八条学園騒動記
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第五百七十二話 アイスのことその三
「ここは」
「それでは」
「はい、そして」
それにとだ、セーラはさらに言った。
「アイスクリームもです」
「そちらもなのね」
「入れますか」
「いいね」
豆乳のアイスと聞いてだった、マルティはすぐに言った。
「それじゃあね」
「アイスもですね」
「入れようね」
「それでは、ただテンボさんもジャッキーさんも」
料理を担当する二人はというと。
「アイスクリームは作られないそうです」
「そうだったんだ」
「他のお菓子は作ることが出来ますが」
それでもというのだ。
「アイスクリームはです」
「レシピがあってもなんだ」
「何か作られても」
それ自体は出来るというのだ、ではどうして作ることが出来ないのかもセーラは四人にしっかりと話した。
「レシピの味ではない」
「そうなんだ」
「そう仰っています」
「何かこだわりがあるみたいだね」
「その様です」
「だからレシピのアイスは作られないからだね」
「作られないと仰っています」
そうした風にというのだ。
「それは」
「それってこだわりだよね」
ネロは即座に指摘した。
「要するに」
「それだけだね」
マルティはネロのその言葉に頷いた。
「明らかに」
「そうだよね」
「あの二人アイスにはこだわり強いみたいだね」
「実際はそっちも作れるね」
「そうだね」
「私もそう思いますが」
セーラも答えた。
「ですがお二人はその様に言われて」
「アイスはなしだね」
「そうなっているんだね」
「いえ、それでしたら」
二人が作られないならとだ、セーラは話した。
「私の家からです」
「アイス持って来るんだ」
「そうするんだ」
「当家にはアイス製造機があり」
セーラが今住んでいるシヴァ家の別荘にはというのだ。
「そしてアイス用の冷凍庫もありますので」
「そこからだね」
「持って来るんだ」
「はい、そうすればです」
それでというのだ。
「充分かと」
「確かにそれでいけるけれど」
それでもとだ、七海は申し出たセーラに言った。
「セーラの自腹になるから」
「だからですか」
「それだったらアイスの売り上げはね」
それはというと。
「セーラの分ということで」
「いえ、それはいいです」
「いらないの」
「はい、アイス位は」
何でもない、そういった言葉だった。セーラのそれにはこれ以上はないまでの確かな余裕があった。
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