八条学園騒動記

「オセローは本当に馬鹿だよ」
「馬鹿過ぎるな」
「何で奥さんを信じられなかったか」
「愛しているなら信じろだろ」
「疑うことなくな」
「あの奥さん絶対にそんなことしないよ」
　デズデモナ、彼女はというのだ。実際に潔白であったがオセローはそうは思わなかったのだ。それが悲劇であったのだ。
「何があっても」
「そうだよな」
「すぐにわかるよね」
「そんな人を疑ってな」
「酷いことをしてね」
「酷いことを言って挙句にな」
　洪童は怒った顔でさらに言った。
「殺すとかな」
「最悪だよね」
「だから舞台観てな」
「本を読んでも」
「この馬鹿、奥さん信じろってな」
　洪童は心の言葉を出した。
「言いたくなるな」
「怒鳴って」
「実際喉に出かけたよ」
　妹に止められたその時はというのだ。
「席から立ちそうになったな」
「本当にあと少しだったね」
「ああ、しかしな」
「オセローが馬鹿だというのは僕も同意だよ、リア王もね」　
　ジミーはこの作品の話もした。
「本当にね」
「リア王も馬鹿だな」
「人を見る目がなくて」
「頑固でな」
「もう人望もなくなっていって」
　そしてというのだ。
「最後はね」
「悲惨な最期だったな」
「一番自分を大事に思っているのは誰か」　
　それはとだ、ジミーは言った。
「もうね」
「普通はわかるな」
「末の娘さんだよ」
　ジミーは言い切った。
「コーデリアさんだよ」
「まさにな」
「それでずっと最期までついてきた人達」
「道化とかな」
「本当の忠臣達にも気付かないんだから」
「愚かにも程があるよな」
「オセローとどっちが馬鹿かな」
「わからない位だな」
「そうだよね」
「これは演目に選ばない方がいいな」
　アルフレドはクラスの面々の話を聞いて確信して言い切った。
「本当にな」
「そうね、オセローやリア王はね」
　ビアンカもその通りだと頷いた。
「選ばない方がいいわね」
「実際に僕もオセローは馬鹿だとしか思えない」
「それで舞台に言いたくなるの」
「言わないが」
　そこは理性で抑えるがというのだ。
「思うことは事実だ」
「じゃあウィンザーの陽気な女房達はどう？」
　ジュリアもシェークスピアの作品を出したが彼女が出した作品は喜劇であった。
「フォルスタッフ卿が暴れ回る」
「あの作品ね」
　ビアンカはジュリアに応えた。
「面白い作品よね」
「そうでしょ」
「あの主人公酷いけれど」
　そのフォルスタッフはというのだ。