。ティアナも『今はこれでいい』って」
「今はか………ティアナらしい」
「負けず嫌いだからね………」

苦笑いしながらコーヒーをすする。

「では、最後にしっかり痛めつけてやるか」
「トーレさん、顔が怖い………」
「何、少し本気を出すだけさ。ティーダも妹だからと手を抜くなよ?」
「そんな事しませんよ。俺だって妹の為に久しぶりに見せてやりますよ」

そんな事を話ながらティーダはパソコンを閉じた。











「ティア、訓練校ももう少しで卒業だね………」
「そうね」

同じ部屋のティアナとスバル。それぞれのベッドに寝ながら話していた。

「何か寂しいね………」
「そうね」
「ティア、反応が薄い………」
「………毎日聞かされるこっちの身にもなりなさいよ」

呆れならが文句を垂れるティアナ。

「でもさ、やっぱり卒業となると寂しいじゃん………」
「昨日も言ったけどこれからなのよ?特にアンタは脳筋な所があるからしっかりしないと………」
「大丈夫、ティアがいるから!!」
「いや、私にサムズアップされても………それに解決になってないし………」

はぁ………と溜め息を吐くティアナだったが、それでも自然と笑みが溢れる。

「それよりもう寝ましょ、明日も早いんだし………」
「ねえティア、明日模擬戦しない?」
「良いわよ、どうせまた私が勝つから」
「今度は絶対勝つもん!!」

今まで戦ってきた模擬戦の戦歴。

ティアナ 124戦64勝50敗10引き分け。
スバル 124戦50勝64敗10引き分け。

ティアナは巧みな幻影、射撃のレパートリーを利用して勝っており、それが勝ち越している要因でもあった。
対してスバルは自身の突貫力と機動力を利用した一点突破の戦闘が大半で、その威力は訓練校トップである。
しかしそれが仇となりティアナによく読まれるのが負け越してる原因であった。
だがそれでも50回勝っているのはティアナの読みの先を行く、意外性によるものだった。

「そう言えば加奈さんも卒業だよね?」
「そうね。あのエリート校で主席なのに、武装隊に所属するってこの前メール貰ったわ」
「メールやり取りしてるの!?」
「まあ中々気があったからね」
「でも懐かしいよね。あの時の試合で加奈さん1人に負けたのは本当に堪えたよね………」







新暦72年2月………

「訓練校共同エキシビジョンマッチ?」

放課後、ティーダに残るように言われたティアナとスバルは夕暮れの講義室にいた。

「まあ単なるイベントだよ。新人達のひたむきな姿勢で管理局のイメージアップと同時にエリート校のレベルを測るってイベント」
「やっぱりエリート重視なのね」
「それは仕方がないよティアナ」
「でもね………やっぱり納得出来ないじゃない………」
「かませ犬って言うんだっけこういうの?」
「珍しく言葉知ってるじゃない」
「何それ!?酷いよ!!」

机をバン!!と叩くスバル。
しかしランスター兄妹は大きな音が響く前に耳をふさいでそれを防いだ。

「でもそう思われても仕方がないわ、実際に初戦負けが続いているんだから………」
「そうなの?」
「………だからこそお前達を呼んだんだ。今年の大会はダークホースになってもらうためにな」

そう言ったティーダの顔はニヤリと気持ち悪いなとティアナは思ったのだった………








そして当日………

「頑張ってね2人共!!」
「僕達の意地、見せてくれ!!」

数10人の仲間達に見送られ、ティアナとスバルは今回エキシビジョンマッチに使われるスタジアムに向かう。

「………」
「………」

バリアジャケットを既に着ており完全に戦闘モード。
しかしその目は少し虚ろになっており、変なオーラを漂わせてる。

「………ティーダ先生、とてもあの2人勝てる気がしないんですけど」
「トーレ先生に頼んでしごいてもらったらすっかりあんなになっちゃって………」
「トーレ先生何したんですか………?」
「いつも以上のハードトレーニング。約3倍程」
「うわ………」
「俺、生きていく自信が無いや………」

