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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百七十四話 真実は一つその六

「まず地獄です」
「そっちになりますね」
「少なくともいい生まれ変わり先ではないです」
「それは避けられないですね」
「ですから自殺するよりも」 
 もうそこまで追い詰められているならというのだ。
「逃げることです」
「その場所から」
「逃げることは恥ではないですから」
「とんでもない場所からですね」
「ヤクザ屋さんの事務所の中にいてです」
 畑中さんはこう例えてきた。
「逃げられたら逃げない人はいないですね」
「もう何されるかわからないですからね」
「それで逃げるなと言えば」
 ヤクザ屋さんの事務所、まさにそこからだ。
「その方がおかしいですね」
「どう考えてもそうですね」
「ですから」
「おかしな場所にいて」
「そこがこれ以上いれば自殺する様な場所なら」
 それならというのだ。
「逃げることです」
「そしてそれは恥ではない、ですね」
「そこで何もわからないかおかしな人が逃げるなと言って」
「追い詰められて自殺したら」
「その言った人は責任を取れますか」
 逃げるなと言った人がだ。
「果たして」
「無理ですよね」
「そうです、ですから私はです」
「もうどうしようもない状況に追い詰められている人には」
「逃げる様に申し上げます」
「僕にもですか」
「無論です」
 答えは一つ、そうした返事だった。
「戦争でも撤退は恥ではないですね」
「頃合いを見ての撤退は」
「その指揮官の技量の証明ですね」
「下手に戦ったら」
 絶対に勝てない様な状況の中でだ。
「全滅しますね」
「そうなりますね」
「ですから」
「逃げることは恥じゃない」
「その決断には勇気も必要ですし」 
 このこともあるというのだ、言われてみれば迷った時の決断は本当に勇気が必要だ。間違えないかとも思って。
「むしろ危機を脱する」
「いいことですね」
「何度も申し上げますが自殺しては」
 そして死ねばというのだ。
「元も子もないですから」
「まずは生きることですね」
「そうです、完全に絶望する前に」
「そうですね、ですが」
 ここで棒はこう畑中さんに問うた。
「もう絶望しきった人は」
「考えも全て絶望していてですね」
「逃げようともです」
「考えられなくなっていますね」
「そうですよね」
「その通りです、ですから周りの人達が見てです」
 そのうえでというのだ。
「助け出さないといけません」
「そうした人は」
「そして出来ればそうなる前に」
 絶望しきって自分で考えて逃げられなくなって自殺するしかないと思い込むよりも前にというのだ。
「決断すべきです」
「そこが難しいですか」
「多くの人は頑張ろうとも思いますね」
「厄介な状況だと」
「ですが苦労すべき場所もあれば」
「そうでない場所もありますか」
「また申し上げますがヤクザ屋さんの事務所の中は頑張る場所ではないですね」
 僕に再びこの例えでお話してくれた。 
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