八条学園騒動記
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第五百七十四話 文化祭前日その四
「なくて」
「それでか」
「最後までね」
ファルスタッフまでというのだ。
「来なかったのかもね」
「その可能性もあるか」
「だから一概にね」
「一度や二度の失敗で、とかか」
「言えないかもね」
「依頼がないとな」
どうしてもとだ、洪童は考える顔になって答えた。
「確かにな」
「作曲家は何も出来ないからね」
「昔はな」
「今は作曲したのをユーチューブに流せるけれどな」
「それで評価されるけれどな」
「人気も出るけれど」
それでもというのだ。
「昔はね」
「作曲家は依頼がないとな」
「自分で持ち込み出来てもね」
「それが基本だからな」
「そう、だから喜劇の依頼がないと」
本当にというのだ。
「ヴェルディもね」
「何も出来ないか」
「そうだったかも知れないよ」
「そうした可能性もあるか」
「若しかしたらね」
「そうなんだな」
「もうこのことはね」
仕事の依頼はというのだ。
「昔は今と事情が違うから」
「仕方ないか」
「そうだよ、まあそれでも最後の作品が喜劇だったから」
だからだというのだ。
「よかったかもね」
「しかもそれが名作だったからか」
「よかったと思うよ、ヴェルディにとってもファンにとってもね」
「それは何よりだな、けれどな」
「けれど?」
「ヴェルディの音楽って凄い勇ましいよな」
彼の音楽のその傾向について話すのだった、先程ズンチャカチャッチャという言葉が出たがその言葉通りにというのだ。
「戦争に行くみたいな」
「実際に戦争に行くよな」
「ああ、それはね」
マルコもこう返す。
「そうだね」
「物凄いよな」
「もう戦争に行ってね」
「派手に勝つってな」
「そんな感じの曲多いね」
「戦争の場面が多いにしても」
「もう強いって感じがするね」
洪童にこうも返した。
「本当に」
「ヴェルディはな」
「うん、ただヴェルディってイタリアの音楽家だけれど」
「それ俺も言いたいんだよ」
まさにというのだ。
「イタリア軍ってな」
「弱いよね」
「エウロパ最弱なんだよな」
「何でもね」
「オーストリア軍も弱いっていうよな」
「ああ、オーストリア軍結構勝率いいから」
この国の軍隊はとだ、マルコは話した。
「実はね」
「弱いっていうけれどな」
「プロイセン王国とかナポレオンとかには負けていたけれど」
それでもというのだ。
「結構勝ってるよ」
「そうなんだな」
「うん、まあ軍隊よりも結婚の国だけれど」
「ハプスブルク家か」
「王家のね」
この時代オーストリアは君主制に戻っている、ただしその位は皇帝ではなく王になっている。エウロパ総統が欧州全体の統治者即ちローマ皇帝という認識だからだ。
「そちらの国だけれど」
「それでもか」
「そう、それでもね」
「実は軍隊結構勝ってるんだな」
「ナポレオンにも最後は勝ってるし」
蒔けていたこの英雄にもというのだ。
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