八条学園騒動記
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第五百六十五話 歌劇も観てその四
「何だかんだで」
「しかも憎めない」
「とんでもない人でも」
「そうしたキャラを演じてね」
「そうさせてもらうよ」
「それじゃあね、それとね」
菅はマルティにこうも言った。
「これは噂だけれど」
「噂?」
「この作品に限らずシェークスピアの作品にはね」
マルティに神妙な感じで話していく。
「謎があるらしいよ」
「作者さんご本人だけじゃなくて」
「そう、作品にもね」
「謎っていうと」
「何か錬金術の奥義が隠されているってね」
「そんな話があるんだ」
「そうしたお話も聞いたことがあるんだ」
こう話すのだった。
「初版のイラストにも描かれているとか」
「言われてるんだ」
「嘘か本当かわからないけれど」
「そんな話もあるんだね」
「うん、もうね」
「もう?」
「シェークスピアって色々言われてるね」
無表情で口調も淡々としている、だがそれでも語るその言葉には彼の思うところがふんだんに含まれていた。
「何かと」
「作者さん本人も含めて」
「そして作品もね」
「ここまで言われる人ってないかな」
「そうそういないと思うよ」
「それだけ有名だってことかな」
「何しろ今も沢山の人に読まれてるから」
千五百年以上経ったこの時代でもというのだ。
「ご本人の時代から」
「それも全人類の間で」
「それだけにね」
「何かと言われてるんだね」
「そうだよ」
「そうなんだね、しかし錬金術ね」
マルティはこの魔術の一つとされている分野について話した。
「セーラが詳しいよね」
「マウリアは魔術を普通に研究しているしね」
「それで錬金術もだったね」
「賢者の石持ってるし」
これは本人も言っていることだ。
「あらゆるものを自分の思うものに変えられるっていう」
「その光を当てるとね」
「その魔法のアイテムも持ってるし」
「だからだね」
「ひょっとしたら」
菅はさらに言った。
「セーラだったらね」
「シェークスピアのこのことも知ってるかな」
「若しかしたら」
「じゃあセーラに聞いてみる?」
「そうする?」
「いや、別に」
それはとだ、菅はマルティに話した。
「そこまではね」
「しないんだ」
「セーラだったら知ってる可能性はあるけれど」
シェークスピアと錬金術、この関係についてというのだ。
「今回主題じゃないし」
「錬金術のことは」
「だからね」
「置いておくんだね」
「本当かどうかわからないし」
「そもそも今の僕達にも関係ないし」
「僕達がやるのはお芝居で」
シェークスピア作品の本質だというのだ。
「錬金術じゃないよね」
「それはそうだね」
その通りだとだ、マルティも頷いた。
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