そんなティーダの言葉にすっかりブルーになる生徒達。

「ほぅ………情けない事を言ってる内はまだ余裕があるな………」

そんな声を聞き、後に生徒達は更に地獄を見るのだった………









「全く………私もまだ甘かったか………」
「泣かさない様にねトーレさん」

会場の観戦は自由行動と言うことでそれぞれ行動することになり、ティーダとトーレはそれぞれ並んで座っていた。

「それより2人の様子はどうだった?」
「何か負のオーラを漂わせてたよ、まるで恋人に裏切られた様に虚ろな目で………」
「おかしいな、私の予定では屈強な兵士の顔に………」
「それはならなくて良かったよ。嫁入り前の妹が結婚出来なくなるような事になったらどうすればいいんだよ」
「大丈夫だ、その時は私がしっかり面倒見よう」
「ゆ、百合の世界………」
「冗談だ」

背中をバシっと叩かれ、咳き込むティーダ。
そんなティーダに笑みが溢れるトーレ。

誰がどう見ても仲の良い先生間を超えてる2人。

((生徒の事絶対忘れてるだろあの2人………))

少し後ろに座っている2人の生徒が先生方を見てそう思ったのだった。








「さて、じゃあ本題に。2人は実際どこまで行けると思う?」
「ハッキリ言って実力は他の訓練校の新人含め上位の位置に付けると思う。低魔力ながらそれを感じさせない隙の無い攻撃と先を見据え視野を持つティアナ。ティアナよりは魔力を持つにしてもハッキリ言って平均レベルのスバル。しかしその分クロスレンジの強さと、とっさの思いつきによる攻撃には私も時々驚かせられる」
「確かにスバルは突拍子の無い行動をするからな………」
「それに一撃の威力は申し分無い。それを活かす為にはティアナの指揮が必要なのだ」
「確かにね」
「私の予想は準優勝までは行くだろう」
「おっ、結構高評価」
「当然だ、それくらい行ってもらわなければな」
「でもそこまで行ったら優勝も狙えるでしょ」
「それは………恐らく無理だ」
「何故?」

「何故なら新人の中に佐藤加奈が居るからな………」








「スバル、ぶちかませ!!」
「白虎咬!!」

森林で生い茂るステージの中、敵の魔導師の視界の外から現れたスバルは、右手に魔力を貯め、その魔力を直接相手に当てて爆発させた。
桐谷が良く使う技。威力が高いものの、近距離で直接ぶつけなければダメージを与えられない難しい技でもある。

