八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百七十八話 期末テストその四
「世間の批判に挑発的に応じて逃げなかったし」
「イギリスから出ていればよかったのね」
「本当にそうすればね」
「捕まらなかったのね」
「裁判にもかけられないでね」
「助かってたのね」
「あの人もアクの強い人だったから」
同性愛のことは置いておいてだ。
「自信家で美を讃えよってね」
「そう言ってたのね」
「着飾って乗馬鞭持ってね」
ある意味傾いていたと言える、オックスフォード大学でも抜群の秀才で有名だった人だったという。
「そんなこと言っていたから」
「そんな人だったから」
「そう、それでね」
「そんなことを言って」
「耽美主義でね」
これがこの人の小説の作風だった。
「世界の名作百作挙げろって言われて」
「何て言ったの?」
「百作も挙げられないって言ったんだ」
名作文学百作をだ。
「自分はまだ九作しか書いていないってね」
「つまり自分の作品が名作で」
「他の人の作品は駄作だって言ったんだ」
「確かに凄い自信ね」
「そうした人だったから」
もう自信満々でだ。
「同性愛で捕まりそうになっても」
「挑発的だったのね」
「そう、だからね」
そのうえでだったのだ。
「捕まらずに済んだので捕まって」
「大変な目に遭ったのね」
「それですっかり変わり果てて」
もう別人みたいに意気消沈していたらしい、出所した時には。
「亡くなったらしいよ」
「そうだったのね」
「そう思うと馬鹿な話だよね」
「同性愛で捕まることもワイルドさんの行動も」
「どっちもね」
日本人から見れば捕まる話じゃないし下手に挑発的な行動を取っていたワイルドさんにしてもである。
「そうだと思うよ」
「同性愛が悪いとか」
「別に、だよね」
「心から思うわ」
「ザビエルさんなんか激怒したから」
日本をキリスト教に伝えたあのフランシスコ=ザビエルだ。
「日本は素晴らしい国だけれど」
「同性愛が普通だって」
「恐ろしい悪徳が蔓延ってるとまで言ったよ」
どんな表情で言ったのか想像がつく位の言葉だ。
「大内家の殿様にね」
「山口の方の」
「その人に言ったんだ」
「もう完全に文化と宗教の違いね」
「そうだよね、けれど言って」
そしてだ。
「殿様物凄く怒ったんだ」
「何で悪いかわからなかったから」
「その人も同性愛を嗜んでいたし」
大内義隆という人だ、戦国大名にしては随分雅一筋の人だったらしい。
「もうね」
「ザビエルさんに言われて」
「激怒したらしいよ」
「何処が悪いのかって」
「そうね」
「まさに文化と宗教の違いね」
「うん、日本じゃ悪徳どころか」
当時の日本では特にだ。
「嗜みだったからね」
「普通だったのよね」
「武士の間では特にね、お寺でもあったし」
むしろお寺からはじまったという、お寺は女人禁制だったので必然的に同性愛になったということだ。
「空海さんが唐からもたらしたとかね」
「言われてるのね」
「その前もあったかも知れないけれど」
日本の長い歴史の中にはそう思われる記述もある。
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