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八条学園騒動記

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第五百六十二話 劇の題目その五

「人間としてね」
「女好きで図々しくてね」 
 ジュリアもこう言う。
「反省しなくてね」
「他にも色々問題あるわね」
「大概な人よね、けれど」
「妙に憎めないのよね」
「これがね」
「周りにいて欲しくないかっていうと」
 どうかとだ、ビアンカはフォルスタッフについてこうも言った。
「いてもね」
「いい人よね」
「むしろ近くにいたら」
 幾ら自分勝手で家臣使いが荒く女好きの酒好きで図々しくて無反省な人物であってもというのだ。欠点だらけであっても。
「楽しい」
「そんな人よね」
「迷惑をかけられても」
「何だかんだでやり返せるし」
「嫌味がないのよね」
「邪悪さもね、だからね」 
 ジュリアは決める様にして言った。
「私はね」
「その作品でいこうっていうのね」
「そう、ウィンザーの陽気な女房達でね」
「皆はどう思う」
 アルフレドはジュリアが言ってからクラスの面々に尋ねた。
「この作品でいいか」
「いいんじゃない?」
 アンジェレッタが応えた。
「それなら皆楽しめるし」
「だからだな」
「私もオセローだと」
 自分のこの作品に対する考え、アンジェレッタはこの話もした。
「無理ね」
「やぱり怒る?」
「実際読んでいた怒ったわよ」
 こうコゼットに答えた。
「あんたいい加減にしなさいって」
「奥さん疑って怒鳴ってって」
「そうなったわ」
「そうなる人多いみたいね、私はね」
 コゼットは自分はどうかと話した。
「泣きそうになったら」
「悲しくて」
「奥さんがね」
「じゃあオセローは」
「死んだ時にやっぱり」
 泣きそうになったというのだ。
「そうなったわ」
「怒らなかったの」
「怒るよりも」
「悲しくなったのね」
「読んでいてね」
「そうだったの」
「それで歌劇の方観たけれど」
 今度はこちらの話をしたのだった。
「ヴェルディの」
「あれね」
「最後まで観てオセローの魂が鎮められる」
「そんな風に思ったの」
「終わった時にね」
「確か歌劇だとオテロよね」
 アンジェレッタはオセローをこう呼んでコゼットに話した。
「イタリア語だから」
「ええ、そうなるわ」
「それでオテロでは」
「そうだったのよ、まあ演奏や演出でそうなったと思うけれど」
「悲しくて」
「それで最後は鎮魂の感じだったのよ、けれど私も」
 アンジェレッタに話をあらためて話した。
「オセローよりもね」
「ウィンザーの陽気な女房達の方がいいのね」
「明るいし楽しいから」
 そうした作品だからだというのだ。 
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