「何でいきなりあんなところに!?」
「悪いわね、アンタたちの行動なんて簡単に予測出来るのよ」

そんな様子を見ていたもう1人にティアナが後ろから声をかけ、敵は慌てて剣を振るうが、ティアナの影だけがまっぷたつになる。

「幻影!?」
「悪いわね、これで終わり!!」

魔力刃を備えた双銃をクロスさせ、バツの字に斬りつけた。

「ツインブレイド。双銃だからってクロスレンジが苦手とは限らないわよ」
『終了!!勝者、ティアナ、スバルペア!!!』

会場はいつも以上の歓声に包まれる。

「やったねティアナ!!決勝戦だよ!!!」
「取り敢えずトーレ先生にどやされずに済むわね」

そう、既に2人は何度も勝ち抜き、決勝戦まで上がってきた。

「次の相手は………」
「恐らく、あっちのペアでしょう」











「くそっ!!何で攻撃が通らない!!」
「待て、無闇に突っ込んだら!!」

建物の影に隠れていた魔導師の1人が表に出ていく。

「ぐあああああああ!!!!」
「ケイン!!」

出てきた瞬間、無数のレーザーの様な砲撃魔法に蜂の巣にされる魔導師。

「くそっ、あの小さい奴に………!!!」

1人残った魔導師は直ぐにその場を離れる為に走っていく。

「残念、行き止まりだ!!」
「なっ!?」

しかしその先には敵の魔導師が待ち伏せていた。

「邪魔だ、どけ!!!」

道をふさいでいる魔導師をどかす為に魔力弾を飛ばしたが、それは無数に飛んできた小さい小型機に防がれた。

「くそっ、また!!!」
「佐藤、余計な事するんじゃねえ!!これくらい俺だけで充分だ!!!」
「………そう、それはごめんなさい。じゃあ後はご自由に」

そう加奈が言うと小さな小型機は全て消えた。

「さあ唸れ、デットイーター!!」

そう言うと右腕に持っていた曲刀の形をしたデバイスを相手に向けて突っ込んでいった………













「ふむ………」
「トーレさんが言ってた魔導師のチームがティアナ達の相手みたいだね」

あの後、曲刀を使っていた魔導師達のチームがそのまま勝利し、決勝戦の組み合わせが決まった。

「どう見るトーレさんは?」
「………あのチームワークの悪さを逆手に取れば或いは………流石の加奈も2対1なら勝てる可能性が僅かに上がるだろう………」
「………それほど凄いのあの子?確かに高ランクの魔力と無数に操るスフィア?『フェアリー』だっけ?あれは厄介だけど、あれくらいならティアナだけでも対応出来ると思うけど………」
「当然実力を全て出し切ってる訳では無い。それに加奈に勝てないと言える最大の理由があるのだ」
「最大の理由?」
「彼女の防御魔法の数々は魔導師1と言っても過言で無いからな」
「魔導師1!?冗談だろ?」
「いや、私はそう思ってる。………まあ彼女自身欠点もあるのだが、それだけでは無く、彼女は後方支援タイプに見えて、ちゃんと攻撃魔法もある。広域魔法も使えるはずだ」
「………なるほど、彼女の評価がやたら高いのは決して間違いじゃないって事か」
「だが当然欠点も確かにある。それを見つけ、どうするのかティアナの実力が試されるな………」

難しい顔で2人は決勝に望むスバルとティアナを見たのだった………











(やっぱりあの2人が上がってきたか………)

決勝戦、互いに向き合い加奈がそう思う。
凄く警戒した顔で加奈を見るティアナ。そして一応加奈と面識のあるスバルはお辞儀をした。

(スバルか………ギンガから桐谷みたいな戦い方をするって聞いたけど………そうだと本当に相性が悪いわね………せめてこっちの相方がスバルを取り押さえてくれてれば………)

「………何だよ」
「別に」

(無理そうね)

そう結論づけた加奈は前を向き戦闘準備に入る。

(先ずはスバルより先にティアナね。スバルは元々考えるのは苦手だろうし、統率の取れないスバルなら恐くないわ)

そう決めた加奈はフェアリーを3基展開した。

「これが………」
「フェアリー………」

「さあ、始めましょうか!」

スタジアムだった外観がミッドの街に変わり、決勝戦が始まった………









「スバル!!スモークバレット!!」

ティアナは始まった瞬間、地面に魔力弾を撃ち込み煙を発生させる。

「煙幕!?」
「こんなもの俺が吹き飛ばしてやる!!」
「待って!!先ずは周辺を警戒しないと!!」
「うるせぇ、俺に命令するな!!唸れデットイーター!!」

曲刀に魔力を纏わせ、それを力一杯振るう。

「バカじゃないの!?これは魔力で起こした煙なのに無闇に剣を振ったって………くっ!?」

咄嗟にフェアリーをサークル状にし、シールドを作り、向かってきた魔力弾を防いだ。

「流石に伊達じゃ無いわねその防御力………」
「随分せこい手を使うじゃないティアナ?」
「私の事知ってる………?」
「トーレさんから時々聞いてたからね!!」

話ながらもシールドを解除し、声のあった方にフェアリーを向かわせる。
直ぐにオールレンジ攻撃でレーザーの魔力弾を発射するフェアリー達

しかし直撃したティアナの体は霧の様に直ぐに消えてしまった。

「幻影!?」
「でもこれ以上何も仕掛けて来ない………じゃあ狙いは………まさか!!」

「ぐあああああああああ!!!」

大きなビルに吹き飛ばされた加奈のパートナーは大きな声をあげ、気絶した。

「これで、2対1。何とか間に合ったね!!」
「本番はこれからよスバル、気を抜かないでね」
「うん!!!」

「………やられたわ。予想はしてたけどまさか煙幕を利用してその内に倒すなんて………しかし動揺しすぎなのよ、本当に役たたず………」

一度手元にフェアリーを呼び寄せ、思わず呟いた。
容易に予測できた事ではあったが、それを防ぐ前に倒されてしまった。

(最悪ね………クロスレンジに持ち込ませず、何とか行動不能にしないと………となれば………)

