八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百七十六話 香織さんとの距離その十三
「あの人は」
「そうよね」
「文化祭でも不人気だったしね」
「本当にね」
「滋賀の子がいても」
それでもだ。
「どうも彦根の人以外からは不人気みたいだし」
「同じ滋賀県でもね」
「近くにあった藩も随分圧迫されていたみたいだし」
井伊さんのその彦根藩にだ、彦根藩は三十五万石実高はそれよりもさらに高い大大名で周りへの影響も大きかったのだ。
「そのせいでね」
「滋賀県でもなのね」
「評判悪くて」
彦根の人以外からはだ。
「人気なくてね」
「ああしたこともやったし」
「安政の大獄はね」
「本当に評判悪いから」
「だからね」
ああして大老としてはあまりにも無残な最期を遂げてもだ。
「同情されないんだよ」
「吉良さんみたいによく調べられても」
「吉良さんは浅野さんの方が悪くて」
もう一方的にだ。
「討ち入りされて色々脚色されてだから」
「同情出来るけれど」
「井伊さんは沢山の人を殺したから」
その安政の大獄でだ。
「しかも判決を書き換えてね」
「遠島とかに永牢の判決が出ても」
幕府の評定所が出したそれをだ。
「本来はそれは最悪でも現状維持で」
「普通刑罰は評定所のより軽くなるのよね」
「幕府の慣習ではね」
それこそどんな奇美しい老中でも守っていたことだ、天保の改革の水野忠邦ですらそれは守っていた。
「判決をあえて軽くして」
「幕府の寛容さを見せていたのよね」
「慈悲があるってね」
大体罪は一等か二等減じられていたらしい。
「だから幕府って死罪は殆どなかったけれど」
「井伊さんはその判決を重くしたのね」
「拡大解釈してね」
それもかなり酷くだ。
「どんどん死刑を出して蟄居も出して」
「物凄く強引にやって」
「幕府の中でも嫌われていたし」
幕府の役職に就いている人達からも諸大名からもだ。
「それどころか江戸の人達からもね」
「そんなことしてたから嫌われていて」
「その中で暗殺されたから」
「誰も同情しないで」
「自業自得ってなってるんだよ」
「そういうことね」
「あんな死に方するものじゃないね」
僕が思うにだ。
「本当に」
「それはそうよね」
「死んであそこまで喜ばれるとか」
「今だにそうだし」
「誰からも同情されないで喝采される」
白昼堂々と刺殺されて首を取られる、本当にこんな死に方はしたくない。日本の歴史でもこうした殺され方をした人は稀だろう。
「こんな人他には足利義教公だけかな」
「室町幕府の将軍様よね」
「第六代のね」
「この人も色々やったのよね」
「敵は皆殺しで」
それも頼朝さんみたいに根絶やしだった、尚この頼朝さんも日本の歴史上屈指の不人気人物だったりする。
「かっとなってね」
「すぐに人を殺したり傷付けたり」
「そんな人だったから」
感情的で残酷な独裁者だったという。
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