八条学園騒動記

「そうね」
「それで余計にか」
「そう、それでね」
　パレアナは洪童にさらに話した。
「ああなっていったのよ」
「差別もあるんだな」
「そう、人種のね」
「それは俺は気付かなかったな」
「壁もあったのよ」
「そういうことか」
「そして」
　パレアナはさらに話した。
「オセローは余計二億三を信じられなくなって」
「破滅したんだな」
「馬鹿なことにね」
「お前も馬鹿だって思うか」
「オセローより馬鹿なのは」
　パレアナはこうも言った。
「リア王位でしょ」
「シェークスピアだとか」
「そう、ハムレットやロミオの方がね」
　同じシェークスピアの悲劇の登場人物でもというのだ。
「まだ賢いでしょ」
「そういえばそうだな」
　洪童も否定しなかった。
「本当にオセローとかはな」
「馬鹿でしょ」
「それで俺はその馬鹿さ加減がな」
「見ていられないのね」
「それこそ舞台に怒鳴りたくなるな」
　洪童は本気で言った。
「オセローを観ていると」
「それで読んでも」
「オセローにな」
　まさに彼自身にというのだ。
「実際思わず怒鳴りそうになってな」
「怒鳴ったの」
「丁度そこにいた妹に止められた」
　春香、彼女にというのだ。
「舞台を観たり本を読んで怒鳴るとか馬鹿だってな」
「まあそうよね」
「睨んで止められた」　
　言葉だけでなく目でもだったというのだ、春香はよく兄を止めるのだ。彼が何か変なことをしようとすれば。
「そうなった」
「よかったじゃない、そこで怒鳴ったらね」　
　パレアナは洪童に真面目な顔で答えた。
「戻らなかったわ」
「一旦怒鳴るとな」
「舞台上演の時に怒鳴れば」
　今度はジミーが言った。
「観客席から舞台が乱れるよ」
「妹にもそう言われた」
「舞台鑑賞のエチケットは」　
　何かとだ、ジミーはさらに言った。
「いいお芝居なら拍手とブラボーで」
「悪いものなら」
「何もしない」
「そうあるべきもので」
　それでというのだ。
「エウロパの連中の様みたいにブーイングとか」　
「論外だよな」
「それと同じだけね」
「舞台のあらすじに怒鳴ることはか」
「よくないよ、ただね」
「ただ？」
「洪童の気持ちはわかるよ」
　ジミーは洪童にここでは真剣な顔で告げた。
「落ち葉は確かにね」
「オセローだろ」
「あっ、そうだったね」
「そこで間違えるか」
「いや、久し振りに言い間違えたよ」
　ジミーは洪童の指摘に笑って返した。
「僕も」
「そういえばそうだな」
「それでオセローだけれど」
　ジミーも今度は間違えなかった、それで言うのだった。