そう言ってフェアリーを展開したまま、杖を前に構える。

「スバル、来るわよ!!」
「うん!!」
「聖なる槍よ敵を貫け、ホーリーランス!!」

加奈が唱えると2人の上空に光の槍が多数出現。
一斉に2人に降り注ぐ。

「攻撃魔法!?」
「ティアナ!!」

攻撃魔法が来たことに驚いたティアナはワンテンポ行動が遅れた。
避けるモーションが遅れ、完全に避けきれない。

「くっ!?」
「玄武剛弾!!」

自分に向かってきた光の槍を滑るように旋回しながら避け、右拳ほど溜めた大きめの魔力弾を飛ばしてティアナに向かって来た槍を撃ち落としたスバル。

「スバル、ありがとう!!」
「どういたしまして。………私、突っ込むよ、2人で固まっててもこのままじゃ袋叩きだ」
「………そうね。分かった、フェアリーは私が極力抑える」
「うん!!………じゃあ行くよ!!!」

地面を滑りながら加奈に向かっていくスバル。

「フェアリー!!」

そんなスバルを止めるためにフェアリー達がスバルへ向かっていく。

「邪魔はさせない!!」

すかさずティアナが援護の為、魔力弾を連射する。
しかしその魔力弾は更に現れたフェアリーの作ったシールドにより全て防がれてしまう。

「くっ!?スバル!!」
「サークルバインド!!」
「えっ!?」

スバルを狙っていたフェアリー達は魔力の糸でスバルをぐるぐる巻きに縛り上げた。

「きゃあ!?」

体勢を崩されたスバルはそのまま倒されてしまう。

「先ずは1人………聖なる槍よ敵を……くっ!?」
「やらせない!!」

双銃に魔力刃を展開したティアナが加奈に向かい、中断させる。

「指揮する側が無闇に突っ込んできていいの?」

杖でティアナの攻撃を受けながらそんな事を言う加奈。
その直後、残ったフェアリー達がティアナを攻撃した。

「ぐっ!?」
「デルタレイ!」

ダメージで離れたティアナに人の頭程の大きい誘導弾を3つ発射した。

「ティアーーー!!」

弾道の速いデルタレイは真っ直ぐティアナに向かっていくが、その前にスバルが立ち塞がり自分の拳で全て打ち落とした。

「………全く、こんなに早くバインドを解かれるとは思わなかったわ」
「あまり私達を舐めない方が良いよ!!」
「まさか。今日1番警戒している2人を舐めるわけ無いじゃない。………だからこそ私は本気で挑むわ!!エタナド!!」
『かしこまりました』

