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ヘタリア学園

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第三百八十五話  鐘の音

第三百八十五話  鐘の音
 竹の林に清らかなお池。下は小石が敷かれ小鳥の鳴き声も聴こえてきます。二人はそんなお庭に出たのです。
「ここで詩を作るの?」
「宜しければ他の場所でもいいですが」
「ううん、ここでいいの」
 日本の申し出に首を静かに横に振って答えるイタリアでした。
「ここで。とても奇麗だから」
「奇麗ですか」
「こんな場所見たことないよ」
 イタリアのお家にもこんな場所はありませんでした。静かで寂しさもありますがそれでいて美しく。彼はこの相反するような三つのものを感じつつ筆と紙を持っているのです。
「不思議な場所だね」
「不思議ですか」
「僕のお家だって奇麗だよ」
 このことには自信を持っています。
「けれどこんな場所はないんだ」
「イタリア君のお家はどんな場所ですか?」
「あのね、太陽がとても奇麗でね」
 まずはお日様のことを話します。
「それで海が何処までも青くて。オレンジの屋根の白いお家が並んでいて教会が一杯あって」
「教会?」
 これは日本の知らない言葉でした。
「それは一体」
「お坊さんがいる場所だよ」
「お寺みたいなものですか」
「お寺?」
「ほら、あの音です」
 ここで遠くから鐘の音が聴こえてきました。さっき聴いたあの独特の鐘の音です。
「あれを鳴らす場所です。あそこにお坊さんがおられるのです」
「そうなんだ。日本にも教会があるんだね」
 勘違いですがこう思ったイタリアです。静かな鐘の音が彼の心に滲みていきます。


第三百八十五話   完


                           2008・10・10
 
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