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夢幻水滸伝

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第百四十一話 敵影発見その二

「無理やな」
「まずな」
「しかしそれをやったさかいな」
「凄い話やな」
「普通な」
 芥川はさらに言った。
「あんな島ではな」
「戦どころかな」
「まともな生活もや」
 それ自体がというのだ。
「出来ん」
「離れ小島で暑くて水もなくてな」
「そんなところでどうして戦うんや」
「そうなるな」
「それがや」
「あの島に籠ってな」
「しかも敵に制海権も制空権も奪われてや」
 アメリカ軍に完全包囲されていたのだ。
「そのうえでや」
「まず艦砲射撃と爆撃でな」
「島の表面が徹底的に破壊されてな」
「それでやったな」
「上陸されてな」
「普通もうそこで終わりやな」
 降伏、選択肢はそれしかないというのだ。
「そこまでされたら」
「それがや」
「籠ってやな」
「一ヶ月以上戦い抜いて」
「文字通り最後の一兵までな」
「敵に自分達以上の損害を与えた」
「想像を絶する戦ぶりやな」
 中里も唸ることだった。
「まさに」
「そや、それをしたからな」
「自分も信じられんのやな」
「僕やったらな」
 芥川は中里に軍師として話した。
「撤退させてる」
「戦える状況やないからやな」
「生きものすら滅多におらん島やぞ」
 硫黄島という島はというのだ。
「そんな島でどうして戦えるか」
「それなら包囲される前にか」
「もうな」
 それこそというのだ。
「撤退させる」
「例え戦略上の要地になってもか」
「それでもや、取られたら痛い状況でもや」
 それでもというのだ。
「常識で考えてあんな島で戦えるか」
「そうとしか考えられんからやな」
「撤退させてな」
 そのうえでというのだ。
「その兵を他の場所に投入する」
「そうするか」
「あの状況では玉砕しかなくてもな」 
 戦略的にそうさせるしかない状況でもというのだ、当時の日本は最早そうした状況まで追い詰められていたのは事実だったのだ。
「逆転の可能性がゼロでも」
「そうさせるか」
「ゼロをコンマ幾つかでも一にでもさせたら」
「そこからか」
「逆転させる様にしたいからな」
「そうする為にか」
「ああ、ゼロとな」
 それと、というのだ。
「コンマ幾つでも可能性があるのは全くちゃう」
「その可能性に賭けられるか」
「というかそれを百にする」 
 一どころかコンマ幾つしかない可能性を、というのだ。 
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