エタナドの返事が聞こえた瞬間、更にフェアリーを展開する加奈。

「また!?」
「本当に厄介ね………あのフェアリーをどうにかしないと………」
「そうだね………ティア、策はある?」

「あるにはあるけど………スバル、少しの間囮になれる?」
「キツイ事言うね………だけどやってみせるよ!!」

そう宣言したスバルは多数展開されているフェアリーの群れの中に突っ込んだ。

「正気!?」
「私は我慢強いんだからね!!」

魔力弾を受けながらも気にせず加奈に向かっていくスバル。

「囮をお願いしてもわざわざ突っ込む必要無いでしょうに………だけどこれで………」

加奈にバレないように魔力弾を発射するティアナ。
その魔力弾は発射されると直ぐに消えてしまった。

「あのフェアリーがサーチャーみたいな能力があったらこの作戦は失敗する………賭けねこれは。もっと良い策があれば良かったんだけど………」

そう呟きながらも魔力弾を撃ち続ける。

「頼むわねスバル………」

相方の様子を見ながらもティアナは撃ち続けるのだった………








「ぐううっ………!!」
「本当に頑丈ね、スバル」

フェアリー達の攻撃に蜂の巣にされながらもスバルは加奈に攻撃を続ける。
しかし攻撃を受けながらでは攻撃にキレは無く、加奈に簡単に見切られてしまっていた。

「だけどもう限界じゃない?ティアナの仕込みは間に合わなかったようね?」
「ティアを舐めない方が良いよ………ずっと私より………賢いんだから………」

ボロボロになりながらもスバルは倒れずその場に立ち続ける。

「私達はコンビだもん………ティアは言った事は必ずやってくれるから………」
「信じてるって訳ね………」

「そう!私もその約束を絶対に破らない!!」

そんなティアナの声が響き、スバルはティアナの方を向いた。

「ティア!!」
「下がって!!」
「うん!!!」

「逃がさない!!!」

後退するスバルにフェアリーが追撃するために向かっていく。

「集中して集まったその時が………今!!」

そう言うとその場にいきなり円を描くように並んだスフィアが現れる。

「えっ!?」
「ミラージュバレット、エクストリームシフト!!!」

現れたスフィアから一斉にレーザーの様な魔力弾が発射される。
まるで竜巻を巻き起こしているかの様に発射されるレーザーが全てのフェアリーに直撃し、破壊した。

「まさか!?」
「そして………スバル!!」
「うん!!狙いは外さない………もう1人の憧れの人の必殺技!!ディバインバスター!!」

なのはの得意とする直射系の砲撃魔法を加奈に向かって発射するスバル。

「うそっ!?あのダメージでまだ攻撃を………エタナド!!」
『フェアリー全機破損、修復中の為再展開出来ません!!』
「くっ、フォースフィールド、展開!!」
『はいマスター!!』

ディバインバスターが直撃する前に加奈の周辺をドーム状のバリアーが包み込む。

「これは!?」
「バリアー!?だけどスバルのディバインバスターなら………!!」

しかしスバルの攻撃ばバリアーに直撃すると同時に完全に消え去ってしまった。

「うそっ!?」
「残念だったわね、でも流石に焦った………『マスター!!』えっ!?」

完全に防いだ事に安心しきってた加奈。しかしそんな加奈に向かって行く1人の少女。

「スバル!!」
「今なら加奈さんに通る!!舞朱雀、狼!!」
「お、オーガシールド!!」

高速の拳撃。加奈に魔力で強化された拳で左右に殴り抜けながら何度も殴りかかるスバル。

「ぐうっ………!!」

しかしその攻撃も加奈の展開したオーガシールドの前には攻撃が通らず、ただ虚しい打撃音だけが響き続ける。
だが………

「くっ………」
『完全に防ぎきれませんか………』

庇いきれなかった箇所にはしっかりとダメージを受けた加奈。

「ど、どうだ………!!」
「ス、スバル………まさか連続で向かってくるとは………だけどね」

そう言うと加奈は杖を自分の前に構えて目を瞑った。

「!?スバル!!」
「癒しの光をここに………ファーストエイド」

そう唱えると加奈が光に包まれ、今まで受けたダメージが少しずつ回復されていく。

「うそ………」
「間に合わなかった………」

咄嗟に声をかけたティアナだったが、既に手遅れだった。

「本当に惜しかったわね、そろそろ終わりにするわ。………エタナド」
『フルドライブ!!』

「スバル!!」
「ティア………逃げて………」

ティアナは直ぐに反応出来たがボロボロのスバルはもはや逃げる程の力は残っていなかった。

「スバルー!!」

ティナアも我を忘れてスバルを助けに走ってしまう。

「………これで終わりよ、裁きの光を此処に………闇を消し去る創世の光、輝け!!ディバインジャッチメント!!!」

2人の上空に光が差し込み、2人に目掛けて大きく振り注いだ………











「こ、広域魔法………」
「何て威力………」

加奈の放ったディバインジャッチメントは街にクレーターを作り、その中にスバルとティアナの姿もあった。

「まさかあんな魔法も使えたとはな………」
「トーレさんも知らなかったのか………」
「ああ、流石零治の妹と言ったところか………」
「黒の亡霊の………って妹!?」

驚くティーダをよそに倒れている2人を見る。

「まあ何にせよよく奮闘した………」

トーレの顔は優しい笑顔だった………
















「思い出したらムカムカしてきた!!」
「まああの時は完全な敗けでかなり悔しかったからね………」
「でも私達はまだまだだって気が付けたのは良かったかな?いつもトーレさんにしごかれて、ここじゃティアナ以外に負け無しで天狗になってたかも」
「確かにね………私達がコンビで勝てなかったのってトーレさん位だもんね」
「兄さんにはこの前勝ったしね」

