| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二百七十五話 小野さんのお話その二

「わかりません」
「高価イコール美味ではないですね」
「そうです、甲州ワインはフランスワインよりも遥かに安いですが」 
 あの国のブランドものよりもだ。
「中にはその最高級のフランスワインに負けないものもあります」
「やはり値段ではなく」
「味です」
「それで決まりますね」
「ですからトカイやシャンパンでもモーゼルでも」
 どれもブランドものではある。
「高いものとはです」
「限らないですね」
「美味しいものをです」
「用意してくれますか」
「はい、必ず」
 こう僕に話してくれた。
「ですから」
「楽しみにですね」
「しておいて下さい」
「わかりました」
 僕は小野さんに微笑んで答えた。
「そうさせてもらいます」
「それでは」
「はい、ですがワインも」
「値段ではないです」
「それで味はわからないですね」
「確かに高級なものは手がかかっているので」 
 それが為にというのだ。
「最高の素材を最高の技術で造っていて」
「手間も暇もかかっていて」
「高価にもなりますが」
「それでもですね」
「それで味が決まるか」
「そうとも限らないですね」
「同じブランドでもその時の気候等が関係します」
 この辺り農作物だから当然だ、ワインも原材料となる葡萄の質がどうかで本当に味が変わってくる。
「ですからまずです」
「飲んで、ですね」
「確かめることです」
「トカイでもシャンパンでもですね」
「そしてモーゼルでも」
 こちらのワインでもというのだ。
「まずはです」
「飲んで、ですか」
「確かめることです」
 このことが大事だというのだ。
「まことに」
「ブランド名にまかやされないことですか」
「左様です、料理も権威主義が過ぎますと」
「誤りますか」
「そうもなります」
「それでクリスマスのお祝いのワインも」
「そうしたものを持って来ます」
 そうしてくれるというのだ。
「ですからご期待下さい」
「わかりました」
 僕は小野さんのその言葉に応えた。
「それでは」
「はい、ただ」
「ただっていいますと」
「トカイは安いものでも素晴らしいですね」
「あのワインは確かに凄いですね」
 僕も知っている味だ、ハンガリーの貴腐ワインだ。とにかく他のワインとは味が全く違う代物であるのだ。
「ルイ十四世やマリア=テレジアも好きだったそうで」
「左様です」
「それだけの味ですね」
「私も好きです」
 小野さんもというのだ。
「あればついついです」
「飲んでしまいますか」
「左様です」
 そこまでお好きというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