その話はつい最近。
後1ヶ月で卒業となったある日、ティアナとスバルはほぼ強制で2対1で模擬戦をしたのだ。

今までもティーダと模擬戦をやって来た2人だったが、一度も勝ったことが無く、ティアナが試行錯誤を重ねて考えた作戦で何とか勝ったのだった。

「トーレさんに勝ちたいね………」
「そうね………」

その後も2人は眠るまで思いで話に華を咲かせたのだった………









そして卒業式当日………



「何でこうなってるのよ?」
「私も聞いてないよ?」

グラウンドの中心、そこにティアナとスバルがいた。
そしてグラウンドの外には沢山のギャラリーが。

「何、卒業記念に私とティーダが相手をしてやろうと思ってな」
「2対2は初めてだろ?」
「そ、それはそうよ!!何とか兄さんには勝てたけどトーレ先生には2人でも一度も勝ててないのよ!?」
「今の私達じゃ無理だよ………」
「それに今日は卒業式よ!?何でよりによって………」

弱気な2人を前に苦笑いのティーダ。
しかしトーレだけは険しい顔で2人を見ていた。

「………お前達、現場でもそう言うのか?」
「「えっ?」」
「現場でもお前達よりも実力が上な相手も出てくるだろう。そんな相手に対してそう言って逃げるのか?」
「それは………」
「逃げられない………ね」
「そう、例え魔力が自分より上だろうが、剣や銃の腕が上だろうが、やらなければならない。逃げればその分、犠牲になる者が出るのだ」
「「………」」
「現場はそう言う場所だ、覚悟が無いのなら辞めるがいい」

トーレの厳しい言葉に2人は俯くが直ぐに顔を上げた。

「いい顔だ………」

覚悟を決めた顔を見たトーレはニヤリと笑みをこぼしながら自身の手足にエネルギーの羽を展開した。

「トーレ先生………?」
「それは………?」

「私の先天固有技能だ。名はインパルスブレード。私も少し、本気でやらしてもらう」

その羽を手に取り、双剣を繋げた様な両端に刃があるエネルギーブレードを作り出した。

「それがトーレさんの本気………」
「威圧感が凄いわね………」

「おっと、俺も忘れるなよ2人共?」

そう言うティーダも双銃をクルクル回し2人に銃先を向けた。
その顔はいつにもなく真面目である。

「兄さん………」
「いつものティーダ先生じゃないね………」

そんな2人の本気な態度に負けじと身構える2人。

「それじゃあ始めるぞ………」

目で見ている先生達に合図するトーレさん。

「グラウンドはこのまま平地だ、お前の指揮を見せてもらうぞ」

ティーダがそう説明すると同時に始まりのブザーが鳴り響いた………








「スバル!!」
「くうう………」

高速で向かってきたトーレの攻撃をかろうじて受け止めるスバル。

「ぬるい!!そんな攻撃では私にダメージを与える事も出来ぬぞ!?」
「まだまだ!!」

2人の戦いは続く………







「ティナア、この状況どうする?」
「セオリーなら兄さんをさっさと倒してトーレさんを2人がかりで倒す」
「そうだな。俺よりトーレさんの方が確実に格上だ。だがティアナ1人で俺を倒せるか?」
「………いいえ、これでいい」
「?」
「今の私達が兄さん達を倒せるとは思ってない。だからこそ今、自分達が自分達の未来に繋がる様に戦うだけよ」
「それはさっきのトーレさんの言葉を無視する気かい?」
「無視なんてしてないわ、今日の戦いを逃げずに噛み締めるだけよ。未来に繋げる為に………!!」

そのティアナの言葉と共に互いの双銃から魔力弾が放たれ、お互い相殺する。

「なるほど………だったら為になるように俺も気合を入れるか!!」
「「クイックバレット!!」」

互いに走りながら魔力弾を連射する。
今度は魔力弾を相殺せず、弾かれる形でまたも攻撃が通らない。

「クイックバレット!!」

次の手を繰り出したのはティーダだ。
走るのをやめず、休む暇を与えない様にティアナに連射する。

(撃ち合いは魔力量が多い兄さんの方が有利………だったら少ない攻撃で致命傷を与えなくちゃ………)
「がっ!?」

そんな事を思いながら冷静に魔力弾を躱し続けていたティアナだが、いきなり左足に鋭い痛みが響く。

「まさか………!!」

痛みを感じ、ティアナは自分の周辺に目を配る。

「展開されたスフィアの円!?いつの間に………まさか!?」
「そう、今までティアナを狙っていた様に見せた魔力弾はただ撃っただけじゃなく、このスフィアを放つのと、ここに誘い込むのが目的だ」

そう説明しながらティーダは魔力弾をスフィアに向かって発射した。

「リフレクトバレット、コンセントレイトファイヤ!!」

スフィアに向けて発射された魔力弾はまるでスーパーボールの様に弾き合い、予測出来ない全包囲の攻撃になった。

「くうっ………」

両腕で全身を守るように丸くなるティアナ。
動こうにも攻撃が何処から来るのか分からない今、無闇に動く方が危ないと考えたからだ。

(………だけどこのままじゃもたない。だけど幻影を出しても直ぐに全て消されるし、スモークバレットを使っても、ランダムで飛んでくる魔力弾には意味が無い………)

足にもダメージが溜まり、膝をついてしまうティアナ。

(兄さんは凄い………これなら魔力を無駄にせず、格上相手でも動きを止める事が出来る)

そんな事を思うティアナだが、その目にはまだ諦めの色は無い。

(だけど何とかこのスフィアの円を出られればまだ勝機はある………その為には………!!)

両手両膝を地面に付けるティアナ。
客観的に見れば誰もが限界の様に見えるだろう。

しかしティーダは気を抜かず、攻撃の手を止めない。

(ティアナはこんな事じゃ諦めはしない)

そう思いながら、少なくなった魔力弾を再び円の中に発射しようとした時だ。

「今だ!!」

ティナアはうつ伏せに近い体勢から一気にダッシュする。

「クラウチング!?だが!!」

真っ直ぐ向かってくるティアナに向かって魔力弾を連射するティーダ。

「ツインブレイド!!」

対してティナアは双銃に魔力刃を展開し、前に向け突撃を続ける。

「ぐぅ!?」

魔力弾が腹部に辺り、思わず嗚咽の声を漏らすが、足を止めずに、苦悶の表情ながら突撃を続ける。

「ティアナにしては珍しい手だね!!」

そんなティアナに円を作っていたスフィアを移動し何としても足を止めようとするティーダ。

「それを待ってた!!スモークバレット!!」

陣形を崩した瞬間、地面に魔力弾を発射し、煙を発生させるティアナ。

「くっ、陣形を崩してしまったのが裏目に出たか!!これじゃあ魔力弾は四方に飛び去ってしまうな………」

陣形を崩した上に煙により、全く中の様子が見えないティーダ。
再び陣形を作ろうにもティアナがどこにいるのか分からない今、無闇に手を出せないでいた。

「貰った!!!」

煙を抜けたのか走って向かってくるティアナ。

「舐めるな!!」

ティアナが魔力弾を発射するよりも前に、高速の早打ちで撃つティーダ。
しかし………

「幻影!?」

そのティアナは蜃気楼の様に消え、その後ろからいきなり魔力弾が現れる。

「ミラージュバレット!?くっ!?」

体を斜めに回転させ、魔力弾を回避するティーダ。

「だけど、これはどう?」

そう言うと三人になったティアナがティーダの左右後ろからそれぞれ魔力刃を展開し、向かってくる。

「随分幻影の使い方も上手くなった………だが!!」

双銃をそれぞれ向け、魔力をチャージする。

「ローリングブラスター!!」

そのまま回転しながら砲撃魔法を放った。
その砲撃は向かってくるティアナ3人を飲み込んだ。

「これで………!!」
「チェックメイトよ!!」

そう言うティナアは煙が晴れた場所、先ほど煙を放った場所から少ししか動いていない。

「喰らえ!!ファントムブレイザー!!」

自身で一番威力のある砲撃を放つティアナ。
先ほどの回転の影響で本調子の動きが出来ないティーダはその砲撃を受けてしまった。

「よし!!」

思わずガッツポーズをするティアナ。
それほど手応えのある攻撃だった。

「えっ………?」

頭に嫌な感触を感じ、ティアナはゆっくりと後ろを見ると、ティーダが自分の銃をティアナの頭につけていた。

「何で………?」
「幻影だよ。ティアナが使えるんだ、教えた俺が使えない訳ないだろう?」
「だけど………あのタイミングは完璧だった………なのに………」
「確かにあの攻撃で大きな隙が出来た。だけどそれも演技だったら?」
「そんな………」

「もっと見極める目を持てティアナ。執務官を目指すなら絶対無いと駄目な物だぞ」

そう言ったティーダはバインドでティアナの手足をぐるぐる巻きにして拘束した。

「さて、あの2人もそろそろかな………」









「ぐはっ!?」

溝にトーレの拳が入り、思わずうずくまるスバル。
そんなスバルに容赦無く回し蹴りを決め、吹っ飛ばした。

「ふう、相変わらず打たれ強い………」

既にバリアジャケットもボロボロで、体中に傷を負っているスバル。

トーレの圧倒的なスピードとそれにプラスさせる攻撃、スバルは防戦一方どころか防御もままららないほどだった。
しかしスバルは何度も何度も倒されても立ち上がりまた向かっていく。

「はああああああ!!!」
「右腕に魔力を集中………?砲撃魔法か!!」

突っ込みながら右腕で直ぐに撃てる体勢をとるスバル。

「面白い、当ててみろスバル!!」

そう言って再び高速移動でスバルに向かっていくトーレ。
エネルギーブレードをスバルに向けてそのまま突き刺すつもりだった。

(さあどうするスバル?)

スバルの行動に期待しながらも攻撃をゆるめないトーレ。
しかしスバルのとった攻撃はトーレの想像をはるかに超えるものだった。

「なっ!?」

スバルは逃げずにそのままエネルギーブレードを向かい入れた。

「スバル正気か!?」
「正気………だよ、これで………トーレ先生の………動きを……止めた………後は………」

腹にエネルギーブレードを刺されたまま笑みをこぼすスバル。
口から血を吐きながらそう呟いた。

「ディバイン………バスター………ゼロポイントブラスト………!!」

スバルの突拍子な行動にトーレの反応が遅れ、逃げるのが遅れてしまった。

「くうううっ!!!」

何とか放たれる瞬間、エネルギーブレードを手から離し、バックステップでダメージを逃がしたトーレだったが、それでも零距離から放たれたディバインバスターの威力は大きく、かなりのダメージを負った。

「スバル!!」

スバルはディバインバスターを放った後、うつ伏せにバタリと倒れた。

「このバカ者が!!」

慌ててトーレが近づいて応急処置を施す。

「いくら非殺傷とはいえ、やり方によっては人を殺す事だって出来るのだぞ!!」
「えへへ………肉を切らせて骨を断つ………ですよ」
「バカ者が………だが考えは悪くない。自分より速い相手に対し、動きを止め、攻撃するのは正解だ。大抵スピードに自身のある者は防御は弱い。しかしあのやり方は駄目だ、あれではまた敵が現れた場合対応出来ない」
「そう………ですね………」
「取り敢えず今は休め、後でまた説教してやる」
「あはは………卒業なのに………運が悪いや………」

そう呟いてスバルはスースー寝息をたてながら眠り始めた。

「スバル!!」
「トーレさん、スバルは!?」
「致命傷にはならないが暫くは安静にしないと駄目だな」
「全くバカなんだから………」

スバルを撫でながらそう呟くティアナ。
その様子はまるで妹を優しくあやす姉の様だ。

「ティアナ、スバルを導いてやれ。スバルを1人にさせると何をしでかすか分からんからな」
「分かってますトーレさん」
「………まあ取り敢えず、俺達の勝ちって事で。遅くなったけど、ティアナ、スバル卒業おめでとう」
「何こんな状況で言ってんのよバカ兄貴………」

ティアナはティーダを睨みながらも笑みをこぼしたのだった………  
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